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本の魔術師  作者: 桐生紅牙
プロローグ
2/6

第2話

 ふと目を開けると、視界が真っ白に染まっている。

 ここは何処だろうか。

 俺は帰り道で事故に遭ったはずだが。

 トラックの大きさや速度から考えても、即死だと思われるし。


「ここは生と死の狭間、普通であれば留まる事の出来ない場所さ」


 急に、聞いたことのない声が、俺の疑問の答えを教えてくれた。

 俺は咄嗟に、声の聞こえてきた方を向こうとしたが、あることに気づいた。


 体がないのだ。


 これはどういう事だ?

 いや、俺は死んでいるのなら、体がないのは当たり前ではないか。

 さっきの声も、生と死の狭間と言っていたし。


「その通り。君は死んで、今は魂だけの存在になっている」


 またさっきと同じ声が答えた。

 俺は再度、声が聞こえてきた方を見れば、人形ひとがたの何かが立っていた。

 何故、人形の何かと言うかと言えば、かろうじて人の形をしている事は分かるのだか、それ以外がよく分からないのだ。

 それにしても、この状況は何だ?

 死んだことなど、もちろん無いので分からないが、普通でないことは明らかだろう。

 人形も、普通では無いと言っていたし。


「理解力や分析力が高いのは良いことだけれど、それにしても君は落ち着いているね。普通なら、慌てふためいてもおかしくないのに」


 そうだ、何故俺は死んだり、こんな状況になっているのに落ち着いているんだろうか。


「まぁ、僕から聞いておいてなんだけど、僕が話をしやすいように、落ち着かせているだけだけどね」


 それなら聞くなと言おうとしたが、またひとつある事に気付いた。

 俺はさっきから声を出していない。

 というよりも、声を出すことが出来ない。


「当たり前じゃないか、君には口が無いんだから」


 クスクスと笑う声が聞こえてくる。

 確かに体が無いと言うことは、口も無いということだ。

 しかし、それなら何故さっきから、会話が成立しているのだろうか。

 考えていることでも読んでいるのか?


「大成功。僕は君の考えを読んでいる。それより、そろそろ本題に入ろうか天城空君」


 どうやら、俺は大変な事になるようだ。







「まずは僕の自己紹介をしておこうか。僕は※※※※※。君のいた世界も合わせて、幾つかの世界の神を束ねる者だ」


 名前の部分が何と言っているか分からないが、神を束ねる者というのは、どういう意味だ?


「いい着眼点だ。簡単に説明すると、まず、それぞれの世界を管理している神が複数いて、次に、その内の幾つかの世界の神達を僕が管理する。そして僕より上位の神が、僕や僕と同じ神達を管理する。まぁ、会社みたいな物と思ってくれればいい。それと、僕の名前が分からないのは、君と僕とでは存在としての差がありすぎるからだね」


 確かに会社のようだ。

 それにしても、どうしてそんな存在が俺と話しているのか。

 何かあったとしても、俺の居た世界の神が出てくる位のものではないのか?


「まず、何故君がここで話しているかと言うと、君が普通の魂ではなくなり、元の世界に転生すると不都合が生じるからだ」


 俺の魂が普通ではない?

 それに不都合がある?


「そうなんだ。まず、君が普通の魂ではなくなった理由だが、君の世界の神の一人が君の魂を弄って遊んでいたからだ」


 弄って遊んでいた?


「そう、違う言い方をすれば、運命の改変だね。君が事故で死んだ事も、その影響だ」


 そんなことが許されるのか?


「許されないよ。だから、その神は僕が既に消滅させた」


 そうなのか……それじゃあ、続きを頼む。


「うん、そして君の魂なんだけど、弄られた結果、元の世界には異質で大きすぎる魂になってしまったんだ」


 それが、転生するのに不都合な事か。


「そう言う事。元の世界に転生すると、最悪の場合は世界中で天変地異が起こる。だから君には、元の世界とは別の世界に転生して貰うことになる」


 俺の魂に合った世界ということか。


「やっぱり理解力が高いね。そして、そこで僕が君と話している理由になるんだけど、一つ目は、上位の神として下位の神が起こした事の説明。二つ目は、君が転生する世界が僕の管理する神の世界だから。三つ目は君への補填をする為だ」


 一つ目と二つ目は分かったが、俺への補填?


「君がこれから転生する世界は、君が本で読んだ事のあるような剣と魔法の世界だ。今までとは、全く違う世界と言ってもいい。だから、君には何かしらの補填をする事になっている」


 どんな補填何だ?


「それは、今から決めていくんだ。君の希望を含めてね」








「まずは君の希望を聞こうか」


 俺の希望か…………これから行く世界には本が有るか?


「本は有るけれど、元の世界ほどは無いよ。本は貴重品で、買うにはそれなりのお金が必要かな」


 そうか、なら元の世界の本を持って行ける様にしてくれないか。


「いいよ。君は本が好きな様だから、本を入れる書架に、君の世界の全ての本を入れて贈ろう」


 人形から俺に向かって、光が飛んでくる。

 光は俺に当たると吸収された。


「本が読めないと困るだろうから、どんな言語も読める様にしておいたから」


 それはありがたいな。

 本があっても、読めなければ意味が無いからな。


「他に何か希望が有るかい?」


 これと言って思い浮かばないが…………。

 そういえば、転生すると俺の記憶はどうなる?

 それと、性別などは?


「記憶は、弄られた影響で消すことが出来ないから残る。性別については希望がなければそのままだよ」


 そうか。

 性別はそのままで頼む。

 後は健康な体が貰えれば、俺としては十分だ。


「そうかい?君は余り欲が無いね。それだけだと足りないから、残りは僕が決めるけどいいかい?」


 ああ、頼んだ。







「これで、準備は出来た。最後に天城空君、君には申し訳ない事をしたね。次の世界で君が幸せになることを祈っているよ」


 これで終わりか。

 そういえば、神を相手に随分と失礼な話し方をしていたな。

 最後くらい、敬語を使っておこう。

 ありがとうございます。


「そんなこと気にしなくても良いのに。それじゃあ、お別れだ天城空君」


 次の瞬間、俺は光に包まれて、再び意識を失った。


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