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昼休みに悪魔と意中の彼は唐突にやってくる

 ラブコメ漫画のようなテンプレ展開から一日経過し、今は大学の昼休み。


 面倒くさい午前の講義を終わらせた俺は昼食をとる為に何時も食べているお気に入りのスポットへ向かう。


 向かった先は大学の近くにある公園だ。


 平日の昼なので公園で遊ぶ子供もいなく、一人でゆっくり気ままに昼休憩が出来る最高のスポットだ。


 俺は生い茂る木の下に設置されているベンチに座り、講義で座りっぱなしだった身体を伸びをしながらほぐす。


 それが一通り終われば最後に大きく息を吸った。


 大学の、人混みが密集している所より、ここは空気が美味しい、仄かに香る緑とお日様の香りを鼻で楽しんでから吐く。


 清々しい、なんて清々しいんだ。


 俺が求めているのはこれだ、暖かい太陽の日差しを感じながらのんびりと平和に過ごす。


 これこそ平穏で平和な生活と言えるだろう。


 俺はコンビニ袋を漁り、そこから卵のサンドイッチと缶コーヒーを取り出す。


 包装紙を取ってからサンドイッチを食す。パンがふわふわで仄かに甘く、卵の甘みそしてしょっぱさが丁度いい塩梅で美味しい。


 晴れ空の下、お昼ご飯を食べるのはいいな、開放感があって気持ちがいいしなんだかピクニックに来ている気分だ。


 まぁピクニックにそこまでの思い入れはないが、きっと先生達はこの素晴らしい昼食を子供に教えたかったんだろう、多分違うけど。


 そのままサンドイッチを食べ終え、缶コーヒーを開けながらボーっと空を眺める。


 ああ、いつまでもこうしていたいなぁ。


 だが、のんびりしているこの状況でも俺の脳裏にはバイトのことがちらつく。


 今日も働かなくてはならないのだ。


 昨日は本当に散々な目に合った、帰った後ベットで一人悶えるくらいには酷い目にあった。


 今日はそんなことになりませんように。


 心の中で祈りながら缶コーヒーを啜る、と、そんな時に。


 「おっ!見つめたわよ崇ちゃん。おーいっ!」


 どこか聞き覚えのある男性の声が耳に入る。


 ……どうやら早速酷い目に会いそうだ。


 俺は声の主へと首を向ける、そこにいたのは案の定アスモデウスだった。


 彼は俺に近づき、そして隣に座る。


 「んもう、探したわよぉ。大学に行っても何処にも見当たらないんだものぉ」


 身体と密着させて、自分の手を俺の太ももに置くアスモデウス。


 なんだよ、手つきが気持ち悪いんだよ。


 「……何しに来たんですか?……わざわざ俺の大学まで行って」


 つかよく大学に入れたな、こんな怪しい格好してるのに。


 「それは、後で話すわ。……それにしても二人とも遅いわねぇ」


 彼が言う二人になんとなく嫌な予感がしながらも、公園の入り口を見つめていると黒いフリル付きの日傘を差す小さな人が入ってくる、その後ろには五月だというのにトレンチコートを身にまとい、サングラスとマスクをしている怪しい人物が。


 その二人も俺の方へやってきて、目の前で止まった。


 「ふむ、一人ぼっちで昼食とは寂しい奴だな」


 マスターが嘲笑的な笑みを浮かべて俺に一言。


 今日のコーデは全体を黒で統一しており、日傘に似たフリル付きのドレス、頭には黒いバラのカチューシャが飾られていた。


 「マスターこそ、相変わらずの私服ですね。……ところで隣の怪しい奴は?」


 マスターの隣に立っている見るからに職務質問されそうな人物はマスクとサングラスを取ってから。


 「こ、こんにちは……」


 正体はサキュバスのムウマだった。


 「ムウマさんだったのか。なんでこんな格好を?」


 「あ、それはですね。私人間界に来てまだ日も浅くて、私服を持ってなくて。……流石に普段の格好で街を歩くのはまずいかなぁっと」


 「いや、その格好も対外ですけどねっ!?」


 俺は悪魔達の襲来で平穏な昼休憩をぶち壊されたことに苛立ちを覚え頭を掻き毟ってから大きなため息をつく。


 「で、何しにきたんですか?冷やかしだったらぶっ飛ばしますよ?」


 「君がどうやって私をぶっ飛ばすのかは少し興味があるが今日はそんなくだらないことの為に来たではない。……ムウマ君、君の口から話すのが早いだろう」


 「は、はい。ええっとですね。昨日言った私の好きな人が実は多田さんと同じ大学で……それで多田さんが何か知っていないかなぁと思って」


 「あ、そうなんですか」


 ムウマが話している途中、隣のオカマは俺の太ももを扇情的に触ってくる。


 ほんと鬱陶しいなこいつは。


 さて、本題だが、俺は人並みには友人がいる。


 しかし、どれも頭が足りない馬鹿共でムウマが昨日言っていたまじめで、誠実そうな奴なんて見たことない。


 「悪いけど知らないな。同じ大学でも人がいっぱいいるし、それに学年も違うかもしれないだろ?」


 「そうですかぁ……」


 シュンと肩を下げてしょんぼりとするムウマ。


 「まぁ、大学に行って話だけでも聞いてみましょうか。あ、俺一人でやるのであんたらは帰って下さい。絶対についてこないで」


 俺は鬱陶しいオカマの手を払い、ベンチから腰を上げて大学へと戻ろうとした。


 その時、一人の男が公園に入ってくるのが見える。


 その男は太り気味で団子鼻に黒縁眼鏡、赤いチェック柄のシャツを無地のズボンにインしている見るからにあれな人だ。


 こんな昼に何をしにきたんだろうか、まぁどうでもいいか。


 俺はそいつを無視して大学へと戻ろうとした、その時。


 「多田さんっ!多田さんっ!」


 ムウマが後ろから俺の肩を叩いてくる。


 なんだ一体。


 「どうしてんですか?俺、ちょっと急いでるんですけど……」


 「居ましたっ!あの人ですっ!私が好きな人っ!」


 興奮気味に話すムウマ、彼女が指をさす方向にいるのは先程の男。


 「え、ええっとあの人ですか?」


 俺は今にも頭痛が起きそうな頭を抑えながら聞いてみる。


 「そうですっ!あの人ですっ!間違いありませんっ!」



 げ、げぇ……。

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