始まりの日-The day of beginning-
※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、この作品におけるフィクション扱いでお願いします。
※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。
※小説家になろうへはファーストプレイ(第1話)からの収録になります。
※コスチューム的な描写等の関係で、小説家になろうバージョンではR12指定にしております。
4月15日、その日、運命の歯車が動き出した日でもあった。
【やっぱり、彼が最強ランカーか?】
【彼が最強とは限らないだろう。他にも最強候補は多数いる】
【しかし、西雲以外にトップランカーの称号を手に入れた人物は存在しない。現状で最強を語る事が可能なのは、彼だろう―】
西雲零人という人物のプレイ動画を見ていたユーザーの書き込みが動画と一緒に流れる。この動画がアップされたのは4月8日で大体1週間前に当たる。
【それにしても、零人のスーツはメットなしか。安全性は大丈夫なのか?】
【アーマー部分は腕と足、ボディの一部分のみ…。しかし、それでも安全性が保証されるのがミスリル繊維のおかげだろう】
【メットありは推奨であって必須と言う訳ではないが、やはりメットがあった方は安全だろう】
【彼の場合は、特殊な安全装置があるからメットなしでも大丈夫のようだな―】
流れてくるコメントの中には、彼の装着しているスーツやミスリル繊維という素材に関しての言及もあった。
【それにしても、あれだけの素材を使っているのにスーツの値段が安くなっているのは喜ぶべきなのか…】
【先行投資的な意味合いもあるのかもしれない】
スーツに関してはレンタルで500円、セットで揃えても5000円台となっている。もっとも、西雲のようなワンオフ系は1万円を超えるらしいが…。
【1プレイ300円で2曲設定…。これを高いと見るか安いと見るか…】
【実際の道路でプレイする等の部分もあるから、一般的な音楽ゲームと簡単に比べる事は出来ないだろう】
この動画だけでも、コメントが1000を超えており、物によっては10万再生を突破している物も多い。それだけ、サウンドドライバーは一般市民にも浸透しているのかもしれない。
昼12時頃……。
「孤独なトップランカーか……」
足立区内のゲーセンで西雲のプレイ動画をモニターで見ていた人物がいた。髪型はショートヘアに外ハネ、服装はジージャンにジーパンとスニーカー……。
「サウンドドライバーの超人プレイヤー、西雲零人―その強さゆえに天涯孤独…と言った所なの」
彼とは別の人物が、隣から通りかかって来た。この人物は、別のゲームで順番待ちをしているのだが、サウンドドライバーの画面が気になったので見に来たらしい。
「あれって、ひょっとしてヴォルテックスじゃないのか?」
「色々な音楽ゲームでも名前だけは聞いた事がある――」
「こんな音楽ゲームもないゲーセンに彼女が現れるなんて……」
周囲のギャラリーが若干反応を示したようだ。彼の隣に現れたのは、ヴォルテックス。身長190センチの長身に、メガネとツインテールが特徴の女性プレイヤーである。
「あなたは確か……」
「黒翼エイジだ」
彼の名は黒翼エイジ、彼も西雲零人のプレイを見てサウンドドライバーを始めた人物の一人である。
彼がサウンドドライバーをプレイするきっかけ、それは4月3日までさかのぼる。丁度、ヴォルテックスと西雲が会話をしていて、それから西雲が帰った辺りの時間である。その頃には、ヴォルテックスも別のゲームをプレイする為に移動していた。
「あんたが西雲零人か―」
エイジは探していた人物を見つけたような…そんな表情を見せていた。西雲の方は、招かれざる客が来たようなリアクションをしている。
「黒翼エイジだったか、別のゲームでは稀に遭遇するようだが」
西雲もエイジは知っていた。音楽ゲームではなく、別ジャンルのゲームでマッチングをする事は稀にある。
「頼みがある」
エイジが頼みと切り出し、もしかして…とは思っていた。その予想は見事的中し、サウンドドライバーの事を聞きたいと言う事だった。
「これが、あのレイヴンか…」
ヴォルテックスに見せた物と同じ動画を西雲から見せられ、そこに映っている光景をみてエイジは驚いていた。しかし、ヴォルテックスと比べるとリアクション的な部分では薄い印象がある。レイヴンに興味がない訳ではなく、単純に音楽ゲームをプレイしていないだけなのかもしれない。
「あいにくだが、俺は音楽ゲーム自体には興味がない。お前と戦う機会が増えれば、それで充分だと思っている」
「同じフィールドに立ちたいと言う事か。ならば、あえて止めるのは逆効果か…」
最終的に西雲はエイジを止める事はなく、彼にエントリー方法を教える事にした。
4月5日頃『サウンドドライバーってどんなゲーム?』というつぶやきに答えたユーザーのまとめ記事がアップされた事で、知名度的な部分は上昇しているようだ。そのやりとりの一部は、以下の通りらしい。
【サウンドドライバーとは…直線道路を音楽ゲームに見立てて疾走するという構想を考えていた人物が、イベント会社の人物にアイディアを持っていたのが始まり】
【基本ルールは、上から下へパネル等が降ってくるタイプの音楽ゲームを実際の道路でやってみた…と言った方が話の通じる人がいるのかもしれない】
【コースに関しては、直線オンリーの道路を閉鎖し続けて展開する訳にはいかない為、一定のルートを確保してコースを作るという案に変更。ADSの関係もあって、その辺りの調整で苦戦した気配もする】
【基本的に、曲の演奏が始まるとランナーが走り続ける状態になって自分で止まる事は出来ない。自分から止まった場合は強制的に演奏失敗扱い】
【ただし、信号や渋滞等の道路事情や運営の緊急連絡等で止まらなくてはいけない状態になった場合は、その場からの再スタート扱いになる。そうならないように運営も努力はしているようだが―】
【収録楽曲はサウンドドライバーオリジナル楽曲オンリー。他の音楽ゲームであるようなライセンス曲や移植曲という類の曲はない】
【楽曲は同人作家や動画サイトで有名な人物等が担当しているようだ。それに加えて、楽曲募集等も行われているらしい】
【運営当初は100人弱のプレイヤーが、現在ではプレイ人口が50万人と言われている。正直な事を言うと、これでもプレイ人口としては足りない方だろう】
【その証拠に、広告収入等で何とか黒字を維持している現状がある。100万人は無理にしても、もう少しプレイ人口が増えれば―】
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彼らがいたゲーセンとは別のエリア、西新井駅周辺では西雲とは違うプレイヤーのサウンドドライバーが始まろうとしていた。時間は午後12時30分を回っている。この日は晴れで、最高気温は20度辺りを示していた。
「推して参る!」
全身にアーマーを装着した瀬川ハヤトが先頭に立つ。サウンドドライバーはレースゲームのように順位を競う物ではなく、あくまでも曲の演奏を正確に出来るかを競う物である。
「普通に車を使わないレースゲームだと思ったが」
黒の背広という周囲の観客とは違う服装をした人物が、パンフレットを片手にレースの様子を見ている。彼がパンフレットには、こう書かれている。
《道路に浮かび上がるマーカーを通過し、上手く曲を演奏できるかが勝利の鍵となる》
「道路には何も表示されていないが―どういう仕組みなんだ?」
彼が言う事も一理ある。道路にはキロ数制限や止まれ等と言った交通表示はあるのだが、マーカーのような物は何処にも見当たらない。
「プレイヤーがしているメットやARシステムで譜面が見えるような仕組みになっています。これで確認すれば――」
マーカーが見えないと疑問を抱いている人物にサングラスのような物を手渡した。
「なるほど。こういう仕組みだったのか――」
サングラス越しから見ると、確かに道路標示以外にも矢印を象ったマーカーが浮かび上がっている。どうやら、それを通過する事で曲を演奏しているようだ。
演奏終了後、各メンバーのスコアが大型ビジョンに表示され、トップを飾ったのは瀬川ハヤトだった。
「あれが、西雲に次ぐランカー候補の実力か」
サングラスをしていた人物は、借りていたサングラスを外して元の持ち主に返した。そして、彼は会場を後にする。
「ランカーと言っても、その実力は十人十色。超絶プレイを見せるランカーもいれば、ハイスコアを極めるプレイヤーもいる…という事ですね」
セミロングの髪型にサングラス、背広という人物――彼女は大月焔、サウンドドライバーのスタッフ兼テストプレイヤーをしている。
「過去には異色と言われていた物が、やがて周囲に認められて今に至る…」
そして、超有名アイドルに依存し続けた日本経済は立て直しが図られる…誰もがそう思っていた矢先の出来事が―例の事件だったからだ。
「超有名アイドルに無量大数の利益を求めさせようとする人間は、どの世界にでも存在する…と言う事―」
彼女は思う。利益だけを追い求めた結果は過去にアイドルダイバーというユニオンダイバーとタイアップさせたアイドルグループで結果が出ているはず……と。
「あの人物、もしかすると…例の組織側の人物だったのかもしれない」
焔の隣にいた男性に若干の見覚えがあった瀬川だったが、焔に引き留めるように指示を出す前に帰ってしまったのである。
「組織側の人物のようには見えなかったけど…後で調べてみるわ」
瀬川の話を聞いて、データベースを色々と調べるのだが…。
「再び、超有名アイドルが日本を掌握する時代が訪れるのか…」
瀬川は懸念していた。結局は超有名アイドルその物や商法等を規制したとしても、規制をくぐりぬけて超有名アイドル商法を展開する事は造作でもない。それは日本経済を悪い意味で駄目にしていく……と。
「そして、悲劇は繰り返される…って、この人は組織のデータベースには登録されてないみたい」
瀬川の話を聞きながらデータベースを調べていた焔は、今の人物がデータベースにはいない事を確認した。
「どちらにしても、超有名アイドル商法を完全規制する法案が即日可決及び実行と言うような最悪なシナリオを回避する為にも、彼らの行動は止めるべきだ」
瀬川は完全規制をかけたとしても、政府を買収して超有名アイドルのみ規制対象外にする事は造作もない事である…と考えていた。ならば、止めるべき存在は超有名アイドルではなく、商法その物を悪用する『超有名アイドル支援団体』の方なのかもしれない。
【何と言う無茶をしたんだ?】
【あのクラスはランカーではないと厳しい】
【ランカーでなくてもクリアできる所を証明したいかのように見える】
【相手が相手だけに、焦ったようにも見えるかもしれない】
早速、レイヴンが勝利したプレイ動画がアップされ、その中で注目を浴びていたのは3位でゴールしたプレイヤーだった。
【プレイ回数が数回程度で、RAILSTORMがクリア出来るかと言うと甘い考えだな。他の音楽ゲームとは難易度の設定自体が違う―】
【マッチングだけならば、簡単なRAILBASICか普通のRAILWINDでプレイしても問題はないはず。あえて、難しい難易度のRAILSTORMにした理由が知りたい】
3位のプレイヤーは、RAILSTORMという難しい難易度のコースをプレイしていた。レイヴンはRAILSHADOWという更に難しいコースだったが、彼の場合は隠し難易度を指定している為に通常プレイではレイヴンの難易度と同じ物はプレイ出来ない。
【RAILSHADOWは上級ランクのプレイヤーではないと解禁は不可能、更にはRAILPLAZMAという超人向けコースもあるらしい】
【西雲零人でもRAILPLAZMAは初見でクリア出来なかったという位に難易度が高いと聞く。ある意味で、サウンドドライバーの敷居を上げているのは隠し難易度ではないか―】
最終的に、このプレイヤーは3位完走にはなったものの、レイヴンや他のプレイヤーと比べると汗だくになっていたと言う現地の談話がある。
こういった身の丈以上のプレイをしようとして失敗する事が、サウンドドライバーには良くある光景だったのだ。
午後1時ごろ、北千住に本拠地を置くサウンドドライバーの本部ビル、その周囲ではサウンドドライバーの整備工場やアンテナショップ、更には博物館等も存在していた。
「全ては、ここから始まった…」
全長3メートル近くはあると思われるロボットとも受け取られるようなデザインをしたパワードスーツ、これがサウンドドライバーのプロトタイプだった物である。今は、起動部分のパーツ等を外した状態で展示をしている。
「元々は救助活動用のパワードスーツを改良、それを音楽ゲームに運用すると言う計画から始まったが…」
185センチという身長でありながら、かなりガリガリの細身と思われそうな体格―ショートヘアに右目が若干蒼く見える。彼こそ、サウンドドライバーの生みの親であるガブリエル。
「今となっては、全長2メートル弱辺りにまで抑え、かなりの割合でプレイヤーも増えていると聞く。その代償は……」
ガブリエルがポケットから取り出したのは1枚のCDだった。パッケージには【ユニオンダイバー・オリジナルサウンドトラック】と書かれている。
「今度こそ、超有名アイドルによって全てを奪われない仕組みを…新たなコンテンツを生み出さなければいけない」
過去にユニオンダイバーは、アイドルグループであるアイドルダイバーとのタイアップにより記録的ヒットをしたのだが、その代償としてアイドル側の不祥事で大幅な人気ダウンにつながった。ユニオンダイバー自体は現在もシリーズが続いているが、過去のような人気を取り戻すのは非常に難しいだろう。
『ガブリエル、例の組織とは違う人物を会場で目撃したわ』
焔からの連絡がガブリエルのスマホに入って来た。どうやら『超有名アイドル支援団体』とは違うらしいのだが…。
「支援団体ではないとすると、別の超有名アイドル絡みの団体か、反勢力か?」
『反勢力も未だに沈黙したまま、別の超有名アイドル信仰団体等も動いてはいるけど、支援団体ほどの動きはないみたいね』
「やはり『超有名アイドル支援団体』を潰す事が、超有名アイドル商法の大幅縮小への近道か。引き続き、他勢力の調査を頼む」
その他の勢力についての報告を聞いたガブリエルは、再び本部ビルの方へと戻る事にした。
「ユニオンダイバーの悲劇を二度も繰り返す事は、全力で回避しなくてはならない。それは、超有名アイドルが全世界線を制圧する事を意味している」
ガブリエルは、それこそレッドゾーンの事でさえ企業等を買収する事で平然と実行する、超有名アイドルや芸能事務所の行動に関して大きな疑問を持っていた。彼らが行っている事は、バブル崩壊の悲劇を加速させているに過ぎない…と。
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「ここよ。最近出来たばかりのショップだけど…きっと気に入ってくれると思う」
午後2時ごろ、同じ北千住にある博物館の隣…サウンドドライバー公認アンテナショップに2人の女性が入店した。
片方の女性に引っ張られる形で、もう一人が付きあっている…という気配もする。その付きあっている方の人物は、男性を思わせるようなファストファッションを着こんでいる蒼穹アオイだった。
「こう言った服が流行っているのか……」
アオイはスーツコーナーを見回っていると、あるブースで足が止まった。
「なに、これ…?」
彼女にとっては未知の領域だった。アニメやゲーム等で出てきそうな衣装や露出度の高いコスチューム等が立ち並ぶスペースで、しばらく彼女は固まっていた。
「サウンドドライバー用、パワードスーツ?」
どうやら、アオイが足を止めたのはサウンドドライバーで使用するパワードスーツを扱っているコーナーだった。
「このブースに並んでいるスーツは、実行委員会のチェックがされている公認スーツです…か。公認とはいえ、こういったデザインの物があるとは驚きね」
並んでいるスーツの中には、ビキニ水着にしか見えないような物、女戦士ご用達のような布地の少ないアーマー、果てはフルアーマーを思わせる重装甲スーツ等もあった。スーツの一つをアオイが手にとって、タグを確認してみる。
「これで3980円?」
値段設定にも驚いた。フルアーマーや宇宙服を連想するような物は1万円~5万円と高級だったのに対し、布地の少ない物やライダースーツのような軽装型の物は5000円台と安く設定されていた。
「何だか、ミスリル繊維という物が高価らしいって話になってるみたい」
隣から現れたのは、先程まで別のコーナーを見回っていた知人だった。彼女の方は、既に買い物をいくつか済ませているようだ。
「ミスリル繊維? ミスリルって、あのファンタジーで良く聞くミスリル合金の事?」
アオイの浮かぶ疑問も間違ってはいない物だった。現代でファンタジーに出てくるような合金を扱っているショップがある事自体も疑問だが、それ以上にどうやってミスリル合金から繊維を作り出すのか……と。
「確かに名前の由来は、そのミスリルで正解みたいね。ただ、製造方法はトップシークレットで良く分からないと言った方が正しいかも」
【ネットで見たが、スーツのデザインが凄すぎるだろ? 同人誌即売会などでは会場入り不可の物まである】
【あれで値段も安いとなると、コスプレイヤーもサウンドドライバーに参戦しそうな予感がする】
【あの値段は、あくまでもプレイヤー向けだからな。プレイヤー以外の人間が買うと、アンテナショップで展示されている値段になる】
【それでもフルアーマーは2万円で買えるのか。安全性を取るか、パフォーマンスを取るか?】
【スーツを買ったとしても、次は専用のインカム、譜面認識機能システム、他にはユニットを購入すればOKか。ユニットは購入しなくても、レンタルが可能になっている】
ネット上では、どれだけの準備をすればサウンドドライバーに出られるのか…という質問に実際のプレイヤーが答えると言う事がつぶやきサイトで行われていた。
【ユニットも自前で買えれば…と思うが高いのか?】
【プレイヤー向けならば基本モデルで1万はしないだろう。ただし、プレイヤー以外はユニットが持てないように制限されている。それ以外にも、サウンドドライバー用コース以外の道で走るとペナルティがある】
【ペナルティと言っても、道路標示と同じ速度で走る分は問題ないようだ。問題は暴走行為各種の方だな】
【あのユニット自体、バイク等よりも便利だからな。サウンドドライバーのIDカードがあれば、基本的に自動車免許のような特殊な物は不要と言うのも大きい】
【ユニットで空を飛ぶことは不可能だが、高速道路の渋滞をくぐりぬける事は可能だろう】
ユニットに関しては、あの値段で多彩な機能を持っている事にサウンドドライバー以外で使用出来ない事が残念である…と悔しい声も聞かれた。
「これなんか、いいかも…」
アオイはスリングショット水着とライダースーツを足して2で割ったデザインのスーツを手に取っていた。これを着てイベント会場で自慢出来れば…とも一瞬思ってしまった。
「その辺りだと即売会では着られないかも…。露出度も高いし、着替えるスペースも…」
知人の女性は、アオイが手に取った服を見て若干悩んでいるようだった。
「もしかして…?」
彼女は数分程考えた結果、この服を購入する事にした。それとは別に、サウンドドライバーのガイドブックも2冊セットでレジへ持っていく…。
「大丈夫かな…アオイ」
知人はアオイの事を若干心配していた。あれ位の規模で露出度が高いと逆にカメラ小僧などの標的になるのでは…と言う不安もある。
「今日はいい気分転換になったわ。ありがとう!」
北千住駅前で知人とアオイは分かれ、アオイは自転車で自宅へと帰ったのである。
「ありがとう…か。アイデレだった彼女とは違う顔が見られて、これはこれでよかったのかな?」
色々と引っかかる部分はありつつも、彼女も電車で帰路についた。