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作者: 鹿沼部直作

 

 「はっ!」

 一瞬、ほんの一瞬だが意識が飛んでしまっていた。時間に表すのならば3秒! そう三秒間だ!

 なぜ意識を三秒ほど失っていたのか知りたいかい? OK、OK。わかったよ、教えるからそんなにシャツを引っ張らないでくれよ。3時間くらい放置したラーメンの麺のように伸びちゃうだろ?

 

 そうだな、あれは今は昔。あっ、昔って言っても30分くらい前の話に遡ることになるかな。

 俺はいつもの様に昼過ぎまでの睡眠と夢と妄想の真ん中で楽しんでいる時だったよ。

 ふと、けたたましくやかましく電子音が部屋中に鳴り響いたのさ。そう、つまり携帯電話の着信が来たわけだ。けたたましくやかましい電子音ってのは俺が設定している着信メロディってやつだな。

 正直、発信者が彼女ってわかるまでは、電話を取るつもりはなかったよ。だってそうだろ? こんな朝っぱらから電話を掛けて来る奴なんて、精々、役所くらいしか思い当たる節がないからさ。知ってるかい? あいつら返納の類になると愚鈍でどうしようもない位なのに、徴収に関しては一切の容赦がないからな。そんな糞野郎どもに俺の朝を邪魔する権利なんてないと思わないかい? ありがとう、同意に感謝するよ。

 ええと、どこまで話しったけな。・・・ああそうだったな、電話の主が彼女ってとこまで話したのだっけな。

 彼女、つまりは俺の元奥さんだ。懐かしいな、奥さんとはよく此処に一緒に来たよ。思い出すなぁ、二人で頼んでも食べきれなかった巨大パンケーキを。結局は知り合いに協力して何とか平らげることが出来たけど、あの時俺は一生分のパンケーキを食べたよ。でも、今になって振り返るとアレが人生で一番甘い時期だったのかもしれないな・・・・・・・。

 ・・・・・・また話が脱線してしまったね。すまないね本当に。年齢を重ねると自分の人生の限界を悟ってしまうんだよ。だから、昔の、自分が何もわからず夢と希望を抱いて生きていた青春時代の思い出にすがってしまうんだよ。

 まあとにかく、彼女からの電話だったんだ。俺は一瞬にして意識を覚醒に持って行き光の速さで電話に出たね。

 電話に出た時の彼女の「久しぶり、元気にしてた?」って言われた時は、もしかしてまだ俺に未練があるのかな? って馬鹿な勘違いをしてしまったよ。

 ――おかしいだろ? こんな道端から戦場にまで通づる会話に淡い希望を抱いてしまったなんてね。俺はまさに道化さ。哀れで間抜けなピエロさ。傍から見たら痛々しくこの上なく見ているこちらが恥ずかいい奴さ。笑っておくれよ。後ろ指を指して俺を笑っておくれよ。

 え? あんまり自分を卑下にするな? ・・・・・・それは違うんだよ。本当は自分で自分を卑下すればさ、大抵の人々は優しい言葉をかけてくれるだろ? 上記にあなたが言ってくれたセリフは勿論、あと他には「そんなことはない」と言ってくれるだろ? 僕はそれを聞かされて安心したいから自分を卑下するんだよ。

 「そんなことはない」と言われほっとしたいんだ、安心したいんだ、不安を払って熟睡に励みたいんだ。

 ・・・・・・三度の脱線に本当に申し訳ないね。こんな愚痴愚痴と自分語りしてしまってね。

 でも、あと少し。あと少しで俺の話は終わるからさ聞いておくれよ。君は最後まで聞く権利があると思うし、俺は最後まで話す権利があるんだ。

 それで元奥さんに呼びだされて、やって来ましたよここに。小洒落た格好で来ちゃいましたよ。そして久々に会いましたよ、彼女だけが時が止まっているのかと疑問を抱いてしまったほど、彼女は変わりようがない美貌だったよ。俺はね色々と興奮しちゃったよ。そう、小学生の時の修学旅行の前日の夜のワクワク以来の興奮だったかなぁ〜。

 席に座って他愛無い話をしたよ。当時の昔話に花が咲いたよ。いやー、色々と腹を割って本音で話すというのはいいもだね。おかげで長年の蟠りがすべて綺麗サッパリと流れていって心が穏やか清らか清潔になったよ。

 そして一つの案が俺に舞い降りたのさ。そして、俺はこう言おうとしたんだ。

 ――「もう一度、君とやり直したい」ってね。

 だがね、その前に彼女が言ったんだ。――「私、今度結婚するの」ってね。

 照れくさそうはにかみながら話す彼女を見てたら、そんなこと言えなくなっちゃったよ俺はさ。

 だけどね仕方ないよね。俺はいつまでもズルズルズルとバオバブの木の根っ子くらい引きずっていたみたいだけどさ、彼女は俺のことなんて忘れていたんだなー。

 その後は、ちょっと混乱と混乱と大混乱によってうまく言葉が紡げず彼女の話を一方的に聞かされ続けたよ。

 砂糖吐きそうな彼女の馴れ初めと言う名前の惚気を聞かされ続けわかったことを要約するに。彼女の再婚相手というのは、すべてが俺よりも遥かに優れていた人物だということだ。

 その後、一頻り彼との話を聞かされ続けた俺にするのは彼女からの目をそらすことだけだったな。

 そうだろう? だって彼女の目を見て話を聞いていたら俺は泣いてしまうからだ。

 

 

 

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