看取りへの覚悟
施設から連絡があり別室に呼ばれた。
これからの看取りを
どうするかと言う内容だった。
最近著しく咀嚼する力が無くなり
ご飯はもちろん自分の唾液でさえ
詰まって窒息していつ死んでも
おかしくない状態らしい。
主治医の先生からは今日から
看取り介護になります。
万一に備えてそうなった場合
延命措置はとりますか?と聞かれた。
体中に麻痺が残り尚且つ骨粗鬆症の母
は心肺蘇生法をするだけで
肋骨が折れてしまう状態で
組織も弱っているため管を通すだけで
肺が破れるかもしれませんと言われた。
僕は元気な時の母を思い出しながら
もう可哀想です。これ以上
母に苦しむことはさせたく無いてすと答えた。
近頃は漠然と覚悟していたことだったが
主治医の方に伝えられた時は
涙が止まらなくなって言葉も出せなくなった。
側にいた介護士さんが
ガーゼのハンカチを渡してくれた。
辛いでしょうが、何か質問はありますか?
と聞かれた。
僕はもうダメだとなった時は
母を家に連れて帰れますかと聞いた。
それはお母様にとっても息子さんにとっても
辛いことになるでしょう。
病院の中でしっかりとした設備の中で
看取ってあげることがお
母様を楽にしますよと言われた。
僕はなんとか頷いた。
そして
それでは母にいちょう並木を見せることは
出来ますかと聞いた。
幼い頃に母に手をひかれて歩いた
そごうに行く御堂筋のいちょう並木。
それは施設も必ずお手伝いします。
是非お母様にいちょうを
見せてあげて下さいっと言ってもらえた。
もう少し冬が近づけば
一面黄色に染まる御堂筋。
僕は僕に約束した。
最期に必ず母を連れていく。




