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中立祭ⅠーⅩ

ピリリピリリピリリっと、聞きなれたメールの着信音。


一定のリズムを刻む携帯を取り、メール画面を開く。


【一日目終了、伊場 朧とその他一名が上手く動いた】


画面を見た人物の口元は緩み、受信したメールに了解の二文字を打ち込んで返信をした。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


見事勝利を納めた春は、こちらを僕と綾の方を向いて満面の笑みを浮かべ、僕達はグーサインを春に送った。


「ふぅ~」


春が勝つことは明らかすぎるほど明らかだったが何だか少し疲れてしまっていた僕は改めて椅子に深く座り直すとポケットに入れていたバイブレーションが響く。


確認した番号はエースの番号だった。


これ以上誰かに知られるわけにはいかないと思った僕は、綾に周りが騒がしいと言ってから離れて出る。


「もしもし?」


『あぁもしもし?伊場だけど今大丈夫かな?』


「大丈夫だけど、進展でもあったのか?」


『多少わね、まず爆弾を調べた結果魔力の圧縮痕が見つかった』


「圧縮痕……」


エースが言った圧縮痕とは文字通り魔力を圧縮した跡だ。


パソコンのデータ管理と似ていて、圧縮してより多くの魔力を何かに入れるときに使う。


日曜日に春が買ったエナジーボトルも魔力の圧縮が使われていて、使い方さえ間違わなければ危険はない……使い方さえ間違わなければの話だが……


エナジーボトルなどの圧縮された魔力は今回の爆弾のようには使用されないように特殊な加工がされているが、その特殊な加工がされていない魔力は不安定でありいつ暴発しても仕方がないのだ。


ということで、普通は魔力の圧縮などは人個人がやるものではないはずだ。


だとすれば犯人は圧縮が使える加工技術を所持していることになる。


単独犯なのだろうか……


などと考えていると、電話から声が出る


『十君?聞いているかい?』


「ん?ああ悪ぃ、聞いてるから続けてくれ」


『暴発の威力は教室一つを吹っ飛ばしてもおかしくないらしい、それと……』


「それと?」


『これは信じられないと思うけど、圧縮された魔力に爆弾のタイマーなどは関係がなかったよ』


「タイマーが関係ない?どういうことだ?」


『確認した結果だか、爆弾魔が言った青のボタンは中にあった圧縮された魔力に関係があるらしい』


「らしい?ずいぶん曖昧だな」


『仕方ないだろ、本格的な調査なら3日はかかるんだから、それに無いよりましだろう』


確かに手がかりがない今の状況は少しの情報も頼りになってくる。


「そうだ、俺達が秒殺した奴等は?」


『勝手に殺すんじゃない、彼等はまだ気絶したままだし、口をそう簡単に割らなさそうだがな』


だろうなと心の中で納得する。


中立際に入り込んで、何もありませんでしたではまず通じないだろう。


『まあ今はこんなところだ、また進展があれば連絡する』


「ああ助かった、素直に礼は言うわ」


それから電話を切ると、メールが入っていることに気づく。


どうやら春からのようで、次の試合まで時間があるから普通科の自動販売機で待ち合わせとのことだ。


拒否権はないのかと思いつつ、まあ会わない意味もないことだし、会うかと決めた俺が携帯をしまい進んだ時


「あれ、あんたは………」


ちょうど曲がり角で南と鉢合わせになった。


「あれ南じゃないか?どうしたんだこんなところで?」


「私はエナジードリンク買いに行くんだけど、あんたは?」


「春が自動販売機で待ち合わせだとさ」


「春?……ああ春美さんのことかしら?」


「おう、そこの道場に通っててよ昔からの知り合いなんだよ」


「まったくあんたの交遊関係はどうなってんのよ」


笑いながら言う南、その笑顔に昔のような敵視の感じはほとんどない。


南とはいつの間にか打ち解け、そのまま普通科の自動販売機コーナーまで一緒に行き、ベンチに腰かけていた春美の元に向かう。


「悪い春、待たせてごめん」


「ううん、全然待ってないよそれよりミナミンじゃんヤッホー」


軽い感じで片手を上げて挨拶に、ミナミンこと南も答える。


「春、初戦突破おめでとう」


自動販売機で買った缶ジュースを春に放り投げ、春の真向かいに立ちながら南と同じエナジードリンクを飲む。


笑顔で受け取った春はそのまま缶ジュースを開け、小動物のように可愛らしく飲み始める。


「このまま全員倒して優勝しちまえよ」


俺がそう言うと春は驚き、ジュースを気管に入った様子で咳き込む。


「剣君……それ本気で言ってるの?」


呆れた顔で見てくる春に続き


「あんた、強さ知らないの……?」


「え?そんなに強いのかエースって?」


静寂が流れ、春と南の二人は口をあんぐりと開けたまま俺を見ていた。


可愛そうな人を見てくる様な目に耐えかねた俺は二人に続ける。


「伊場君の強さは格別だよ」


「そうね、負けを知らないんじゃないかしら」


二人の説明に無性に興味が沸いた俺は体がうずうずしてきた俺はもっと戦いたくなる。


「う~む……夜道に襲えば戦えるか……」


「つな君、何か今物騒なこと言わなかった?」


「ん?気のせいだ気にするな、まあそんなことより春はシードだから次勝てば予選突破か」


適当に話題を逸らす。


聞かれていたか、桑原桑原。


「うん、まあね♪予選突破は今年も大丈夫だと思うよ」


「それじゃあ後も頑張れよ、南も応援してるからな」


そう言った俺は缶ジュースをゴミ箱に入れ、二人と別れて客席へと向かった。



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