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バイト先で金髪悪魔幼女とかを相手している俺ですが、それでも普通な人生を過ごしたい  作者: 天近嘉人
跳んで泳いで夏の海

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海水はしょっぱい。オカマの妄言はあまい。

 俺はしたり顔の馬鹿とニヤケ顔のオカマを睨みつけながら。


 「……二人とも。何しに来たんですか?暇なんですか?」


 全くただでさえ睡眠不足でイラついているのに、こいつらときたら本当に手を出すところだった。


 「別に暇してるわけじゃないし。お師匠と多田が地獄に来てるってオカマさんから話を聞いたから顔をだしてあげたのよ」


 俺はお前の馬鹿面なんか見たくなかったけどな。


 俺は心の中でアイニィに対して愚痴をこぼした後、顔にかかった水を服の袖で拭う。かけられたのが海水だったらしく、口の中がしょっぱい。服までびしょ濡れになったので着替えなくてはいけなくなった。まだ午後の仕事もあるというのにこの馬鹿共は。


 するとアスモデウスがくねくねと腰を動かす気持ち悪い動きをしながらこちらに向かってくる。


 俺の肩にトンとゴツゴツした両手を乗せるてから。


 「まぁまぁそんな怖い顔しないで。それよりもどう?女の子にぶっかけられる気分は?立場が逆転したみたいで興奮した?」


 「……俺にそんな特殊性癖はありません」


 こいつはいちいち卑猥なんだよ。この性欲の塊が。


 俺の返答にイマイチ納得がいかないのか割れた顎を擦りながら微妙な顔のアスモデウス。


 「あらぁ。健全な男の子だったらあんな美少女にぶっかけられて嬉しくない筈ないのに」


 美少女?何を言っているんだこいつは。目の前にいるのはポンコツを身体で表現したようなしょうもない奴しかいないが。


 「ほうらよく見て。アイニィちゃん普段は軍服だから分かりにくいけど結構良い身体してるのよねぇ」


 オカマが俺の耳元でポツリと囁いた。


 俺は改めてアイニィを見てみる。


 迷彩柄のビキニ姿に軍隊上がりの均整がとれた身体つき。胸も大きすぎず小さすぎず。よくあるくだらない質問で『何カップが好き?』というのがあるが彼女の胸は正に男性が理想とする大きさだろう。


 健康的なお腹におへそ。そしてすらりと伸びる脚。


 彼女の無邪気というか、能天気面はビーチとの相性も悪くはない。


 そのままジィーっとアイニィを観察していると。


 「ちょっなによジロジロこっち見て!」


 視線に気がついたのかアイニィが両手を腰に当てながら頬を膨らませてこちらを睨んできた。


 おっと機嫌が悪くなる前にやめておこう。


 「ね?アイニィちゃん可愛いでしょ?それとも崇ちゃんはあたしの方が好みかしらぁ?見てぇこのブーメランのパンツ。今日の日の為の特注品よぉ」


 そう言ってその場で腰を振り始めるアスモデウス。食い込んだ股とお尻が気持ち悪い。


 いや、初めからお前なんて微塵も興味ないのだが。


 俺はため息をついて腕時計を確認する。


 もう休憩時間も終わりだ。これからまた悪魔共の相手をしなくてはいけない。


 「二人とも悪いけど俺仕事に戻るんで」


 「えっ?もう戻るの?」


 俺の声に腑の抜けた声を出すアイニィ。


 「俺は元々仕事に来てんの。じゃあな」


 俺は二人から振り向き、海の家に足の運ぶ。


 「多田!ちょっと待ちなさい!」


 すると後ろから声をかけてくるアイニィ。なんだ?まだ用事があるのか?


 俺の呼び止めた彼女はその場で足をくねらせモジモジしている。用件があるなら早く言って欲しいのだが。


 コホンと彼女が大袈裟に一息ついたところで。


 「……仕事が終わったら遊んであげてもいいからね。特別に」


 恥ずかしそうに顔を赤くしながらそんな事をいうアイニィ。俺としては何がそんなに恥ずかしいのかは分からないが。


 もう既に疲れているのに加えこれから午後の仕事もやらなくてはいけない俺としては遊ぶ余裕なんかない。ただまぁ折角海に着たことだし思い出の一つとして遊んでやってもいいかな。


 俺は頷き、分かったと一言だけ告げて仕事に戻るため彼女達に回れ右をして背を向け海の家に足を運ぶ。


 すると後ろから何やら話し声が聞こえてきて。


 「やったわねアイニィちゃん。これで崇ちゃんとの距離も急接近する筈よ」


 「はぁっ!?別にあいつと仲良くしたいわけじゃないし。ただ海に着たのに仕事だけで終わるなんて可哀想だから誘ってあげただけだし」


 「おほほっ素直じゃないんだから。海に来て男女二人きり。一頻(ひとしき)り遊んだ後で岩場で休憩しないかと誘われて夕焼けをバックに岩に手をつけてバックなんかしちゃったりするものよ」


 「岩場でばっく……?なによそれ。貝とかヒトデの仲間?」


 「あらぁ、まだこの話は貴方には早かったわね。おほほっ」


 全部聞こえてるんだけど、何を吹き込んでるんだこのクソオカマは。


 後アイニィはずっとピュアのまま育って欲しいと思いました。



 午後の仕事が始まってから一時間が経過した。


 もうピークは過ぎており、客もそれほど来なくなった。皆あの赤い海に夢中なのだ。


 俺はカウンターに頬杖をつき、ボーっと海を眺めていると。


 ピンポンパンポーン。


 『迷子のお呼び出しをします。本日二名でお越しのアイニィ・パトリシアちゃん。お父様……あ、お姉さまがお探ししています。特徴は迷彩柄の水着、金髪のショートヘアー、天然そうな顔をしているそうです。ご本人様もしくは目撃された方はスタッフルームまでお越し下さい』


 砂浜に立てられているスピーカーがそう告げるとブツリと切れる。




 …………何をやっているんだあの馬鹿は。

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