表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/46

エッセイ~私はツイてる~


私はツイてる


最近の母の口ぐせである。


今年81歳になる母はアルツハイマーになり


今は〔要介護2〕のいわゆるボケ老人だ。


この数年間、いろいろな人に助けられながら


なんとか介護をしてきたが


周囲からの勧めもあり


6月からデイケアーサービスと


ホームヘルパーさんを頼んでいる。


今朝も迎えが来て母を送り出した。


『ありがとう、ありがとう


私はツイてるねん。こんなに良くしてもろて』


母がそうつぶやきながら家を出た。


この数年間の変わり行く母に苛立ち


嘆き、怒鳴りつけた事も沢山ある。


それでも母はご飯を作ったり


髪を洗ってあげたりした時には必ず


『ありがとう、私はツイてるねん。


こんなに良くしてもろて』


と涙を流して感謝してくる。


申し訳なくて涙が零れそうになっても


母は感謝の涙を流す。


僕はこんな大人になれるのだろうか?


全てを無くしても自分自身を無くしても


感謝の気持ちをずっと持ち続けられる人に…。


母は苦労人だ。


13歳で養女に出されすぐに戦争に遭い


ずっと独り身で芸者の修行を積み


42歳の時に相続税で1億の借金を背負い


43歳で子宮全摘手術と共に僕を産み


知恵遅れとアル中の姉弟の面倒を看ながら


女手ひとつで僕を育てた。


女将としてのプライドを捨て


立ち飲み屋を始め


死に物狂いで働いて財を成し


立派な店と数部屋だが賃貸を所有し


当然たかって来る人も多かった。


だが母はどんな人にも分け隔てなく


全てを与え続けた。


人情脆く借り主が泣きついて来ると


その度に家賃を下げ…


そして自分自身が税金を払えなくなり


多額の借金を背負った。


ほとんどの財産を失い


そして自分をも失った。


それでも母は変わらず


『私はツイてるねん』


と言う。


母はいろんな人に感謝されてきた人だ。


それでも人への感謝を忘れない人だ。


確かに10代の頃は不倫の子で産まれた事や


アル中の叔父からの度重なる暴力を受け


母を恨んでいた時期もあった。


でも社会人になり父親となった今


母の事はとても尊敬している。


いつまでも人への感謝を忘れない人。


そんな大人で僕も居続けられたらと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ