第三話 ブチもようの拾いもの・後編
にぃにぃと力なく鳴いていたブチもようのちびネコは、数日と経たないうちにすっかり元気になり、長田家になじんだ。
今もリビングで、ユラユラさせているぼくの黒いシッポに「みゃあみゃあ」言いながら一心不乱にじゃれ付いている。
ヌイグルミもオモチャも色々とあるのに、これが一番のお気に入りみたいだ。
「なんだか兄弟か親子みたい。そうやってナオが面倒見てくれるから助かるわ」
キッチンで食器を片付けながら様子を見ていたママさんがくすくすと笑った。
家族のみんなはちびネコの貰い手を探すために、ポスターを配ったり、町のあちこちに貼らせてもらったりした。
インターネットでもネコ好き仲間に呼びかけているみたいだ。
ぼくはぼくでネコの集まりに行って、心当たりがないか聞いてみたりした。でも、今のところ里親になってくれそうな人は現れない。
洗い物を終えたママさんが手を拭ってからソファに座り、こちらをのんびりと眺めた。
「子ネコって人気があるのにね……」
ちびはまだ飽きもせずにシッポを追って、コロコロと転げ回っていた。小さな呟きにぼくが「にゃあ」と返事をすると、ママさんは続けて言う。
「そうね、『可愛い』の気持ちだけじゃ駄目だものね」
◇◇◇
タカヤは会社、ママさんはパート先、ルカとショータも学校で声をかけている。けれど4・5日経っても、飼いたいと言ってくれる人はいなかった。
みんなが集まるリビングの隅っこで、ちびは遊び疲れてコテリと眠っている。なんの不安もなさそうな、あどけない表情だ。
夢の中で何か食べているのか、時々「むにゅむにゅ」と口を動かしていた。
「ねぇ、どうする?」
最初に問いかけたのはショータだけど、全員が思っていることは同じみたい。その証拠に、タカヤが父親らしく「あぁ」と応える。
その太い腕には、ちびに引っかかれて出来た筋がいくつも走っていた。
「名前だろ? そろそろ決めてやらないとな」
これまで、家族もちびネコを「チビ」と呼んでいた。あくまでも新しい飼い主に託すまでの間だけと思っていたからだ。ルカも真剣な顔になって言う。
「これからも長い時間いっしょに過ごすんだったら、きちんとした名前で呼んであげようよ。絶対にナオより大きくなるのに、『チビ』じゃおかしいし」
「にゃあ」
「あぁ、ごめんごめん」
ちょっとひどい。まぁ事実だし、謝ったから許してあげるけど……気を付けてよね?
とにかく、こうしてちびネコに名前を付けることになった。ただし、今後も貰い手を探すことに変更はないから、ひとまずは長田家にいる間限定だ。
それでも一家は悩みに悩んだ。
なにしろぼくはみんなが生まれる前から「ナオ」だったし、これまでに拾った子たちは名付ける前に貰い手が見付かることがほとんどだったから。
「うーんうーん」
そうして唸りながら案を出し合い、ああでもないこうでもないと頭を捻って決めた名前。それは、リン。鈴みたいに元気で可愛い鳴き声だからだってさ。
リン。改めてよろしくね。