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オタマジャクシズ!!!  作者: 三箱
第三章 「決意! 年越し!」
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『今後のことを考える』

 夜遅く、カスミンとアーヤの家にて。


「ということで、今日こそ本格的に今後のこと考えよう」


 そう言って、アーヤと2人でテーブルを挟んで向かい合った。


「とはいっても、具体的にこれだと言うのを決めかねているのだけどね」


 そう。ここ数日話をしてはいるものの、良い案があまり思いつかないのである。


「んー。時間が有限だから早く手を打たないと」 

「じゃあ。とりあえずまず目の前の目標からだね」

「というと、知名度?」

「そう!」


 アーヤは、紙とペンをテーブルの上に広げる。


「まず、知名度を上げないとお客さんは来ない。そもそも知らないと、来ることなんてない。実際、夏の定期発表会はほとんど人がいなかったでしょう」

「確かに」

「じゃあどうやって増やすか」

「アーヤが前に言ってた営業ってこと?」

「営業という響きにちょっと語弊があるかもしれないけど、方向性はそれで合ってる」

「具体的には?」

「理想は友達を増やす。そしたら来てくれる確率は上がる。でもいきなりそれはハードルが高い、でも知り合いを増やしていくならできる」

「文化祭の女テニとボードゲームサークルの人たち」

「そう。他の部活と協力などして、知り合いを増やす。そしたら、その部活宛に宣伝をしやすくなる」


 文化祭で確かに知り合いは増えた。

 それに新たな発見もあった。

 アーヤはノートに書き込んでいく。


「それは、わかった。でもそれは文化祭というイベントがあったから。冬はそういう大学全体のイベントって少ないよね。だから増やしにくい」

「その通り。増やすのは難しい。じゃあ少しできた繋がりを維持していく、いやもっと強くしてはいきたい」


 全体イベントが無い中で繋がりを増やすのは難しい。


「確かにもっと交流したいよね」


 半分、私の欲が入ってはいる。でも仲良くなったのにこのまま終わるのも勿体ない。

 


「じゃあ。どうやって継続するかぁ。アーヤは菊川さんとは仲いいのよね」

「んー。まあ。そうだね」


 アーヤの反応が、微妙に歯切れが悪い。


「んー? 仲が良くないの?」

「そうじゃないんだけど、なんというか…逆?」

「逆?」

「文化祭の反応を見てたらわかるけど、私が言うのも何だけど、気に入られている」

「それがなにかまずいの?」

「まずくはないんだけど、こう好意の方向性が……」


 うんうんと唸るアーヤ。

 んー。どういうことなんだろう。好意の方向性って、確かに独特の雰囲気を持っていたけど……。

 私が疑問に首を傾げていると、アーヤは何かを諦めるように肩を落とした後、ノートにペンを走らせる。


「まぁ。でもどうにかなる当ては、そこだよね」


 女テニに丸をつけるアーヤ。

 んー。だとしても、どう行動を起こそうか。私もその菊川さんと仲良くなりたいけど、学部が違うし共通点がない。


「でも具体的にどうするか、女テニに大道芸を見せに行く?」

「んー? カスミンそれ、びっくりしない?」


 冷静になって考えてみる。いきなりジャグリング見せに行くは、流れ的に変である。

 んー。でも交流知名度、増やすには知ってもらいたい。

 最もらしい理由があればいいのかな?

 秋、冬。んー。年末。忘年会……。 


「もし仮に女テニが忘年会するとして、そのイベントの盛り上げ役で、大道芸を見せに行くとか?」

「えっ。んーー?」


 アーヤが腕を組んで、考え込む。


「い、いけそうなラインだけど、課題が多いね。ただ提案はできそうかな?」

「課題……。場所、環境、そもそも許可してくれるか?」 

「そうそう。あと他にもあるけど、まあ諸々打ち合わせはカスミンと女テニ部長で話し合ってもらわないとね」

「そ、そうだね」


 ジャグリング以外の仕事が増えることに、重荷を感じつつも、部の発展のためにと思い、頷いた。

 そして、他にすべきことも考える。


「この忘年会の出し物に参加できそうな部活やサークルを回っていく? 新しく知ってもらう活動もしないと」

「んー。そうだね。だめもとでも聞いてみないと、ただ当てがないから、確率は低そうだけど」

「それは皆に聞いてみよう。まあ可能性は低そうだけど、ただ以外な所に繋がり持ってるかもしれないし」

「ふふ。そうかも知れない」

「ええ。何で笑ったの?」

「いや?」


 私、おかしなこと言ったかな?

 ジーッとアーヤを凝視するが、顔に描かれているだろう文字を読み取れそうにない。

 

「あともう1つくらい宣伝方法考えたい」 


 アーヤに笑顔ではぐらかされた。

 他の話題にしれっとすり替えられる。

 仕方ないので1つ提案する。


「じゃあ、前も言ったSNSを使うとか?」

「んー。それも手だよね。色々問題もあるけど、学外での知名度も上げるためには必要な手段だよね。ただ問題も多いし、それに」

「それに?」

「部統会の規約的に大丈夫かな?」

「あー」


 ずんと重荷がかかった気がする。

 一応大学に所属している以上、大学の規約があるはず。

 SNSは今は世間では一般的で、宣伝でも使われているし、なんなら皆が普通に使っている。たぶん閲覧はみんなやってる。

 私はやってないけどね。

 ただ悪いことも耳にする。トラブルが起こる。身バレする。慎重にならざる終えない。

 それに大学所属の部活である以上、規約は確認する必要がある。ただでさえ問題を起こしている以上に、勝手にやって、部統会とトラブルになると更に印象が悪くなる。


「聞いてみるしかないね。気は乗らないけど、使える手は使う。それにもしかしたら何かしらアドバイスをくれる可能性があるかもしれないし」

「んー。あるのかなと思うけど、動いてみない限りはわからないから、動くしかないよね」


 アーヤと私は、気怠い気持ちを持ちつつも、動かないといけない現実を感じて、納得するようにした。


「SNSは少しずつやりつつ、今は大学内での知名度に力を入れる形で一旦進めようか」


 アーヤがそうまとめて、ノートをぱたんと閉じた。

 正直大変だなと感じている。これからのことだから気が重くなるのも事実だ。だけど、ふと思い出したのが、お客さんが少なかったあの舞台の光景。

 あの光景は嫌だ。あーならないためにも、できることをやろう。


「そうだね。そうしよう」


 私は決意を込めて、アーヤの言葉に頷いた。

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