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バイト先で金髪悪魔幼女とかを相手している俺ですが、それでも普通な人生を過ごしたい  作者: 天近嘉人
BAR『DEVIL』主催ドキドキ肝試し大会

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某のサムライソード

 彼女らしくない怒声が暗闇に反響して吸収された後、その場で胡坐をかいて座り込み胸の谷間に手を入れたかと思うとそこから缶ビールを取り出した。


 そのおっぱいどうなってんだよ、四次元ポケットかよ。皆の夢を叶えてくれる未来ロボットなの? まぁ男の夢は叶えてくれそうなボディープロポーションではあるけれども。


 と、そんな頭の悪いことを考えている場合ではない。


 「あの、俺これから予定があるんでもう帰りますね。ムウマさんもお酒は程ほどにしておいて下さい」


 そう言い残し、俺は再びムウマに背を向けた。


 あんな悪酔いした奴に構ってられるか。肝試しももう中止だ。幽霊に関しては後日ミカに頼み込んで成仏してもらうことにしよう。


 歩き始めドアに手をかける。するとここで。


 「痛てっ」


 俺の後頭部に何かがぶつかり思わず立ち止まる。そんな俺を的当て代わりにでもするようにコツリ、、またコツリと何かが投げられるのであった。


 何かが地面に転がり、俺の股を抜けて目の前まで転がってきたので手にとってみる。


 「……何でネジなんか持ってるんですか」


 ネジを持ちながらムウマの方に振り向く。すると彼女は魔境の谷間に手を突っ込んでから。


 「たださん駄目じゃあないですかぁ。女の子に背中を向けたら危ないですよぉ。そんなにお尻を向けられたら童貞より先に処女を奪いたくなるじゃあないですかぁ」


 谷間から取り出したのは長さ約一メートル弱はあるであろうそれ何処に使うんだよってくらい大きいネジだった。


 流石に冗談だと思ったのだがムウマの目は据わっている。それが酒で酔っ払っているからだと思いたいのだが蝋燭に照らされて光る極太いネジヤマが無言の威圧で俺を脅迫している。


 「分かりましたよ。座ればいいんでしょ」


 俺はここ最近ヘビースモーカーのように吐いているため息をまた一つ吐きムウマの隣に座った。処女どころか人生卒業したくないし。


 彼女はすっかり機嫌を直したのか極太ネジをおっぱいポケットに隠して代わりにまた缶ビールを取り出した。


 本当にどうなってるんだよ。マジで四次元ポケットだろそれ。




 「――それで国ヶ咲と何があったんですか?」


 ムウマから貰った缶ビールを飲みながら俺は本題に切り込むことにした。プライベートでは酒は飲まないのだが今日は飲まないとやっていられない。因みに缶ビールは生温かい事に関しては敢えてツッコむんでいない。


 「何があったもクソもないんですよっあの人はもうっ」


 ムウマは苦虫を噛み潰したように顔を歪めてビールを飲み干した後で。


 「……勃たないんですよ、あの人は」


 「え?何が立たないの?」


 「だからナニが勃たないんです」


 俺はこれ以上の追及を止めて缶ビールに口をつける。もっと深刻な恋の悩みとかなのだろうと思っていたのだが一気にアホ臭くなった。


 「見た目に反比例してナニが凶悪って言うのがこの業界では常識の筈なのにあの人のナニってジェリービーンズみたいなんですもん。よくそんなお粗末なもんぶら下げて街歩けますねって感じ」


 俺の気持ちを知らないムウマは抑えていた枷が外れたのか土砂まじりの愚痴が一気に零れだす。いや、業界とか知らないしお陰で今後一生ジェリービーンズ食べられなくなったんですけど。


 人間色々溜まっている物を放出すると気分が良くなるものだ。しかしムウマの表情は正反対で。


 「初めは緊張の所為だと思っていたんです。でも私知っていました。分かってました。けど気づかない振りをしていただけなんです。私みたいな女はあの人の好みではないことを」


 彼女は視線を飲み干した缶ビールの穴に落とし呟く。


 確かに、国ヶ咲はロリコンである。それもあのマスターさえドン引きさせるほどの重症だ。あいつの歪んで腐りきった性癖の対象はまだ未完成の少女、それに対してムウマは身体もそうだが大人しめで控えめで男視点から見れば理想の女像、つまり完成形と言える。


 完成されているからこそ未完成には勝てないなんて皮肉なもんだな。


 俺はこの問題について何とかしたいと思いつつも言及はしない。これは二人の問題だ、もし運命の赤い糸が本当にあったとして今この二人の糸は変な風に絡まっている状態だ。


 それはまるで首吊りに使う縄のように首に巻きついて息が苦しいかもしれない。それを第三者が断ち切るのは簡単な話だ。


 ただその縄が赤い糸なのであれば、二人が愛し合っているのであれば、二人で協力して解き合うのが一番だと俺は思った。ただ単に他人の恋愛相談ほど面倒くさいものはないなんてこれっぽちも思ってない。


 俺も一本目の缶ビールを飲み干し床に置いたところでムウマの胸がブルブルと横に振動し始めた。


 何が起こったのかと思えば彼女は再度手を突っ込む。引き抜かれた手に握り締めていたのはスマートフォンだった。


 どうやら電話が来ていたらしく彼女が画面を確認すると顔が渋る。そして恐る恐る耳に当てた。


 『急に電話して御免っ! 今話し出来るでござる……いや、出来るかな?』


 漏れてきた鼻息まじりのその声の主は国ヶ咲で間違いないだろう。ござるとか御免とかあいつしか言わないし。


 「話って何ですか? ……やっぱり別れ話ですよね。そうですよね……」


 『別れ話って何を言ってるんだい? 某はムウマ殿を心から愛しているでござる』


 「……愛してるって、そんな嘘つくの止めて下さい。貴方が小さい女の子が好きなことくらい知ってるんですからねっ! だから私には興奮しないんでしょっ! 勃たないんでしょっ!」


 ムウマの悲痛な叫びが部屋の蝋燭の火を揺らす。彼女の瞳には涙が溜まり細くしなやかな人差し指で拭った。


 国ヶ咲からの返答はなく、電話には無音が鳴る。部屋にも静寂が響き、蝋がゆっくりと溶け出す音だけが俺の耳に届いた。

 

 そんな間が生まれた後、電話の奥で荒馬のように大きな鼻息が一つ鳴る。どうやら国ヶ咲が何かを言う決心がついたようだ。


 『――確かに某はロリコンでござる。でもそれは趣味の一環みたいなことで本当に心の底から愛しているのはムウマさん、ただ一人なんだよ。その証拠になるかは分からないけどムウマさんと会う時、ちょっと下品でござるが某のサムライソードはビンビンで……』


 途中で言葉が途切れたと思えば『フヒヒっ』なんて気持ちの悪い照れ隠しの笑いが聞こえるが俺とムウマは浮かんできた疑問符で頭が一杯だ。


 サムライソードなんて最低な表現方法だが今は置いておくとして。国ヶ咲はムウマを愛している、そして会う時はビンビンだと言った。


 それってつまりはだな……。


 「じ、じゃあ勃っててあのサイズってことですか?」


 『はい、お恥ずかしながら仰る通りでござる』


 肩透かしを喰らうとはまさにこのことで、全身の力が抜けた俺の体は吸い込まれるように床に転がった。


 そんな俺とは逆にムウマは立ち上がってから。


 「分かりました。今から会いに行くので待ってて下さい」


 国ヶ咲が電話越しで何かを言っていたがムウマは通話を終了させてはだけた白装束を着直し、帯をきつく締めた。


 「すいません多田さん。私ちょっと用事が出来たので出掛けてきます」


 「用事っていうのは一体……」


 「大したことじゃないですよ……ちょっとばかし私の可愛い子豚ちゃんを調教してくるだけなんで」


 目の前にご馳走、いや、獲物を目の当たりにした時のように舌なめずりをした後、彼女はスキップをしながら淫魔の間を後にした。


 どうやら二人を結んでいるのは赤い糸ではなく、鎖だったらしい。あれはサムライソードといえど断ち切るのは容易ではなさそうだ。やれやれこれから国ヶ咲君の恋模様はどうなることやら……。





 とか思うわけないだろ、時間返せくそっ!

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