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突然の電話
34歳7月
僕は当初描いた目標を達成して
そのレストランの料理長になっていた。
実は途中28歳の時に一度辞めていて
イタリアンを中心に街場のレストランで
修行していたが
31歳の時に復職し僕の得意な独自の料理を
出して良いと言うあり得ない条件を頂き
時折特別なご予約を頂いたお客様には
ビュッフェスタイルのパーティーや特別コースを
提供したりと楽しく自由にさせてもらっていた。
僕を面接して下さった料理長は奥さまのご病気で
介護の為に退職なさったと聞いた。
挨拶出来なかったのがずっと心残りだった。
就任して1年が過ぎた7月16日
店はそろそろ盆営業に備えて人員の確保や教育など
とても大切な時期だった。
ランチの営業を終え忙しさもマシになる16時頃
ホールの方からお電話が入ってますと呼ばれた。
出てみるとそれは救急隊員からの電話だった。
「お母さんが四ツ橋の交差点で事故に遭い今
阿波座の病院に救急搬送しました」
と事務的だが深刻さが伝わる口調で言われた。
僕は上司にあたるのグループ料理長に事情を話し
ディナー営業を切り上げて病院へと向かった。