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蝕まれいく日常



母の言動が少しずつ幼く感情的になってきた。


僕は嫌がる母をなんとかなだめ聞かせて


福島にあるアルツハイマーに詳しい


お医者さんが居る病院へ連れていった。


母は


「なんや?私の頭がおかしなったんか?」


と明らかに不機嫌を表に出していた。


名前や住所、電話番号など簡単な質問に


ふてくされた表情で答えていく母


思い出せないとそれを


恥ずかしそうに誤魔化し


自分はまともだと主張した。


レントゲン検査のあと医者に呼ばれて


説明を受けた。


「はっきり申し上げます。


アルツハイマーの特徴


脳の萎縮が認められます。


アルコール過剰接種が続いたための


アルツハイマー症候群です」


と言われた。


芸者で13のときからお酒を飲んでいた


母の脳はかなり萎縮していて


もう薬で抑えられる範囲を超えていたらしい。


それでも藁をもすがる気持ちで


アリセプトと言う薬を処方してもらった。


診察後、近くの喫茶店で昼御飯を食べる頃には


すっかり母は上機嫌で


昔住んでいた名古屋の思い出を


楽しげに話していた。


僕は医者から突きつけられた現実を


未だ受け止めることは出来なかった。


もしかしたら


今のままでストップするかもしれない。


いや母なら大丈夫だろう


と安易に考えようと努めた。


しかし別の避けられない現実が僕を襲った。


母の郵便物も管理するようになった僕は


市税事務所から届いていた封筒を開けた。


そこにはあと10日で住居も含め


財産の差し押さえをするという督促状だった。


どうやら母は芸者を引退してからも


買い物癖が止められず


税金など一切払わずに


高い着物や三味線などを買っていたみたいで


詳しく保険会社や信用金庫など調べてみると


数千万を超える借金が見つかった。


僕は本当に目の前が真っ暗になり


生きる希望を失いかけていた。

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