星の月の最初の星の日
星の月の最初の星の日
黒猫が目の前を横切ると悪いことがあるって、どこの国の話だっけ……。
と、今日は何度思ったか。
と言っても、この星には黒猫しかいないのだけど。
すごく不思議なことに、この星には黒猫しかいない。一説では、だから「黒猫の星」と名前がついたとか。
不思議に思った再度この星が発見された当初の調査員が、三毛、白、トラなどの別の毛色の猫を連れて入り、放したらしい。今考えると、すごい暴挙だ。この後、この星の環境を壊さないような規則ができたらしいけど、おそらく猫問題が発端だったんだろうと思う。
で、その猫たちはこの星の黒猫たちと交配し、当然子猫が産まれたけれど、全部が黒猫だったとのこと。
このあたりのことは詳しくはないのだけど、当時の資料を読む限り、黒猫と他の毛色を交配しても、真っ黒にはならないのだそう。特に、三毛、白など、白い色が入っている場合、口回りや、足先に白い色が出たりする。もちろん、それが小さすぎて判りにくいこともあるらしいけれど、生まれた子猫すべてが真っ黒というのはほとんどないらしい。
なによりも不思議なのは(と、資料に書いてあった)、二代目以降に黒以外の色が出ないことなのだそう。猫を持ち込んだ調査員は、五代目くらいまで、生まれた猫の子を追いかけて調査していたそうだ。そのうち、黒と別色の子猫同士で交配した猫もいて、その猫たちの間の子猫たちも、黒以外はいなかったということだ。資料の著者によれば、黒と別色の間の子同士の交配の場合、二五パーセントくらいの割合で黒以外の色が出るらしい。四頭生まれたらうち一頭が黒以外といったところだ。確実、というわけではないらしいけど。
でもって、もう一つ。この黒猫の星の猫たちは、すべて毛が短く、少し小型になる。猫を持ち込んだ調査員は、長毛種をとたくらんだらしいのだけど、それは阻止されたとのこと。資料に少し触れてあったのは、過去の入植時にも猫が数種持ち込まれていたらしい。その際には長毛種もいたという記述があったらしい。というか、私も見た。
そんなわけで(どんなワケだよ)、この星には黒猫しかいない。
だから、黒猫を不吉だなんて言っていたら、猫を可愛がることなんてできやしない。
とはいえ、目の前を十数匹の黒猫が横切っていったら、何かあるんじゃないかとか、思ってしまう。
昼休憩にちょっと散歩に出かけた帰りに出会ったから、事務所に戻ってから、ハヌー・デアに言ってみたら、猫集会に行ったんでしょう、と軽く言われてしまった。冗談を言われたのかと、驚いて見つめていたら、よくあることだ、と。気になるなら今度はついて行ったらどうですか、面白いですよ、とにっこり微笑まれた。どうやら本気らしい。
確かに、猫は集会するものらしいけれど、あんなふうに列をなして移動するもんなんだろうか…。
でも、ここは黒猫の星。そういうことがあっても不思議ではない。