中立祭ⅡーⅡ
目の前では倒れる黒ずくめの敵。
決まった牙城疾風はかなりの威力、倒れるのも無理ない。
倒れているの者に言う。
「さあて、お前の正体をはっきりさせようか」
治療の妨げにならないようにゆっくりと倒れている相手の下に歩く。
いざ正体をあばかんと相手のフードを剥ごうと手を伸ばした時
ジュワ!
「なっ!」
俺が驚いたのも無理もない。
なんせ目の前の相手が蒸発するように消えてしまったのだから。
慌てて残ったフードを勢いよく上に投げるが、そこにはただの木目床しかなかった。
残ったフードもただのフードでなんら細工もない。
「そんなバカな……」
「嘘、消えたの?」
春も俺と同じ反応している。
「………くそ!」
ドンと強く床に拳を叩きつつけた。
叩きつつた拳の意味は春にも分かるだろう……怒り、悔しさだ。
目の前にある爆弾馬の事件の手がかりがすらりと手から滑り落ちたのだ、自分の不甲斐なさに怒りが込み上がった。
「剣君……」
拳を叩きつけたままの俺の背中に抱きつくように密着する。
そんなに自分を責めないで、春の行動はそう言っていた。
俺は肩に置かれた手をゆっくりと握る。
「仕方ない、フード等だけでも確保しとくか」
トポスに放り投げたフードや手袋、ようは容姿を隠していた物を全て入れた。
脱いでいた服を再び着るが、ざっくり切られた跡が残るのを綾が見れば問い詰められるのは目に見えている。
「適当に誤魔化すにしても血が付いてるしなぁ……あ、そうだ!」
再びトポスを開き、中から学園指定のウインドブレーカーを取り出して上に羽織った。
買っておいて良かった、まさかこんなことで役に立つとは……
「そろそろ戻るか春」
「うん、予選はとっくに終わってるだろうしね」
「そうか、エースが予選の最後だったな、もう終わったのか?」
エースがビリヤード玉を出した頃に呼び出されたから結果は知らない。
まあ勝つのは決定事項だろうが……
「うん、ビリヤードの玉を出してから、五秒で終わったよ、鳩尾に投げつけてクリーンヒット」
「そうか、ならそろそろ戻らないとな能力科は自由解散だけど、俺達は点呼確認が終了しないと帰れないし綾もギャーギャー言うだろうしな」
俺はさっさと立ち上がり、春と一緒に体育館を後にした。