進行
ある日の休日
少し寝坊をしてキッチンに降りていった
僕の目に飛び込んできたのは
異様な母の光景だった。
母は1kgある上白糖の袋を全て鍋に溶かし
水で薄めて飲んでいた。
「何してんの?!そんなん一気に飲んだら
倒れるで!」
驚いてやめさせようとする僕に母は
「なんで?だってこれ美味しいねん
はよご飯ちょうだい」
と少し急かすように怪訝そうに言った。
その日は肉じゃがを作るつもりだった僕は
母が飲んで無くなってしまった上白糖を
スーパーまで買いに行った。
家に戻ると今度はポン酢を一気飲みする母を
必死に止めた。
「すぐに作るから!向こう行ってて!」
少し言葉を荒げて僕が言うと
母はブツブツ文句を言いながら居間に座った。
肉じゃがを完成させ蓋をして
僕はやっとお風呂に入った。
髪を乾かしながらキッチンに行くと
大鍋で炊いた5kgはあろうかという
肉じゃが全てを母は平らげていた。
「お母さん!これ今日の1日分!
優希の分もあるんやで!」
僕は穏やかに母に伝えることは出来なかった。
母は怯え大声で泣くとまたすぐに機嫌が戻り
僕に聞いてきた。
「なあなあ今日のご飯何?」
僕は言葉を失った。
その日から母が飲んだり食べたりしないよう
全ての調味料を処分して
包丁や洗剤などを危ないものを捨てた。
家で一切料理が出来なくなり
育ち盛りの優希にも
何度食べても満腹感の無い母にも
スーパーやコンビニで買った弁当を
買い与えるようになった。
同時に家計を考えて
なんとかお金を稼がないとと
心の焦りを覚えた。
息子が中学二年に上がる春先のことだった。