枯木
枯木
今の母を表すもっとも的確な言葉だ。
とうとう水分さえ摂ることさえ出来なくなった。
施設の方はそろそろ覚悟をして下さいと言った。
僕自身こんな体になり施設のスリッパもまだまともに履けない。
自転車も乗れなくなったので施設には40分かけて歩いて通っている。
今まではずっと眠ってばかりで
1日長いだろうなと思っていた。
だが今は苦しそうに絶え間なく咳き込む母に逆の意味で
1日長いなと思う。
現状としては老衰が著しく進行しているらしい。
何も手を施すことはもう無い。
母が元気な頃
「私は老衰では死なれへんなーきっと過労死やわ」
と冗談交じりに言っていた。
今の母を目にするまで老衰は理想の死だと思っていた。
生きながら少しずう少しずつ身体の機能が止まっていく。
なんて苦しい時間なのだろうか。
手は干からびて全ての血管が浮き出て見える。
目は瞬きするのも辛そうだ。
今の僕は左手が普通に動かせない苦悩に陥っている。
だけど回復の見込みはあるし
無意識に呼吸をしている。
母は呼吸を文字通り必死でしている。
せめて呼吸は最後までさせてあげて欲しい。
出来ることなら眠ってる間に止まって欲しい。
安らかな死はもしかしたら存在しないのかもしれない。
ただ叶うなら89年間
人の為にその人生を捧げた母には
最期に安らかな眠りを望みます。
でもまだその知らせは来ないで欲しいと願う
身勝手な自分の思いに困惑している。




