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エッセイ~あと少し~


すっかり年老いて落ちくぼんだ眼で


頼り気なく僕を見つけて


そのやせ細った手で力無く手を振る


施設に来た僕を見つけると


なんとか僕の名前を思い出し


いつものように介護士さんに紹介する


認知症で要介護4と診断された母からは


昔の面影は感じられない


母と過ごした思い出もすっかり


他人事のように僕の記憶の中で薄らいでいく


楽しかった記憶が溶けて


失ってしまうような不安感と共に


辛かった3年半の介護生活の記憶も


和らいでいくようで…


昔よりずっと優しくなった自分に気付く


笑うことも忘れてしまったのか


焦点のおぼつかない瞳は


遥か昔の記憶を辿っているかに見える


母の1日に楽しさを


あげられない無力さを感じながらも


母に対する嘆きと怒りも見せなくなった


環境と自分に安堵する


明日の仕事の時間を気にしながらも


今もまた眠れずに虚ろな時間を


さまよっているであろう母を思うと


涙が頬を伝う


あと少し幸せでありますように


あと少し元気で過ごせますように


あと少し微笑みが戻りますように


あと少し母のままで居られますように


あと少し





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