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変化

変化


退院してから母は嬉々とした表情が多く


歩く時に杖が必要にはなったが、


以前より元気になったような気さえした。


また僕が家に居るせいか話す機会も増え


それもまた嬉しそうだった。


ただ僕は働いていない焦りが


日に日に凄くなって無理を言って夕方まで


働く条件で先輩が料理長を勤めていた


別のレストランにアルバイトで


働かせてもらうことにした。


当初は元料理長がアルバイトすることや


事情を話していない前の店舗のアルバイトから


いろいろ言われたりしたが、


プライドとか周りの噂とか


気にしてられないぐらい仕事に飢えていた。


そして1ヶ月が経ち新しい生活リズムが


生まれてきた頃


母の物忘れが目立ってきた。


その時お付き合いしてた彼女が言うには


なんだか目が透き通って見えて


正面で話をしててもどこか


遠くを見ている気がすると言っていた。


でも僕はそんなことは気にも止めなかった。


なぜならあれだけやり手で一日中働き


常にみんなの面倒を見ていた母が老いる事も


ましてや認知症になるなど


考えもしなかったし考えたくもなかったからだ。


そんなある昼下がり


母が僕の部屋をノックした。


「どうしたん?」


僕は珍しく子供じみた仕草で


モジモジしている母に不思議そうに返答をした。


母は大事そうに抱えた郵便物を


僕に差し出し甘えるようにこう言った。


「あんなーこれ欲しいねん」


覗きこむとそれは母宛の手紙ばかりだった。


だから僕は


「欲しいってこれ全部お母さんのやで?」


と言うと輝いた表情になり


母は一気に笑顔になった。


そして「でそれどうするの?」


と聞いた僕に母は


「うん!食べるねん!」


さも大好きなオヤツをもらった子供のように


返事をしてきた。


母と僕の認知症との戦いの始まりだった。

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