5.脳波計から得られるデータは不安定
脳波の測定には、多くの場合「脳波計」と呼ばれる機器を使用します。近年はだいぶ値段が下がってきてますが、研究に用いられるレベルのものとなると、最低でも10万円ほどするでしょうか。
脳波計の担う役割はというと、電圧値の測定、増幅、A/D変換、フィルタ処理――とまぁ、ようするにほとんどやってくれちゃいます。私が普段使用しているタイプのものだと、一定間隔で取得された電極ごとの電圧値を出力データとして受け取れるので、その先の解析はまた別のツールの出番です。Excelなどの表計算ソフトでもできますが、一般的にはMAT-LAB simlink&EEGLABあたりがよく使われてそうですね。解析手法を考え、結果から考察するのは人の役目です。
で、脳波解析のなにが大変かというと、同一条件のデータを揃えることが非常に難しいんですね。男女差・個人差があることは容易に想像がつくと思うのですが、同じ人に対して同じ環境で同じ課題を提示しても、まるで異なる結果が出たりします。実験者による教示の仕方にも左右されますし、被験者の精神状態や集中度だって反映されます。そうやって得られたバラバラの――そして膨大な――データから一貫した傾向を見出し、その要因を特定するために、ありとあらゆる手段を用いるわけです。また、脳波というものがあまりにも小さく不安定なために、いろいろな「雑音」に悩まされたりもするわけですが……それはまた、後々。
とりあえず、脳波計をつかって「脳波」を測定したところで、そこから「思考を読み取る」なんていうのはとんでもなく難しいということだけご理解いただければ十分です。