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サキュバスと二人きり、密室

 無理やり、部屋に閉じ込められた俺とムウマ。


 お互いに何を話せばいいのか分からず、部屋の中は沈黙が続いた。


 くそ、あのオカマとロリッ娘め、面倒な事しやがって。


 後で覚えておけよ、とか思ったけど実際やり返したらその数十倍恐ろしいことされそうだからやんないけど。


 俺はチラリと横目でムウマを見る。


 困惑した表情を浮かべて、オロオロと身体を揺らす、その度に揺れる二つの果実。


 目のやり場に困るな、流石淫魔と言ったところか、男性の欲求を満たすには十分な身体つきをしている。


 大きな胸に肉付きのよい腹部、スラリと伸び、すべすべな素肌を誇る脚。


 こんなのと狭い一室に二人きりとは恐らく世の男性誰しもが羨むシチュエーションだろう。


 しかし、俺は違う、平穏な生活を求める俺がこんなところで過ちを犯してはならない。


 こんなみてくれだけの女に惑わされるな、自分をしっかり持て。


 心頭滅却っ!心頭滅却っ!心頭滅却っ!


 バシバシと頬を叩き、心を落ち着かせる。


 俺が急に頬を叩き出したのでムウマがびっくりしているが気にしない。


 「あの、多田さん?何をやってるんですか?」


 「ああ、こっちの都合なので気にしないで下さい。……それよりこれからどうしましょうか?鍵をかけられているみたいだし、何か脱出する方法を考えないと」


 「そうですね、出口とかあればいいんですけど」


 俺はドアの前に立ち、ドアノブを捻ってみるが、鍵をかけられている為案の定開くことはない。


 ならば強引だが窓から脱出しようとしたがこの部屋には窓がなかった。


 窓がない部屋とかありえないでしょ、どうなってんだここは。


 どうやらここは完全に密室状態な訳だ。


 どうしてこんな目に……。


 俺はため息をついて、マスターのベットに腰を下ろした。


 ベットは中々上等な物を使っているのか、ふかふかしている。


 それがまた腹立たしいが。


 座りながら何か脱出する方法はないかと考えているとムウマが寄ってきて。


 「すいません、隣座ってもいいですか?」


 「あ、どうぞ」


 俺の了承を得ると彼女はちょこんと隣に座る、ベットが軋み、軽く体が沈む。


 「あの、すいませんね。私の所為でこんなことになちゃって」


 ムウマが俯きながら申し訳なさそうに謝って来る。


 「いえ、ムウマさんの所為じゃないですよ。悪いのはあの二人だし」


 「そ、そうですか……」


 そこから言葉は途絶え、再び沈黙が広がる。


 気まずいなぁ、何か話した方がいいんだけど、話題もないし。


 何か話題はないかと、ムウマをチラリと見て考えようとし……。


 「えっ?」


 俺はムウマの露出されている肩に視線が釘付けになる。


 これは彼女の肩が美しいとかそんな意味ではない、何かが付いているのだ。


 それは一見虫のかと思ったが違う、よく見れば人間の目玉に小さな手足が生えている見るからに不気味な生物だ。


 なんだこれは……?


 「あの、ムウマさん肩に何か付いてますけど……?」


 「えっ?肩?」


 ムウマがキョトンとした顔で自身の肩を見る。


 するとその目玉の生物も彼女の方をギロリと睨みつける。


 「きゃああああっ!!!」


 先程まで沈黙が包み込んでいた部屋にムウマの絶叫が響き渡る。


 「とってっ!とって下さいっ!」


 「わ、分かりましたっ!」


 俺は恐る恐る手を伸ばし、目玉の生物を取り除こうとするが、ムウマが恐怖から身をバタバタと動かし、狙いが定まらない。


 「ちょっと、動かないで下さいっ!今すぐ取りますからっ!」


 「はやくっ!きゃあああっ!動いてるっ!これっ動いてますっ!」


 彼女の言う通り、生物は四本足で動き、彼女の肩からどんどん下へと向かっていく。


 そして足を止め場所が、彼女の大きな双丘からなる谷間部分だ。


 げぇ……面倒くさい所に……。


 「ふぇええんっ!助けてっ早くとってくだひゃいっ!」


 今にも泣き出しそうなムウマ、そして彼女の谷間から一向に動かない目玉。


 「でも、あの、虫が変な所に……」


 「いいから早くとって下さいっ!」


 ああくそっ!こうなりゃやってやるよっ!


 俺は緊張で震える右手を男性を冥府へ誘う魔窟へと手を伸ばす。


 すると、目玉は四本足を屈めたと思いきや、思い切り跳躍、谷間から脱出しそのまま何処かへ消えていく。


 俺の右手はスカを喰らい、空振った勢いと共に体勢が崩れて体がムウマの方へ。


 「どわっ!」


 漫画ならドシーンっ!なんかの効果音が付きそうな勢いで俺とムウマはベットに倒れこんだ。


 「う、ううん……」


 倒れた俺、しかし痛みはなく、何かふかふかで柔らかく暖かい何かが俺を包み込んでいた。


 何だこれは、ベットか?


 取り合えず、手で周辺を触って状況を確認してみる。


 すると俺の両手は何か膨らんだ物を掴んだ。


 どうやら俺の顔は膨らんだ何かの間に挟まっているらしい。


 何だこれは……?


 そのまま両手でその何かを触ってみる。


 ふむ、柔らかい、それでいて中心に何か突起したものが……。


 「ひゃんっ!そこは駄目ぇ……」


 何処からかムウマの甘い声が聞こえてくる。


 んっ?ムウマは何してんだ?しかし、この手触りは……。


 「多田さんっそこ私弱いんで……ぁ……そんな優しく撫でられたら……んんっ!」


 可笑しい、一体何が起こっているんだ。


 俺は手で漁るのは止めてこれまで出てきたワードを組み合わせることにする。


 柔らかくて暖かい、それでいて中央に突起がある物、その間に俺の顔があること、そして甘い声を漏らすムウマ。


 それらを総合して考えると……。



 もしかして、俺、やばい事してる?


 「うわわあああっ!!!ごめんなさいっ!」


 俺は勢いよく起き上がり、ムウマに全力で謝罪する。


 彼女はと言うと吐息を漏らし、頬を紅潮させ、目が少しトロンとなっている。


 「い、いえ。びっくりしたけど、嫌じゃあないですよ、ほら私サキュバスですし」


 ああもう完全にやっちまったっ!死にてぇっ!


 生まれて二十年、平穏に生きる為、問題を起こさないで生きてきた俺にとって始めての大失態だ。


 どうしよう、とりあえず謝り倒すしかねぇ。


 俺が彼女に頭を下げ謝る、彼女は笑っているが内心傷ついている筈だ、俺としたことがやってしまった。


 何度も何度も頭を下げ、謝罪しているところで。


 「んっ?」


 なんか、光が漏れてる……?


 不思議に思った俺は目線だけで光の元を辿ってみると光はドアから漏れているようで、よく見るとドアが少し開いている。


 もしかして……。


 「おいっ!この悪魔共っ!何覗き見してんだっ!?」


 俺はドアの方へ行き、勢いよく開ける。


 するとドアの前で屈んでいたマスターとアスモデウスがこちらに振り向き、やれやれと言わんばかりに両手のひらを上に上げて首を振る。


 「ちょっと崇ちゃん駄目でしょ。あそこまでいったんだからちゃんと最後までヤりなさいなぁ」


 「出来るかっ!誰がやるかこのクソオカマっ!…………覗きなんて趣味悪いですよ。つかあの気持ち悪い虫も二人がやったんでしょっ!」


 「あれは、地獄ではよく草原なんかに居てな、子供達に人気なんだよ」


 「知るかっ!そんなもんっ!二人とも何がしたいんですかっ!?」


 「そりゃあムウマちゃんの助けになる為じゃない。ねー?ベリルちゃん」


 「ああ、そうだ。別に君がサキュバス相手に性欲に身を任せてどんな変態プレイするかなど期待していたわけではない」


 「おい、本音漏れてるんですけど」


 二人、少なくともマスターが面白半分で閉じ込めたことに重りでもつけたように身体が重くなる。


 遅れて合流したムウマが俺の肩を叩いて。


 「あの、私は大丈夫ですからね?本当に気にしないで下さい」


 そんな優しい言葉も今は重りの重量が増えるだけだ。


 ああ、こんなクソバイトやめてぇ……。

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