『遭遇』
少し前。
夜中の公園前の通り。
「あら。あなた達」
私の前に見えるのは、一人は青年、一人は女性。姿形は見覚えのある人。
でもその人はそうであって、そうではない。
「戻る気になったの?」
二人は一緒に首を縦に振る。
「どうして」
その質問に二人は首を傾けていた。
「何故かわからない。けど戻ったほうが良いと感覚的に思った」
コクンと頷いた。
「じゃあ何で抜け出したの?」
すると二人はちょっとだけムスッとした表情になる。
「なるほど。寂しくなったのと、拗ねたのね」
二回程早く頷いた。
「ふふ。可愛い。じゃあ何で一緒にいるの?」
すると二人は、首を傾けたあと、互いに見つめ合った。そして何度も何度も首を捻るが、二人の中で答えは出ていないみたいだ。
「分かっていないのね。そっちの感情は持ち合わせてないのかな?」
言っている意味がわからないのだろうか、パッとしない表情だった。
「それは今後ね。早く戻ってあげなさい。あなた達の主人が心配していると思うから」
コクンと頷いた。
そしてペコリと一礼したあと、ササッと走っていった。
面白い人達……。人ではないか。
「フフ」
面白い。今までこんな状態を見かけるのなんてあまりなかったからね。
けど早いね。特にカゲル君。
モノに宿るのはもっと時間がかかるはずなのにね。
これは面白いかな。
どうなるかな。
まだ真実を話していないカスミと、真実を知らないカゲルとオタマジャクシズのメンバー。
さてさてどうするのかな。
退屈しのぎにはなりそう。
「フフ」
傍観者は口元を緩ませ、久しぶりの感情に胸を震わせながら、歩き去っていった。




