エッセイ~今あなたにとっての幸せは何ですか?~
今、あなたにとっての幸せは何ですか?
ふとそんな言葉が頭をよぎった。
現在79歳の母は70歳まで
バリバリの女将さんとして
周りから尊敬され慕われていた。
常に誰かが訪ねてきては、いろんな話をし、
いろんな場所に行き
いつも誰を拒む訳でもなく皆の面倒を見ていた。
本当に大輪の花のような人だった。
2年前に認知症を患ってからは、
あまり外に出歩く事もなく10時頃に起きては、なんとか思い出しながらテレビをつけ、
ボーっと眺めている。
僕の作る昼ご飯を、いつも初めてのように喜び、同じ話題を幾度となく繰り返す…。
リハビリの為にも続けている洗濯も
最近は忘れがちで、僕が回している。
時折、テレビを消しては付け方を忘れ僕に、
付けてとせがんでくる。
夕方になると自分の部屋に入りまたずっとテレビを観ている。
夕ご飯が出来るとまた「これ私食べていいの?」と嬉しそうに聞いてくる。
夜が更けてくると思い出したように
洗濯機に入ったままの衣類を取り出し、
0時近くまでずっと洗濯物を干している。
ほとんど毎日がこんな感じの繰り返しだ。
今、あなたにとっての幸せは何ですか?
僕は気持ちの中でいつもそう問いかける。
母にとっての幸せを…。
きっと母は肩身の狭い思いをしている。
ボケがひどい時は言葉を荒げたり、
その事も忘れたり、色素の薄くなったその瞳で、どこかしらをただボーっと見つめている…。
そして状態の良い時は、僕に申し訳なさそうに「私、生きてていい?
あんたに迷惑かけてない?」
と涙を浮かばせながら聞いてくる…。
今、あなたにとっての幸せは何ですか?
テレビを観る事ですか?
ご飯を食べる事ですか?
ちゃんと洗濯が干せた事ですか?
ちゃんとお風呂に入れた事ですか?
そして僕は僕に問いかける。
ちゃんと愛情を持って話掛けてるの?
面倒くさがらずにご飯を作ってあげてるの?
笑い掛けてあげてるの?
「おはよう」って言ってる?
「おやすみ」って言ってる?
きっと、全く足りてないと思う…。
限らた時間の中で、
また素直に母に「ありがとう」
と言える自分にもう少し成長出来ればな‥
と思う。
そして最期の時には、
母に「幸せやったよ」と
少しでも感じてもらえてたら、僕は幸せだ。




