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子供がえり


僕は借金の遣り繰りに必死になった。


貯金をはたき返せるものは返して


足らない分は銀行で借りて


なんとか差し押さえは


とりあえず免れた。しかし


母の変化は日に日に顕著になってきた。


典型的だがご飯は食べても


食べていないという。


その事を指摘すると怒るか泣き出す。


今まで母が目の前で泣くのを見たのは、


たったの一回だったので最初は戸惑った。


だがそれも慣れてくると次第に


疎ましく思えてよく怒鳴てしまった。


「なんでわかれへんの?!


さっきも食べたやん!」


そして母はまた泣き出す。


だがとても心細くもなるようで、


機嫌を取るように昔育った名古屋の話や


得意だったアイロンの話を


嬉しそうにしてくる。


当時、僕は朝のお弁当作りから


全ての家事をやっていたが、


母にも何か出来ないか考えた。


そこで洗濯を畳むことと


得意だと言っているアイロンがけを


頼んでみることにした。


母は久し振りに我が子からお願いを


されるのが嬉しかったのか


すごい意気込みで洗濯を取り込み


物干し竿に干しだした。


ボケていると言っても


当時はまだ初期だったので


アイロンがけもまるでクリーニング屋から


仕上がってきたかのような出来映えだった。


僕は少し安心した。


このまま洗濯とアイロンを任せていったら


認知症の症状も、


もしかしたら止まるかもしれないと


かすかな期待をもった。


そして入院中と同じようにもう一度


母との時間を増やし


一緒に外にご飯に行ったり


美容院に一人で行けなくなった母の髪を


自宅で染めてあげたりした。


母はその度


「ありがとう


ありがとう私はついてるねん。


こんなに良くしてもらえて、、」


と涙ながらに感謝してきた。


このまま母の症状が止まりますように


毎日、そう寝る前に目を閉じて


呟いてから寝るのが習慣になった。


そうなると信じて。

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