コンマ1秒
「場末さん、さっきからこいつら何体かの集団で行動してませんか?」
俺は率直に問う。
「あぁ、こいつらは群れる習性があってな…同じ『主』に仕えるゾンビ同士で組んでやがるんだ。」
そう述べると、「モタモタしてる時間はねえ」と付け加えて俺の家へと走る。
そして、家に着いた時俺は落胆した。
ーー家のガラスが…割られてる。
恐らく奴らの仕業だ、一体俺に何の恨みがあるというのだ。
俺は長い事無職で家族は困らせたが、それ以外に人に迷惑を掛けた覚えは無い。
当然ゾンビに恨まれるような事もしていない。
俺は急いで家のドアノブを捻る。鍵は掛かってないらしく扉はすぐに開いた。
すると、玄関で待ち構えていたのは「お兄ちゃん!」と駆け寄る妹…ではなく、件の化け物。
俺がドアを開けた事に気付き此方に向かってきた。
咄嗟に拳銃を片手持ちで構え、撃つ。
ゾンビの左脚に風穴が開く。
ゾンビの動きが鈍る。
しかしそれでもゾンビは止まらず、左脚を引きずりながら、「いかにも」な呻き声を上げながら突撃してくる。
先程までのやり合いで解った事がある。
こいつらの弱点は頭部、頭を吹き飛ばせばwinだ。しかし、頭以外は狙っても致命傷にならないだろう。
こんな事なら前以て弱点を教えてくれよ先輩方…
次は頭を撃ち抜く。
敵をギリギリまで引き付けた時に気付いた。
ーー俺の利き腕、右腕が動かない事に。
「バカ!危ねえぞ!」
怒号と共に俺は背後から引っ張られた。
目の前には俺を庇う様に立ちはだかる場末、その手にはサブマシンガン。
連射する小気味のいい音が鳴り終わる頃には場末に触れるギリギリで倒れているゾンビの姿があった。
「叶海、あんな無茶なフォームで撃つから肩を脱臼するんだ、銃の扱いはゲームと同じだと思うなよ!」
そして場末は俺の右肩を掴み、関節をパズルをはめる様に合わせた。
その時、俺の右腕が動くようになった事に気付く。
「怒鳴ってすまない、銃の撃ち方なんて新入りが解る訳ないよな、だが次からは両腕でしっかり構えて撃て。そして撃った反動は上に流せ」
先輩からの命に関わるアドバイスを受け、自分の無力さを恨んだ。
「その声…助けが来たの!?」
聞き慣れた声がした。
紛れもなく、俺の妹の声だった。