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オタマジャクシズ!!!  作者: 三箱
第三章 「決意! 年越し!」
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『今後の課題』

 長かった。

 たぶん半年分ぐらいの不満の全てを吐いていった気がする。

 とりあえずもう顔と圧力が凄かった。

 エリ先輩とてるやん先輩が全く反論できない程に凄かった。

 そしてその長い説教が終わり、全員解散し、今に至る。

 いまだに脚がビリビリと痺れており、思うように動けない。


 簡潔に内容を話すと、初めはどんちゃん騒ぎに対する苦情であった。これが長かった。そして後半は今後の対策についてだった。

 それにより決定した取り決めが以下のとおりに。


 取り決め

・深夜22時以降の騒ぎを原則禁止。

・もし部活で何かしらの会を開く場合、または22時以降にも騒ぎが伸びる場合は連絡を入れて了承を得ること。


 この二つであった。


 ということで、階下の新木さんとは連絡先を交換している。  


 過去の所業の数々を思い返してみると、階下には優しくはなかったと思う。八割ぐらいは不可抗力なのだけど、それでも近隣に迷惑をかけた事実は変わりなかった。

 反省するしかない。

 最近、浮かれすぎてるから、バチが当たったのかな……。

 いや、これは起こるべくして起こった……気がする。

 後々みんなにも報告しておこう。


「はあ」


 ため息しかでない。

 ダメダメな自分と、周りを見れていなかった自分。文化祭での自分。

 本当に何もできていない。

 この状況で彼女ができているって、僕は絶対殺されるって。


 ネガティブに拍車がかかりまくってた。

 

 ネガティブ思考をひたすら繰り返し、ベットの上を転げ回り数分、どっと疲れて仰向けになり、天井を仰ぎ見た。

 考えよう……。

 まず、自分の修正すべき点。


 隙が多い。

 ジャグリングが上手くない。

 パッとしない……。

 勉強はまあ……。


 酷い。

 これ以上出そうとしたが、メンタルの限界を感じたので止めた。自分で自分を見返すって、こんなに辛いことなのか……。

 血管が詰まるような苦しい感じだ。

 「隙が多い」と「ジャグリング」は何とかなるかもしれんが、パッとしないは無理だな。治す方法が思いつかない。

 仕方ない。出来ることからやろう。

 まずは、ジャグリング(ボール)。

 ジャグリングは練習するしかない。ただやみくもにやるのはよくないが、でも一定の練習量は必要だ。少なくともまだ足りてない。それにツバキさんのためにも……。

 いかんいかん。ポッと熱くなる頬をつねる。

 真面目にしないと、それに誘ってくれた部活メンバーにもまだ僕は返せていない。本人たちはただ楽しんでいるだけなのかもしれない。まあ色々酷いこともあったけど、僕の生活に彩りを与えてくれたことには違いない。

 次の機会までには、もっと上手くならないと。


 ぎゅっとボールを握りしめ、立ち上がる。そして練習を始めた。


 ピロロン。ピロロン。ピロロン。


 画面を開くと、血の気が引いた。そして恐る恐る手に取る。


「もしもし」

「もう。夜だぞ早くねろ!」


 新木さんの圧で、画面から顔を遠ざける。


「じゃ、ジャグリングの練習していたんです。その場合も連絡するべきですか?」

「……。まあ。それなら……。いや。今日は遅いからはよ寝ろ」

「あ。はい!」


 今日は遅いってそんな時間だっけと、スマホを確認すると、23時だった。

 そんなに時間たってたのか。


「ったく。あと……。いや、その、なんだ、悪かった。怒りすぎた」

「へ?」

「いいからさっさと寝ろ!」

「は、はいいい!」


 プー。プー。プー。


 な、なんだったんだ? 謝ってくれた。

 えっと……。寝るか。

 混乱したときは寝るに限るのであった。



 

 こちらはカスミンの家にて。


「ムムムム」

「どうしたの?」


 考え事をしていたら、アーヤに気づかれるいつもの流れ。


「実は今ファイブボールの練習してるんだけど」

「ふむふむ」

「もう、いっそ見てくれたほうが早いかな?」

「ん?」


 私は自分の部屋にアーヤを連れ込み、座らせた。そしてファイブボールカスケードを見せる。そして天井にボールを何個かぶつけ、跳ね返ったボールが私の頭に直撃する。じんじんと痛む頭。

 

「えっと。コントでも覚えたの?」

「違う違う!」

「冗談。冗談。それで、何が聞きたいの?」

「私の右肩って、力が入ってた?」

「……。ああ。そういうこと?」


 アーヤはふむと考えたあと、ポケットからスマホを取り出した。


「えっと? 録画するの?」

「自分で確認したほうがいいでしょ?」


 少し身が引き締まる気持ちになる。

 それに……。


(なんで私がこの後言おうとしたことまでわかってるの?)


 超人アーヤと命名したい。


「わかった。じゃあ試すよ」


 先程と同じようにファイブボールカスケードをする。

 30キャッチを越えたあたりでボールが右手からすり抜けた。


「なるほど、確かにちょっとずつ右肩に力が入ってフォームが崩れているね。それでテンポも悪くなってるし、軌道がずれてる。見てみる?」


 くるっとひっくり返してくれたスマホに、ギリギリまで顔を近づけて確認する。

 徐々に右肩側に傾いている少し不格好な私が映ってた。


「自分の姿を見返すの初めてだけど、何か想像してたのと違った」

「それはどういう?」

「プロの人みたいに綺麗な格好だと思っていたけど、すごいカチカチな感じになってた」

「あるあるだよ」

「そうなの?」

「ジャグラーに限らず運動系全般にあると思う。自分ではできてるようで見返すと案外酷い」


 なるほど。ちょっとショックだったけど、それを聞いてホッとする。


「少しずつだね。とりあえず一つずつ直していくようにするといいよ」

「わかった」


 私は笑顔で答えた。

 ただ今度はアーヤの表情に陰りが訪れる。


「どうしたの?」

「今後どうしようかなと思って」

「ああ。そうだね」


 文化祭が終わった今、次に何をするか決まっていない。

 前回の発表会はまあ事実上は失敗してるし、主に私が原因で。

 だから今度こそ早く決めたい。


「冬の公演をやるべきか。それとも、知名度をあげる作戦をとるか」


 アーヤがフムと腕を組んでいる。


「前回も今回も考えると、知名度をあげる作戦が先決だね。結局お客さんが来ないことには、どうにもならないからね」


 やはりそうだよね。でもどうすればいいのかな。


「売り込みかな」

「売り込み!? お金かかるの?」

「違うよ。お金ではなくて、名を売るの!」

「名を売る……。あー。そういうこと」


 と、納得したように言ってみたが、実際何をするのかわからない。

 少し頭を捻って考えてみるが。


「SNSとか使ってみる?」

「一つの手段としてはありだね」

「となると何個か手を打つのね」

「そうなるね……」


 アーヤの眉間にシワが寄る。


「ただ、色々やりすぎると考えること多くなるから、絞ったほうがいいし、正直知識不足もあるし、運も絡まるし、あー。考えただけで頭痛くなってきた」


 げんなりしているアーヤ、部長としてもう少し案を出してあげるべきだ。ただ、何も思いついていない。いや、ここで何かきっかけになるようなことでも些細なことでも思いつかないと……。


「バルーンを覚えたから何か活用できないかな」

「んー」


 このあと、二人揃って腕を組んで考えてみたのだが、良い案は思いつかなかったのだった。

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