再会
ようやく仕事にも慣れてきた頃
その日初めて鳴った携帯電話からは
もうかれこれ1年近く経つ
懐かしい方の声がした。
西区役所の福祉課の人だった。
「お久しぶりです!」
と僕が言い終わるのを待てないかのように
少し弾んだ声が返ってきた。
「お母さんに会いますか!?」
僕には思ってもない言葉だった。
少し戸惑いながらもなるべく力強く
「はい、お願いします」
と返事をした。
「では今週の土曜日区役所の裏に来て下さい」
と言うと挨拶を済ませ電話を切った。
僕はようやく母の介護をしない
生活に慣れてきた頃で少しの違和感と不安
そして期待を胸にその日を待った。
当日あいにくの雨で自転車でやって来た僕は
区役所裏の駐輪場に自転車を止め
雨宿りしながら福祉課の方が来るのを待った。
しばらくして福祉課の方が自転車に乗って現れ
「さ!行きましょう!」
と言われた。
てっきり遠方の場所だろうと
勝手にイメージしていた僕は
その気持ちが現れたかのような
ぎこちなさで自転車に再び跨がった。
約10分程だろうか。自転車を漕ぐと
阿波座にある綺麗な介護施設に到着した。
「お母さんはここに居ますよ」
そう言われ施設の責任者
担当の方に紹介をされ少し広めの
応接室のような場所に通された。
渡されたタオルで雨をぬぐっていると
扉が開きその向こうから
車イスに乗せられた母が現れた。
母は僕を見つけるなり
「一緒につれ帰って!一緒に住まわせてー!」
と大声で泣き出した。
僕は自分の頬に涙がこぼれるのを感じながら
拭くことも忘れ母の元に駆け寄り手を握った。
しばらく涙が止まらずようやく出た言葉は
「元気にしてたん?ご飯ちゃんと食べてるの?」
だった。
母は答えられずただ泣き続けていた。
在宅介護中、あれほど疎ましく消えて欲しいと
思っていた母。
でもその母を見た途端全ての
辛い思いが消えて純粋に心から嬉しかった。
こうしてしばらく振りに再会した母に
いつでも会える会いに行く日々が始まった。
ずっと在った胸のつっかえが取れ
気持ちが晴れやかになっていくのを感じた。




