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再来のオカマ

「ベリルちゃんおひさ~。と言っても数時間ぶりかしらぁ?おほほっ!」


 やたらとハイテンションなアスモデウス、まぁ何時も通りだが。


 「崇ちゃんも久しぶりねぇ。相変わらず面白みのない顔しちゃって」


 「それは褒めてんですか?貶してんですか?」


 「褒めているに決まっているじゃない。おほほほっ!」


 なんだこいつ、前から全然話が掴めない奴だ。


 自分の周りともテンションの差に気がついたのか、不思議そうに首を傾げるアスモデウス。


 「あら?どうしたの?皆元気ないじゃない?ほら折角お酒が飲めるんだから楽しまなきゃ」


 そういう状況じゃあないんだけどなぁ。


 「ベリルちゃんも、ほらスマイルよぉ。スマイル。可愛い顔してるんだから、ね?」


 「誰の所為でこんな疲れている顔をしていると思っているんだ。ったく、今日はろくな日じゃないな。この男に寝込みを襲われるし」


 はっ?こいつ今なんて言った?


 マスターの発言に驚いた表情をする二人。


 「まぁっ!やるじゃなぁい。人って見かけによらないのねぇ」


 「いや、俺は何もしてないからっ!」


 「多田さん、凄い、是非アドバイスをしてくれませんかっ!?」


 「だから俺は何もしてないからっ!言葉の綾だからっ!……マスターも変な言い方しないで下さいっ!」


 そう言ってマスターを睨みつけると。


 「だって……勝手にお部屋に入られて……それで、ぐすん」


 目を擦り、あたかも泣いている素振りを見せ始める。


 くそっ!このガキはっ!


 今すぐにでもカウンター越しからぶん殴ろうかと思ったが殴ると俺がどうなるか分からないので出しかけた右拳を抑える。

 

 するとマスターは先程の泣き顔は何だったのか、ケロリといつもの表情に戻って。


 「さて、アスモデウス。君を呼んだのは他でもない。彼女の相談に乗ってもらう為だ。詳しいことは電話で言ったよな?」


 「分かっているわよ。……貴方がムウマちゃんね。話は聞いているわ」


 「は、はい。よろしくお願いします」


 威圧感のあるオカマに少し圧倒されている様子のムウマ。


 彼はムウマの身体をまじまじと眺めた後で。


 「ふぅ、男の人が苦手って言っても私達は淫魔よ。精気を搾り出すのが仕事だし、それが生まれもった性なの。いい身体してるんだから、頑張んなさいな」


 「ちょっと、待て。アスモデウスも淫魔なんですか?」


 気になって横から入ってしまった。


 だって、淫魔って言ってもねぇ、まぁムウマは分かる、けどもこいつが淫魔って出会った男全員逃げるだろ。


 「あら、私は色欲の悪魔よ。つまりこのサキュバスちゃん達より少しだけ偉いの」


 「えっ?貴方、本当にアスモデウスさんなんですかっ!?」


 ムウマが驚く、何をそんなに驚いているんだ?


 「色欲のアスモデウスといえばもう淫魔の中ではレジェンドですよっ!こんな方に会えるなんて……」


 えっ?嘘だろ?このオカマが?


 だって、考えてみろ、レオタードで胸毛が生えたおっさんだぞ?


 「うふふ、あたしのことを知ってくれていて嬉しいわ。でもそれは若いときの話だから。今はもうしょぼくれたオカマよ。……それよりも今は貴方の話を聞かせて頂戴」


 アスモデウスが自慢げに、それでいて何処か懐かしむような顔でムウマに問う。


 それを受けたムウマは真剣な表情で。


 「はいぃ……。私は男の人が苦手なんですが。実は……す、すす好きな人が出来て……っ!」


 顔を真っ赤に染めながら、パタパタと火照った頬仰いだ。


 ほう、そうなのか、男嫌いでも好きな人って出来るものなのか。


 「あらぁ、それは素敵じゃない。どんな人なのかしら?」


 「はい、まじめで、誠実そうで、身長とか体格も私好みで、とにかく素敵な方なんです……っ!」


 「ほう。何処かの間抜けな男よりずっといいじゃないか」


 マスターが俺の方をチラリと見て、意味深な笑みを浮かべる。


 おい、なんで俺を見たんだ。


 「でも、私、男性とお話なんかしたことないから、どうやって話そうか迷っていて……」


 「そうねぇ。……誰か練習になってくれる手頃な男はいないかしらぁ?」


 「手頃な男、か」


 そう言ってマスターが何故か俺を見始める。


 その視線に気がついたアスモデウスもニヤリと紫色の唇を上げた。


 「ねぇベリルちゃん。崇君ちょっと借りてもいかしら?」


 「えっ?俺?でもまだバイト中だし……」


 「ああ、構わん。丁度空いている時間だからな。私の部屋を貸してやろう」


 「いやちょっと待って下さいよっ!なんで俺がこんなことしなくちゃいけないんだっ!?」


 冗談じゃねぇよ全くっ!


 俺が抗議の異議を申し立てると、マスターが。


 「言っただろう?客の相談に乗るのも仕事のうちだと。ほら行ってこい」


 マスターがそういうとアスモデウスが俺とムウマの手を引っ張りカウンターの奥にある部屋へと連れて行く。


 足掻こうとしたがこのオカマ、力が相当強く腕が抜けない。


 「じゃあお二人さんで楽しんできてねぇ」


 乱暴に部屋に俺達二人を放り込み、ドアを閉じた。


 その後、ドアからはガチャリと鍵を閉める音が聞こえる。


 ……どうしてこうなった。

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