駐輪場の老婆
いつもの買い物帰り
よく行くスーパーの駐輪場で
おそらく認知症であろう老婆がいた。
不安げに辺りを見回しながら
心細そうに独り言をずっと言っている。
その光景は、僕の中ですぐに母を連想させた。
母が施設に入って
もうすぐ半年になろうとしている。
何度も福祉局の人と面談を重ね
極度の介護疲れが見えると診断され
お互いの為に離れたほうが良いと言われ…
それでも意地になり断り続けて
事故を機に半ば強制的に施設へと
それ以来一度も会っていない。
最後に見た母は病院で車椅子姿だった。
僕の事を自分の父親だと思っていたらしく
「お父ちゃんお父ちゃん」と心細く呼んでいた。
今の僕にとって母との接点は
毎月掛かる高額な入所費だけだ。
介護した3年半の月日はまるで
夢だったかのように思う。
たまに夢に出てくる母は健全で
ボケてなどいなく元気で…。
ただ毎月の支払いが僕を現実へと引き戻す。
母がまだ母としていられた頃
少しずつ変わっていく母を直視出来ず
認められずただ苛立っていた。
日に日に言動がおかしくなる母に
何度も何度も怒鳴った。
あとから調べてわかった事に
認知症の人は記憶が無くなっていくだけで
人としての尊厳やプライドは失われないそうだ。
それを知ってから今でもずっと
後悔をしている。
母の介護のストレスを
母自身にぶつけてしまっていたことに…。
時が来てまた母と会える日が来たら
その時は優しく話しかけたいと思う。
きっと自分のことも僕のことも
解らないと思うが
ただ残りの人生が限りある限り
安堵と笑顔に包まれている
そんな施設での生活を
送っていてくれていることを切に願う。
そしてお互いが笑顔で再会出来たなら
その時は優しくお母さんと呼びかけたい。




