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オタマジャクシズ!!!  作者: 三箱
第三章 「決意! 年越し!」
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『収穫と次なる手』

 そして、しばらく談笑を続けていた。

 談笑と言うほど高尚かと言うとそうでもないけど、話に花が咲いたと言えばいいのかな。


「部長って、澄ました顔をしてても、結構エグいんだよ」

「バッ!! 何を言うんですかヒカリさん」

「だって部員みんな言ってましたよ。かなりの性へッ!」

「ヒカリさん!! それはまた夜にしてください」


 ヒカリさんのニヤニヤに、春宮さんが怒ったようにでも照れながらも、後輩の額に手刀を決めていた。


「へー。それは気になりますね。キッちゃんあとで教えて」

「それじゃあ、ナカッチ私と、夜の!!」

「それはいや!!」


 テーブルを挟んでいるのに、今度はアーヤの手刀が額に直撃する。

 痛そうなのに、楽しそうな菊川さん。


「菊川さんって、うちのエリとウマが合いそう」

「あー。そうだね。なんか似てると思った。でも合わせると暴走しそう」


 想像してみると、出会ってシンパシーを感じ始めて、意気投合して、それから……。


「確かになんか笑顔で肩組んで二人三脚で追っかけてきそう」

「……。待って、それやばい」


 アーヤがクフッとお腹を抑えて悶え始める。


「ぷっ。そ、それは、何か恐怖ですね。プッ」


 春宮さんまで、妄想の銃弾に被弾する。


「待って、私ってそんなイメージなんですか? って、しれっと馬鹿にしてます?」

「そんなことはないよ。でもエリとはたぶん仲良くなれると思うよ。もちろんいい意味で」

「何か含みのある言い方ですね」


 腑に落ちない表情の菊川さんと、笑いを堪える2人と、そこまで酷いこと言ったかなと困惑する私であった。


 とこのように、こういった閑話が続いていった。

 そしてあるタイミングで、春宮さんが話を切り出した。


「それで少し話が戻りますけど、これからも、こういった営業活動を続けるのですか? あ、別に変な意味じゃないですよ。今日も私達にとっても新たなことを知れたのは良かったですし」

「そうですね。前回が前回でしたので、地道に当たっていくつもりです」

「んー。それなら素人目線になるのですけど、ダンス部とか、舞台に関連する人たちに当たっていくのはどうでしょうか?」

「ダンス部?」

「そうそう! ジャグリングやってるんだよね、ナカッチの道具をチラッと見せてもらったことあるけど、そう言うのと組み合わせがいいんじゃないかな、刺激になると思うんじゃない?」


 言われて初めて気が付いた。

 そうだ今回目的が違うと言うことで、忘年会作戦は失敗したけど、舞台での活躍を目的にしている集団なら、色々収穫があるかもしれない。

 知名度もしかり。

 思いっきって話をしに来て良かった。


「本当に色々アドバイスをいただき、ありがとうございます!!」

「いえいえ、こっちも色々お話できましたし、それにびじ、コホン、文化祭での仲ですし」


 何かを言いかけた部分は聞き取れなかったけど、そう言っていただけるのはとっても嬉しい。


「そうだよ! もし定演があったら言ってね、部内に宣伝はしておくから、個人的に!」

「ヒカリさん! まあ、それはいいでしょう!」

「本当ですか! 私達もそうですね。大会があったら応援しに行きます!」

「「本当に!?」」


 2人揃ってテーブルを乗り上げる勢いで迫ってきた。

 表情から喜びが滲み出ていた。そして少しだけ息が荒かったのは妙に迫力があった。


「ええ。一度も見たことないから、見には行ってみたいです」

「応援されるなら絶対に頑張れるよ」

「そうですね。俄然やる気が湧いてきます」


 言葉まで興奮気味であった。


「はいはい。お二人さん、そこまでにしてくださいな。注目の的ですよ」


 ハッと気がつくと、カフェ内の半分くらいの人の視線を奪っていた。

 顔を真っ赤に染めた2人は、縮こまるように座った。


「絶対に、大会の日程を教えるので来てくださいね。あと連絡先を教えてください」


 春宮さん小声で話すと、静かにスマホを取り出した。そして追いかけるように、菊川さんまで無言でシレッとスマホを出したのはちょっとだけシュールだった。

 私は快くスマホを取り出して連絡先を交換した。

 アーヤと春宮部長も交換した。

 その後も話は盛り上がった。もちろん周りの視線に気を使いながらではあった。でも本当に楽しかった。


 結局キャンパスの門まで一緒に歩きながら話した。そして帰り際に、テニス部の2人が全力で手を振ってくれた。


「ふう。楽しかったね」

「そうだね。けどカスミン。私は結構ヒヤヒヤしていたんだから」


 帰り道。隣りにいるアーヤは、少し疲れた顔でいた。


「え。だったらもう少し早く助けが欲しかった」

「アレは、2人の顔色を伺っていたから。それに最初に言ったでしょ。カスミンの意志に任せようと思ったから」

「え。じゃあどこでヒヤヒヤしたの?」

「えー。カスミン気がついてないの?」


 んー。ど、どういうこと?

 真剣に考えてみるが、最初の方の緊張でまっすぐに話したところぐらいかなと思っている。

 だけど、今の会話からその部分じゃないのは理解できる。


「んー。わからない」

「わからない方がいいかも」

「ええー」


 結局、何度聞いてもはぐらかされてしまった。

 もうこのことはあきらめよう。たぶんそこは私が気づかないといけないだろう。


「それで、次なる手は考えてる?」


 アーヤは、満悦そうに私を覗き見る。


「春宮さんはダンス部とは言っていたけど、せっかくだからその提案に乗ってみようとは思うんだけど、ダンス部ってあのダンス部よね」

「そう。あの一番規模のでかい方」

「やっぱりそうだよね。最初は規模の大きさにびっくりしたけど、どのみち当たるつもりだったから、話に行こうとは思う。だけどパイプがないから、ひとまず当てを探そうと思うんだけど、一人思いついたの」

「え!?」


 アーヤがものすごく驚いた顔をしている。私また変なこと言った?


「誰?」

「マッキー」

「ああ。って、ああ」


 アーヤがこう微妙な表情をしている。

 なんかコロコロ変わって面白い。


「どうしたの?」

「いや、灯台下暗しなのかな。なんかカスミンより先に気が付かなかったことにショックを受けてる」

「え。そんなに落ち込むこと?」


 一瞬モヤっとした感情を押し込んで、話を続ける。


「とりあえず、知り合いに当たっていこう。私達だけで考えるのも限界があるし、それにマッキーに聞くという発想も、今まで出てこなかったのは、こう考えが凝り固まってしまっているから、どんどん聞いていこうと思う」

「確かに柔軟な発想もできなかったし。次の部活で部員にも聞いてみると話が進むかもしれないからね」

「そうだね」


 そう相槌を打つと、私は安堵の息をついた。

 緊張の糸が切れたのか、体全身の力が抜けた。

 と同時に冷たい風が首元を擦り、ブルッと体が震え、思わず両腕を抱えた。


「寒くなってきたね」

「ホントに。もうすぐ11月だし」


 あと少しで今年が終わる。

 私には先の未来が短い。だからこそもっと動かないと。

 私はアーヤの前に躍り出て振り返る。


「アーヤ。私頑張るから、サポートしてね」

「突然どうしたの?」

「いや。今年もあと少しと思うとね。頑張らないとと思っただけだよ」

「ふ。相変わらず脈絡もない。けどまあ部長には頑張ってもらわないと」


 アーヤは、やや呆れた顔で笑った。

 その顔が少しだけ陰を落としていた。

 でもそれに私は気が付かない振りをしたのだった。  

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