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ドライバー・オブ・アンリミテッド  作者: 桜崎あかり


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3/8

衝撃のファーストプレイ―The first play of a shock―

初稿ではピクシブ版とは別物をアップしていたので、従来のバージョンに変更しました。現在は第2稿となります。

(午前10時1分付)

 午後2時30分を過ぎた辺り、マッチング待ちのプレイヤー等が練習コースに何人か集まって来た。先程のグリズリーとペンギンの件もあるのだろうか?


「普通に走るのはこの位にして、本格的にサウンドドライバーの機能テストを行う。まずは、プラクティスモードを選択するんだ」


 作業服に右目は眼帯、バンダナと言う人物がアオイに指示を出す。


「そう言えば、あなたの名前を聞いていませんでしたが、何と呼べばいいんですか?」


 アオイの言う事にも一理ある。店員も彼の名前は知らないようで、作業着にも名前が刺しゅうされていたり名札が付いていたりと言う事はなかった。


「俺に名前などない。あえて呼びたければ少佐とでも呼べばいい。他のスタッフからは、そう呼ばれている」


 少佐の指示でアオイは腕のアーマーと一体化したモバイルツールの画面に触り、正面に大型ARモニターを表示させた。


《ノーマルモード、マッチングモード、プラクティスモード、オプション》


 サウンドドライバーの世界観を示すようなデモムービーが流れた後にタイトルが表示され、その後にツールの画面に触れると4つのモード選択画面に移行した。


「ノーマルは1人でもプレイ出来ますが、マッチングは選択出来ません。少佐の指示通りにプラクティスを選択してください」


 店員も現状ではプラクティスを選択した方が良いと言う事で、アオイはプラクティスモードのボタンを押した。


《プラクティスモードへ移行します。モード移行までしばらくお待ちください―》


「ARの方で下にゲージのような物が出てきましたが、これは?」


「それはBEATPOINTというゲージだ。このゲージは、パワードスーツの耐久力としても機能しているが、音楽ゲームにおけるノルマゲージのような物と思えば分かるだろう」


 アオイが最初に目が行ったのはBEATPOINTというエネルギーゲージのようにも見える物だった。その他にも、スピードメーターやTECHPOINT、ランク表記などもあったが…。


「つまり、このゲージが0になったら終わり?」


「そう言う事になる。100%でスタートし、コースを進んで行く内にゲージは減少していく。ガソリン兼耐久値と思えば分かりやすいか――」


「ゲージを回復する方法はないんですか?」


「回復させる為には、回復マーカーに接触する事や上手く演奏する事が一番分かりやすい回復方法だ。高度なパフォーマンスを決めれば大幅回復も見込めるが、リスクも大きい」


「つまり、回復マーカー等の配置も予測し、上手く曲を演奏する事が上達の近道ですか?」


「中には高度なパフォーマンスで博打を仕掛けるプレイヤーも多い。下手をすれば大事故につながるが、ミスリル繊維や安全装置のおかげで軽傷で済んでいる。無茶ぶりをするようなバラエティー番組とは違って、万が一の事態も考えている証拠だろう」


 アオイは少佐とお互いにやり取りをして操作や画面の見方、その他のルールを覚えていく。店員が途中で割り込めるような余裕は全くなかった。


「ゲージの下に表示されているスコアは、一体?」


「それがTECHPOINT、高度なパフォーマンスを行う事で得られるスコアだ。これが多いとゴールした際にランクが表示される。それによってボーナススコアも得られるが、今は特に気にする必要はない」


 少佐はTECHPOINTに関しては言葉が少ないように見える。そんな事をアオイは思っていた。


 プラクティスモードに移行しているのだが、アオイは一歩も動いていない。それは何故かと言うと、プラクティスモードが正常に動作していないと言う事があった。


「データの読み込みが遅いのか? サーバーの過負荷か?」


 少佐がスタッフに尋ねる。すると、予想外の回答が帰って来た。何と、プレイヤーの乱入である。


「サウンドドライバーは、対戦格闘ゲームとは違う。演奏中の乱入は出来ないはず…」


 店員も若干慌てているような気配である。乱入が可能なゲームは対戦格闘等に代表される1対1系統の作品や複数人対戦型の一部ジャンルに限定され、サウンドドライバーはどれにも該当しないはず…と。


「仕方がない。実戦でサウンドドライバーを覚えるしかないようだ」


 少佐も全て把握した訳ではないが、他のスタッフに関しては想定外の乱入者という反応ではなかった事に違和感を覚えた。


《プラクティスモードへ移行がリセットされました。マッチングモードに移行―》


 ARの画面表示でも、プラクティスモードがリセットされた事を知らせている。どうやら、対戦者が現れたらしい。


「あのタイプは…全てバランスタイプか?」


 店員が突然現れた3体のユニットを見て、全てがバランスタイプと即座に判断する。これならば…と思う箇所もあるようだ。


「まさか、これが――」


 アオイは突然現れた謎の刺客に驚く。その一方で、今からサウンドドライバーが始まるのかと言う事で期待もしていた。


###


 午後2時40分、自分の出番も終わって帰宅しようとしていたエイジは、練習コースの周辺が騒がしくなっている事に気付いた。


「練習コースでイベントもやっているのか? 練習コースは基本的に初心者プレイヤーの練習用で観客が見に来るような所ではないが」


 少し気になる所があったので、エイジも練習コースへ向かうと、そこには黄色、赤、青のカラーリングをした同じデザインのロボット3体の姿が確認出来た。それ以外にも1体いるようにも見える。


「あのバランスタイプ3体はヘッドだけ微妙に違うが、同じ機体で間違いないだろう。問題は向こうの機体だ。データベースにも該当機種が見当たらないとなると、何処かのメーカーの新型か、それとも…?」


 スマホでデータベースにアクセスしてデータ照合をしても、あの1体だけが不明のままで該当データを見つけられなかった。結局、エイジは様子を見るのと同時に新型のデータを確かめようと考えた。


「あのユニットは何だ? データベースを調べてみよう」


 先程は遅い昼食を食べる為に離脱したグリズリーの着ぐるみが、再び練習コースの観戦席に現れた。


「あのスーツは、もしかすると別の中堅どころのアイドルグループかもしれない。確か、芸能事務所に所属しているアイドルがサウンドドライバーに参戦するのは―」


 グリズリーと一緒にいたのは先程のコウテイペンギンではなく、しろくまの着ぐるみだった。しろくまの方はプロ野球のユニフォームを着ているので、何処かの球団のマスコットキャラクターと言う可能性もある。


「サウンドドライバーは、ご丁寧に政治家及び芸能事務所関係の人物が参加するのを禁止している。反超有名アイドルを支持している人物が集まっているのではないか、と言われるのも納得できるが」


 グリズリーのデータ検索が終わり、検索結果を見て見ると…ビンゴだった。


「すぐに委員会へ通報するか?」


 しろくまはグリズリーに尋ねる。しかし、彼の表情は若干曇っているようにも見えた。着ぐるみの為、詳しい表情は分からないが。


「この結果を確かめてからにしよう」


 グリズリーは様子を見るようだ。しろくまも、その指示に従う事にした。


「新型とはいえ、プレイヤーが素人では我々には勝てない!」


 そう切り出したのは、赤いカラーリングをしたロボットだった。外部スピーカーから声が出ているので、搭乗型ユニットを使っているのかもしれない。声を聞く限りでは、3人とも女性だと思われる。


「素人と見て足をすくわれない事を祈りたいものだな」


 少佐が3人のプレイヤーに対して挑発とも言えるような発言をする。そんな中で、店員は3人のデータを調べていた。


(そう言う事か。あの3人は、既に委員会のマークを受けていた人物…。それを利用すると言うのか、キサラギは?)


 店員はアオイや少佐には、この事を後で話す事にした。今話すと、情報収集しているスタッフの意図がばれてしまうからだ。


「あの機体に乗っているのは女性だ。機体の重量はバランスタイプでも男性用と女性用では若干の誤差がある。男性用を扱える女性プレイヤーもいるかもしれないが、それは上級者の話だ」


「それ以外で注意する事は?」


 ユニットに乗っているのが女性と聞き、アオイは若干だが安堵していた。男性だったら、何をされるか…という部分とは別の話になるが。


「クラスの方は3人ともサイクロンプレイヤーで、下位クラスに該当する。アオイのクラスは未プレイと言う事もあってクローバーからのスタート…」


「えっ? あの3人は自分よりも上のプレイヤーって事ですか?」


「事実上は、そう言う事になる。もしかすると、下位クラスと言う事もあって今回のマッチングが成立したのかもしれない」


「自分は初プレイだって言うのに、相手は既に何回もプレイしているとか…かなりのハンデですよね?」


 下位クラスのマッチングだが、アオイは完全に未プレイの初心者と言う事もあって少しの不満があった。


「安心しろ。マッチングに関してはクラス以外にも曲の完走率や対戦結果も考慮されている。対戦ゲームで良くあるような初心者狩りは成立しない」


「少佐の言う通りだ。補足をすれば、俗に言うサブカの所持も禁止されている。もっとも、その成績が談合等で仕組まれた物だったら…問題があるかもしれないが」


 少佐と店員が若干不安になっているアオイに対してアドバイスをする。


【何だか特別なマッチングだな】


【100回以上のプレイ経験を持つプレイヤー3人に対して、初プレイのプレイヤー1名か】


【CPU戦では掴めない感覚を掴むためには、こういった試練も必要なのかもしれないが…】


【初心者狩り対策はサウンドドライバーではかなりの物だからな。試合が面白くなくなる的な部分も考えて、あのルールにしたのだと思う】


【試合によってはネットだけではなくテレビでも放送される。それを考えれば、向こうも対策をするのは当然だろう】


【あの3人の試合履歴は本物のようだ。偽造されているような形跡はない。しかし、プロフィールは偽造の可能性がありそうだ】


【プロフィールが偽造? どういう事だ?】


【既に、この3人が試合を始める前にもアクセスが殺到している。怪しいと感じている人間は、我々だけではないと言う事らしい】


 ネット上でも、特殊なマッチングや3人が実は中級者プレイヤーなのでは…という議論が展開されていた。


 5分後、アオイのいたフィールドが若干変形し、幅4メートルのコースが2つ、1メートルのバリアを間に配置して同じようなコースが2つの合計4つに変わっていた。


「ルールは難易度RAILBASIC固定、選曲権はこちらが指定、パフォーマンスの制限なしで行います」


 キサラギのスタッフが4人にルール説明を行う。スタッフの声は、外部の設置スピーカーからも聞こえているが、4人には直接インカムで通信をしている。


「選曲権位はゆずっても構わない」


 青いカラーリングをしたロボットの方は、異議はないようだ。赤も異議なしだったが―。


「選曲は、あの曲じゃないと意味ないんじゃないの?」


 黄色のカラーリングをしたロボットは異議ありのようだ。しかし、それでは正体がばれると判断した赤が説得し、3人とも異議なしとなった。


「選曲って、本来はプレイヤーがする物じゃないんですか?」


 アオイに関しては、異議があるような感じだった。ルールブックを読んだ所、選曲はプレイヤーが出来るという記述があった為である。


「通常マッチングでは、選曲権利はプレイヤーにある。しかし、大会等の特殊ルールでは選曲を第3者が行う事も可能である、と書いてあったはずだ」


 店員の言う事も一理ある。公式大会等で選曲フリーにした場合の事を考えると…一歩間違えれば、高難易度大会になる事もアーティスト縛り大会になる事も有り得る。


###


 午後3時10分、全ての準備が整ってマッチングバトルが始まろうとしていた。その時には、観客席にはたくさんの客がいたというキサラギ側の想定とは違う展開になっていた。


「これは予想とは大幅に違う展開になったな」


「しかし、アークエンジェルの性能をアピールする為には、逆に好都合と考えよう」


 キサラギのスタッフも、若干開き直っているようにも見える。


【予想外の展開になった】


【これは、ある種の引導を渡すような展開になるのか?】


【他の世界線では超有名アイドルが地球を掌握したり、全銀河を征服しようとしている世界もあるらしい。信じられないような話だが】


【現実でも超有名アイドルに対して疑問を抱けば、その地点で逮捕されるという世界もその内出てくるかもしれない】


【このバトルが、超有名アイドルとの戦いの幕開け…と言う流れになる?】


【しかし、アイドルダイバー事件で超有名アイドルの支持率が大幅低下した件もある。どうなるかは、未知数だな】


【そう言えば、名前を見て疑問にもったが、3人の相手になる1人って…あいつじゃないのか?】


【あいつって?】


【アイドルデレの…】


【どういう事だ?】


【なん…だと!?】


 ネット上では超有名アイドルが全てを制圧してしまう未来を危惧するような発言も相次いだが、それ以上にアオイの存在について驚く声も同じ位にあった。


「細かい表示等に関しては説明したとおりだが、最後に一番重要な事を説明する」


 少佐がアオイのインカムを通して話をする。他の3人には聞こえていないようだが…?


「マーカーに接触するタイミングを間違えるな。間違えれば、タイミングミスと扱われてゲージが減る事になる。AR表示でも確認は可能だ」


 そして、少佐はある動作をアオイに教えた。アオイが指示された通りに動作を行うと、一番外側にある左右の翼が1枚分離、その後に棒状のような物を3つ展開し始めた。


「ARに頼らない方法として、こういう方法もある。これならば、他の音楽ゲームと同じプレイスタイルを行う事も可能だろう」


 棒状のような物が展開された後、それらが合体して完成したのは踏切の遮断機を思わせるような物だった。それがアオイの前に現れる。どうやら、これがタイミング判定を可視化するシステムらしい。


「棒がサイリウムみたいに光っているのは…?」


「サイリウムではない。ビームサーベル――じゃなかった、それはLEDの演出だ。そのラインに合わさるようにしてマーカーを通過していけば、ジャストタイミングになる。それ以上は、自分の勘でタイミングを掴むのが早いだろう」


 アオイがサイリウムと聞くので、違うと答えようとしたが若干口が滑ってしまい、その発言を即座に修正する。


(ビームサーベル? まさか、キサラギの作りだしたユニットの使用目的は――?)


 店員は少佐が口を滑らせた発言を聞いて、実際の使用目的はサウンドドライバーではなく別のゲームで使用する物を流用したのでは…と考えていた。


「曲に関しては、この曲にします」


 表示された曲名を見て、練習場にいた観客のボルテージが急上昇する。


《虹のスタンダード・ソング アスナ RAILBASIC☆☆☆☆☆》


 ARモニター、練習コースに設置された大型モニターに曲名、アーティスト、難易度が表示されていた。観客のボルテージが上がった理由、それは動画サイトでも人気を誇る歌手であるアスナの書き下ろし楽曲と言う理由があった。


「いきなりこの曲か」


「まさかの神曲が来た!」


「しかし、クローバーのプレイヤーは大丈夫なのか? この曲の難易度は簡単な譜面でも一番難しいはず」


 相手の3人がプレイしていた曲経歴から楽曲が選ばれるのでは―と思っていただけに、今回のサプライズは観客にとっては衝撃的だったらしい。ネット上でも反応は同じであり…。


【確か、譜面の難易度にも星の数で難しさが設定されていたな】


【いちばん簡単なのはBASICの星1つ、BASICで星5つはRAILWINDの星2つ辺りに相当する】


【それでも、この曲を選ぶ理由は何だろう。動画サイトでの人気もあるだろうが…!?】


【この譜面は特殊な構成になっている。サウンドドライバー初心者はRAILBASIC☆を選ぶのが妥当だが、西雲零人の動画を見た人間が選ぶのは揃いも揃って、この曲だ】


「向こうが絡んでいるのであれば、こうなりますか。超有名アイドルの曲自体がサウンドドライバーでは未収録、それを下手に流そうと考えれば…」


 しろくまは、裏にキサラギが絡んでいる事を踏まえて、こう発言した。グリズリーの方は、そんな話は全く聞く耳を持たないようだが…。


「この曲は、西雲が最初にプレイした楽曲だったな。確か、あの時は演奏失敗だったか」


しろくまの着ぐるみと数席ほど離れた位置には、エイジの姿があった。エイジは、この選曲を見て西雲零人の初プレイ当時の動画を思い出していた。


「まさか、キサラギに西雲絡みの人物がいる…と言うのは考え過ぎか」


 エイジもしろくまの着ぐるみと同じく、キサラギ絡みを考えていた。しかし、サウンドドライバーにまで勢力を広めようとするのは…。


「しまった! 出遅れた」


 今回の曲は全員が固定の為、曲の長さが短い順からスタートすると覚えていたアオイは、他の3人と若干出遅れるスタートとなってしまった。


「出遅れがスコアに反映されるルールだったら、それこそ危なかった…」


 アオイが出遅れた事に関して、グリズリーが冷静に分析をする。


「サウンドドライバーは焦った方が負ける」


 店員は祈るような表情でアオイのプレイを見守っていた。一方の少佐は、何か余裕の表情を浮かべているようだった。


「確か、ARに表示されたマーカーをタイミング良く通過していく…だったわね」


 曲の方は共通の為に練習場のスピーカー及び音響施設から出ている形だが、本来は自分が装着しているインカムから楽曲が流れる仕組みである。


「少しずれた?」


 アオイの目の前にあるラインとマーカーが合わさるタイミングで通過したのだが、若干ずれていたらしくGOODの判定だった。



 ネットの方ではユーザー生放送で実況する者、掲示板で用語等を説明する者、更にはお絵かきチャットを始める者、色々な人物がさまざまな視点でレースを楽しんでいた。


【判定はスコアが高い順番に、クリティカル→グッド→ノットになっている。ノットはマーカーに接触していない状態や大幅に判定がずれている物―】


【そう言えば、この譜面ではレールマーカーも途中で存在するみたいだが?】


【レールの場合は、マーカーのスタート地点でタイミングがずれるとグッドになるが、最終的にマーカーのゴール地点まで完走すれば途中の判定は全てクリティカルだ】


【ただし、レールの途中でコースにはみ出したり相手と意図的な接触妨害をすると、コンボが途切れてしまう。すぐに復帰すれば復帰した地点からカウントされるが、復帰できなければノット扱いになる】


「ゲージに関してはアオイの方がイエローになっているが、大丈夫か?」


 しろくまがグリズリーに尋ねる。グリズリーが放った一言は…。


「大丈夫だ、問題ない」


 それから少し経過した頃、エイジがトイレへ行く為に練習場を一時離脱した。


「コンボ数ではアオイが大幅にリードされているが、スコア的には逆転のチャンスもある。どうなるかは最後まで分からない」


 少佐がアオイを信じているのには、スコアに限って言えばアオイが若干リードしている個所があったからだ。例の3人はコンボを重視し、判定は2の次と考えていたようだが、アオイは判定を優先した結果…と言えるかもしれない。


 この曲の世界観としてはJ-POPと言うよりは、若干だがトランスに近い。タイトルにソングと入っているのだが、歌は収録されていないと言う異色曲でもある。


【所々で歌が入っているように見えるのだが…】


【あれはサンプリングボイスだな。音楽ゲームでもよくある声ネタである『3倍アイスクリーム』とか、その辺りを使用しているようだ】


【ジャンル名がジャパニーズトランスだけに、音も和風チックな物を使っている印象がある。こういったトランスもあるのか】


【他の音楽ゲームに入っていそうな雰囲気もありそうだが、サウンドドライバー専用曲と言う印象は大きい】


【サウンドドライバーは音楽ゲームという部分だけではなく、パフォーマンスやレースも重点に置いているからな】


【普通に曲を聴くだけならばサントラを買えば―と言いたい所だが、サウンドドライバーにはサントラがないのが痛い所か】


【現状では、サントラを出せる程の曲数はあるが動画サイトで普通に公開しているのが半数以上という状況では難しいだろう】


【それが、サウンドドライバーの長所と言える所かもしれない】


 ライセンス曲に依存せずCDチャートにも流されない選曲、それがサウンドドライバーの長所でもある。


【この曲は動画サイトでも100万再生を突破している曲だ。しかし、その一方でCDチャートに入る位の実力があるのか…と言うとそうではない】


【CDチャートは超有名アイドルが未だに独占市場と言わんばかりの存在感を示している。しかも、超有名アイドルが邪魔物と判断した物は、ありとあらゆる手段を使って黒歴史にしようとしている噂もある】


【マスコミ等を買収し、超有名アイドルファンは絶対正義のような報道を連日続け、日本全人口が超有名アイドルファンにするように仕向けているとしか思えない。そして、他の世界線では逆に超有名アイドルが黒歴史になったらしい――】


 一方で、CDチャートは超有名アイドルが100%を占める独裁に近い市場となっており、更には超有名アイドルにとって邪魔な存在を黒歴史にしようとする動向もある事が噂されている。


【やはり、別のサイトで言われていた『超有名アイドルによる無限錬金術』が展開されようとしている噂は本当らしいな】


【そんな事をして有名になったとしても、待っているのは間違いなく破滅だろう―】


【噂では、日本政府が超有名アイドルに対して税制優遇等を行い、最終的には超有名アイドルファン以外には増税という話も浮上しているが?】


【流石に、そこまではないだろう。ブログの炎上等を狙った偽装情報と言う可能性もある】


【ただ、超有名アイドル以外が全て黒歴史にされるというのは、別の世界線で実際に起こっている。今は嘘の情報として笑っていられても、いつかは…】


 そんな話の流れを見て、穏やかでいられなかったのはトイレから練習コースへ向かう途中のエイジだった。


「これが、現実なのかよ。インチキアイドルもいい加減にしろ!」


 この声が誰に届いていたのかは不明だが、思わぬ人物に聞かれた事で予想外の展開を生む事になる。

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