2.脳波は音じゃない
「波」といえば「振動」「振動」といえば「音」――というように、「脳波」という名称から、脳から発せられる微小な音や超音波、果ては衝撃波のようなものを連想する方もいるかもしれません。
ところが「脳波」は、一般に想像される「音」とは似ても似つかないまったく別のものです。なんだか字面が似てるだけ。他人の空似というやつです。
じゃあ本当の親戚はなにかと言うと、「心電図」とか「筋電図」がそれにあたるんですよ。ええっ波なのに図!? と思われるかもしれませんが、病院等にある心電図のモニターを想像してみてください。実機を見たことがなければアニメや映画のワンシーンを思い浮かべていただいても大丈夫です。――そこには、電位変化を表す「波形」が表示されていますよね? 「脳波」における「波」の正体もこれと一緒。波動は波動なのですが、空気を揺らす振動ではなく、電気的な揺れなんです。
つまり脳波とは、脳で観測された電位変化のこと。「脳電図」と言った方がおさまりが良いのかもしれません。電位がなにかピンとこない方は、そのまま電圧に置き換えて認識してもらってかまいません。頭皮上に配置した電極から電圧値を計測し、別の比較的安定していると思われる部位――耳朶などがよく利用されます――の計測値を基準電位として引くことで、ある特定部位の電位が得られます。継続的に測定を行うことで、電位の時間変化は波として観察できます。これが脳波。
ひとつ忘れられがちなポイントは、あくまでも「脳波=電位の時間変化」ですから、瞬間的に取得できるものではないということ。
とりあえず、時間を横軸に、電圧を縦軸にもつ、うねうねっとした曲線のグラフを想像していただければまちがいないかと思います。