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オタマジャクシズ!!!  作者: 三箱
第三章 「決意! 年越し!」
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『部長と副部長の伝達』

「……他団体の部活と交流会を持とうと思っています」


 他団体と交流……。

 あまりピンと来なかった。たぶん想像力のなさもあるのだろう。


「なにそれ、面白そう!!」

「楽しそうかも」


 食いついたのは、メグとリナだけだった。

 他の部員の反応はまちまちであった。


「具体的にはどこの団体なんだ?」


 早くも質問をするのは耕次先輩。


「まだ確定ではないので、言えません。でも早いうちに決める予定です」

「じゃあ、何故今それを言ったのか……。いやそういうことか」


 耕次先輩はひとりでに納得し、腕を組んだままゆっくり頷いた。

 なぜ納得したのか、最初はわからなかった。でも少し考えると、もしかしたらという予想がついた。


「おいおい! 耕次いぃ。ど、どういうことだよ!」

「まあ、そうだな。たぶんだが、今のうちに慣れておけということだろ」

「ん? どういうことだ?」


 てるやん先輩は全くわからず、頭を捻る。


「大丈夫。てるやんはいつも通りにてるやんしておけば」

「エリ、嬉しいんだが、それはそれでわからん」

「それでいいんじゃない?」

 

 カスミン部長は笑いながら流すように言った。

 同じくその方が良いとは思う。


「ねえねえ。どういうこと?」


 左隣に座っていた大介が、僕の肩をトントンと指でつつき、困惑した顔を覗かせていた。


「大介、部活以外で他の人と話すことってあるか?」

「……。ほとんどない」

「じゃあ。そこだよ。僕も言えた柄ではないんだけど、たぶん早めに人に慣れておくようにということだろう」

「えっ。ええ」


 泣きそうになる大介を見ながら、僕も乾いた笑いを見せる。

 何か気の利いたことを、言えないだろうか。


「大丈夫とは言い切れないけど、他の人をメグよりマシだと思ったらいいんじゃない」 

「……。あーー」


 大介は上を向きながら、ぽんと手を打つ。

 正直この冗談って酷い言い方だと思うんだけど、思ったより納得してるのが怖い。


「ちょっと、聞き捨てならないんですけど」


 案の定、後ろの席からメグが獣の目で睨んでいた。


「ちょっとした言葉の綾だよ」

「……。一理はあるんじゃない」

「ちょっとリナ!!」


 苦し紛れの言い訳を、リナが援護射撃してくれるとは思わなかった。


「まあまあ。落ち着け落ち着け、どうどう」

「あとでしっかりシゴくから。って私は馬か!」


 カメケンもいい感じに染まってきた気がする。


「はい。そこ、落ち着いて」


 トドメと言えるカスミン部長の注意に、メグのものすごい殺気を背中に浴びることになった。


「みんなの察しの通りなんだけど、今後交流を持つ予定だから、準備はしてほしいという意味で言いました。確かに難しいことだとは思うけど、今後のために損はないと思います」 

「それに付け加えて、私達の演技は観客がいてこそです。色々な人と交流して知るのは絶対に必要になってきます。演技は一方的ではないということを知ってほしいからです」


 カスミン部長からのアヤメ副部長の言葉が、僕たちに深く考えさせるきっかけになった。

 現に僕はハッとさせられた。

 確かに演技は相手がいないことには始まらない。

 相手の反応によって喜びに変わったり、悲しみに変わることを僕らは経験はしている。


「言いたいことは分かった。これは願望だが交流会で演技できる場を取り持って欲しいな」


 耕次先輩の提案に、一瞬にして先輩たちの目が変わる。


「おお! そうだそうだ! 人前の演技をやりてえ!!」

「そうでござる! そうでござる!」


 先輩2人は立ち上がって、猛アピールをし始めた。


「もちろん。それは入れる予定ですよ。特に1年生には場数を踏んでもらいたいですから」

「おーーー!!」

「よし」

「ふむ」


 アヤメ先輩の言葉にそれぞれ歓声を上げる先輩3人。

 その意気を他所に、壇上にいる2人の視線はこちらに注がれることにより、僕たち1年は緊張が走った。

 

「それも兼ねての準備をしておいてねという私たちからの伝達です。皆大体わかった?」


 カスミン部長の言葉に、反応の種類は様々だったが、一応の理解を示した。 

 

「ひとつ聞いてもいいですか?」


 ただ1人沈黙を貫いていたある人の発言によって、ピリッとした空気が教室内を支配する。

 新木さんである。


「はいどうぞ」

「演技に関してですが、希望制ですか? それとも強制ですか? それとも選考でも行うのですか?」


 新木さんの質問は、確かに言われてみればそうだという内容だった。


「強制というと語弊があるけど、全員経験をさせるつもりではありました。ただそうね……」


 カスミン部長が考え込むと、隣にいたアヤメ副部長が不敵な笑みを浮かべた気がしたその瞬間。


「だったら、選考させようか!」

「え!?」


 僕を含めた殆どの人間が、アヤメ副部長を凝視した。


「とはいえ、全員にはやってもらうんだけど、なんというか、中途半端はまずいからね。あと交流する相手によっては、その中途半端は逆に不快を抱く場合もあるからね。選考という考えはありだね」


 アヤメ先輩が小言のような説明のように話す姿で教室内に漂う緊張が更に強くなった気がする。


「ちょっと待って選考する人は誰にするの? 私も出演したい!」


 部長はもうノリノリで演る気だな。目がルンルンとしている。でも選考の問題点、確かに。


「んー。私がしてもいいんだけど、それだと不満がでるから、全員で選考しようか?」

「え!!!??」


 2回目の驚きである。

 隣りにいる大介は泡を吹きそうなくらい顔が震え始めている。


「ただ1つ確認だけど、新木さんは、ほぼ初心者だけど、どうします?」

「出ます」


 即答だった。

 そして、チラッと僕に視線を向けたのだった。

 僕、いや僕だけではない。

 彼の言動で焦りが生まれたのは、僕だけではなかったはずだ。

 ほぼ初心者の彼が、躊躇いもなく言ったことが、部員全員、特に一年生の部員に明確な焦りを覚えたのを肌で感じ取ることができた。

 席が近かったのもある。

 

「わかりました。では部員全員で選考をしましょう。時期については交流会が決まり次第になります。ですが近いうちに、状況によっては、前日にすると言うかもしれません。ですので、今日のうちから演技内容の準備をしておいてください」


 ただの会議だと思っていたが、とんだ急展開を迎えたのであった。 

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