中立祭ⅠーⅪ
観客席に戻り、綾の横に座る。
「つな君、お帰り」
「うん、ただいま」
綾に優しく返事をする。
僕モードに切り替えていた。
「もうすぐ伊場君の試合が始まるよ」
もうそんな時間か……
席に座って待っていると、電光掲示板が今までがないくらい派手に光り始め、それを合図に観客全員が沸き始める。
司会の者も先程までのテンションを上げる。
「さあ皆さんお待たせしました、ワントゥワンのメインイベントと言ってもいいでしょう!……我が学園のエースの登場です」
エースが登場すると、より一層会場が沸く、エースはその場で会場に手を振り、愛想を振り撒いた。
主に黄色い声援が大量にし、その人気が計り知れない。
観客の中には失神するもの確認でき、エースが前回出なかったのもわかった気がする……
「エースなら別に予選しなくてもよかろうに」
「そんなに強いのかな伊場君って?」
無能力科の俺達は直接能力を見ることがないのでそこのところは知らない。
だが不審人物と戦ったのをふまえるとかなり強いし、あそこでの伊場は全力ではなかった。
世直し組には醜態をさらしたが、俺もあんな技受けたら立つこともままならない。
その点を改めて考えたら強いと感じる
「エース様だぜ?見てみろ相手なんか戦意喪失までしてやがる」
対戦相手は全身から力が抜け、試合開始と同時に負けを認めそうな勢いだ。
「うん……確かに酷いね…」
さすがの綾でもわかったようだ。
両者が定位置まで移動して、ゴングが鳴らされる。
エースの相手はすぐさま後ろの下がって距離を取った。
妥当な判断だ、エースのパワーは規格外だから容易に近づいてはならない。
それを見たエースはトポスに手を突っ込み何かを探す。
何を出すか悩んだのか知らないがしばらくしてから二つのビリヤードの玉を出した。
ざわつく観客と同時に俺の携帯が震える。
「こんな時に誰からだ……っ!」
目を見開いた俺は席から立ち上がる。
「どうしたのつな君?」
「ふざけたことを……綾、ここから動くなよ……」
メールを見た俺は歯を食いしばるようにしていた。
完全に頭に血が上っている状態だ。
「え?……うん」
これにまでなく真剣なまなざしに圧倒され綾はただ頷き、走り出した俺の背中を見送るしかなかった。
そして背中を見送られた俺は携帯のメール画面を開いたまま走る。
走る中携帯を握る手に力が入る、先ほど届いたメールにはこう書かれていた。
【普通科の体育館で待っている 中立祭の爆弾魔より】
走りながらも俺は体育館にいる爆弾魔を思って言う。
「どこまで中立祭を邪魔するつもりだ……ただで済むと思うなよ……」