表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

カチン、かちぃん、コツン、こつぅん――いつも聴く音。石を叩く、単純作業。きっと俺の心も、叩けばこんな音がするんじゃないか。街は春風、華やいでるというのに 俺の心は常に冬。ずりずり、がすがす…石を氷雪の形に削る。まるで冬以外の季節を知らないよう。草木にも、人間にも天気にさえも、興味が沸かない。キルキル、スルスル。光沢が出るように、ひたすら磨く。感情なんて生きる上で必要ない。みんな要らないんだ。…ただ、きれいだ。完成したこれは、こんなに美しいものは生物には作れない。愁いを含んだ蒼い石、サファイヤ。…しかし、今日俺は何を―――俺はまたこんな雑石を作って一日を終えるのか。無色の休日。誰か、こんな俺にも春を持ってきてくれないか――あぁ、翠生。


…変な時間だった。翠生、翠生って。自分の名前をこんなに呼ばれたことは無い。暑いくらいの照明にエメラルドを煌めかせ、満員の観客に一礼し舞台裏へ下がる。鳴りやまない大喝采。

影森翠生、希代の大ピアニスト、天使の音色。今私はヨーロッパ各地でリサイタルを行っているが、今日はその初日公演だった。

宿へ戻り、ペリドットの宝石を外しながら考える――演奏中 頭の中で木霊した、青年の声。あれは何だったのか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ