決断
母の状態は思ったよりひどく
腰の骨のひびと肋骨にいたっては
6本も折れていた。
詳しい状況を警察から聞くと
とても腹立たしく感じ怒りを隠すことは
出来なかった。
事故と言っても車にぶつかったのではなく
横断歩道を横断中に後ろから走ってきた
女の人に強く押されて転倒したとの事だった。
緊急で手術をしてくれたお医者さんに聞くと
元々、骨粗鬆症になっていた母は
回復が難しく恐らくこのまま寝たきりの
生活になるでしょうと言われ
目の前が真っ暗になったのを記憶している。
僕は点滴と酸素マスクをされて
麻酔で眠っている母の隣に腰掛け
しばらく目を閉じて今日からの事を考えた。
母がもう病院を出ることは
出来ないかもしれない。
優希はまだ小学校4年生
家事と育児、仕事、当時レストランは
とても忙しくて月の休みを満足に
消化することは難しく
月に4日取れて良い方だったし
基本12時間以上は店舗に滞在していた
当然まだ小学生の息子を一人にして
働くことは出来ない。
でも夢を実現したこのレストランの料理長は
まだまだこれから店を作っていく段階
母は苦労して一人でいろんな人の人生を
背負ってきたが、身寄りは僕しか居ない。
だが幸い当時はテナントを数件貸していた為
生活が困窮することはない。
そこで僕は決断した。
もう最後になるかもしれないのなら
最後の親孝行をしようと。
僕は憧れの子供の頃から憧れていた
レストランを退職しその日から毎日
、息子を送り出してから母の病院へと通った。