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連日のデート?

春と遊びに出た俺は、家から20分ほどのショッピング街にいた。


「そういや春、何を買いに来たんだ?」


「え~とね、服を2、3着とエナジーボトルかな?この前切れちゃったからさ」


春はトポスからからになった小さめのペットボトルほどの容器を取り出してぶらぶらと見せる。


ちなみにエナジーボトルとは魔力の回復剤みたいな物だ。


魔力は普通に寝るなどの休憩行為で回復していくのだが、急を要する時にエナジーボトルを使う。


量にもよるのだが、回復力は期待していい。


「エナジーボトルはいいけどさ、これからそんなに魔力使うことあるか?一日の授業でも春だったら全然余るくらいだろ」


俺がそう言うと、春は驚いた表情で恐る恐る言葉を返した。


「け、剣君、来週から何が始まるか知らないの?」


「ん?………あっ!中立祭か!」


「うん、明日の朝から予選が始まるんだ」


「そっかそっか、もうそんな時期なのか、普通科では連絡なんか受けなかったけどな」


「どうせ剣君が寝てただけでしょ」


ふむ、何も言い返せないところがまた痛い。


春が言った中立祭とは、中立魔法学園で決める、能力者の大会みたいな物だ。


日頃から積み重ねてきた鍛練を発揮する模様しものの一つで、能力者は必死で上位を目指して凌ぎを削りあう。


中立祭で残した結果はクラス編成にも関わり、学期の途中でクラスが変わることも珍しくない。


そのためクラスが下の能力者の中には必死になって大会に望む者もいる。


もちろんそれは逆にも言え、それが春美だ。


この大会の前、能力者は万全の状態を大会の前に整えておく必要がある。


「まあ準備しとくに越したことないけど、春美なら大丈夫だろ」


「油断禁物だよ、めきめき力を付けてきた人もいるって聞くし」


「そっか、そういや今回エース様は参加するのか?」

俺が皮肉を込めた言い方をする。


中立祭でのエースの参加はエース自信が決めることができるが、前回はいわゆる仕事で不参加だったはずだ。


「確か今回は参加だったはずだよ、なんでも本人が強く志願したんだって」


「強く……ねぇ」


本人の意思で参加は決めれるはずなのになぜエースは強く志願したんだろう?


なぜかそこがいように頭の隅に引っ掛かった。




それから俺と春はいくつかの店を回り、春の目的の服を買ってから、適当なファミレスに入って昼食タイム。


春はパスタ、俺はどんぶり物を食べていた。


「剣君、今回は応援に来れそうなの?」


「まあ……焔が問題を起こさなければね……」


前回の中立祭ではたまたまジュースを買いに行った時に、能力科の奴らに絡まれてそのまま指導室まで御用となったのだ。


結局前回の中立祭は指導室でテレビ観戦、後の反省文で最後らへんは自らの五感で感じてすらない。


しかし結果は後々校内の壁新聞や綾からの話で大体な感じは掴めたし、冬花と春もそこまで結果は悪くないと聞いた。


自分自身はあまり前回の中立祭を気にしてはいなかったのだが、現に春は応援に来てほしかったと言っている。


それなら悪いことをしたなと白米を噛み締めながら感じた。


「まあなるようになるさ、それより食べ終わったなら行こうぜ、エナジーボトル買いにさ」


「………」


すでに空になった皿を見てから俺は言うが、何だか春は少し不機嫌そうな顔をしたまま問う。


「剣君は、私とお喋りしたくないの?」


「ん?いやしたくないことはないけどさ、別に道場でも学校でもできるじゃん」


「もう、そういうことじゃないよ!」


「じゃあどういうことだ?」


ここで喋るのも学校や家で喋るのもさして変わらないような気がするのだが……


「も、もう///わかってる癖に女の子に言わすの剣君?」


(ヤバいなんもわからん……が、これは早いこと切り抜けた方がいいな)


「ま、まあ、早いとこ出ちゃおう」


「もう///今日は見逃してあげる」


何を見逃すのかさっぱりわからないが、とりあえず助かったみたいだ。


しかしさっきのやり取りで春が顔を赤く染める事がなどないはすだが……やっぱり女の子はよくわからん。

そのままファミレスを後にして、俺と春は行きつけの雑貨店に向かう。


エナジーボトルを買いにさ行くならば、そこら辺の店にいいわけなのだが、それは春だけで行くことを前提としてのことだ。


店側の規定としてエナジーボトルを置く店は無能力者が入れることはないようになっている。


残念なことにこんな小さなことでも法律で決められていて、罰則が怖いために店側もやるしかないのだ。


まあ無能力がエナジーボトルを買ってもしょうがないことなので、別段文句はない。


ただただ基本的な雑貨が買えないという小さな事が無能力の小さな小さな悩みである。


だからこそ、無能力者のような立場の人も能力者も入れる隠れた雑貨店が存在し、今からそこに行こうとしている。


もちろん違法ではあるため、かなり深い路地裏にまで進まなければ行けない。


―雑貨店・美鈴―


相変わらずスナックみたいな看板を掲げている店だ。

背景がピンクとは、ぱっと見ては雑貨店とは思えない。


「うぃーす」


「失礼しまーす」


押し戸になってるドアを開け店に入る。


店内は大きめの棚がずらりと並んでいて、日常で使う雑貨やエナジーボトルが並んだ棚などこじんまりした店内にところ狭しと商品が置かれているが、今回の狙いはエナジーボトルのみ、春はエナジーボトルを二本棚から取り、一緒にレジに置き、誰もいないので呼び鈴を一回だけ押した。


チン!と高い音がなると遠くから女性の声がしてから出てくる。


「いらっしゃい!って何だ春と剣坊じゃないか!」


「ご無沙汰してますおばさん、元気そうで何よりです」


ペコッと春と頭を下げる。


ここの店主でもある美鈴さん、40代だというのに顔立ちは男達を魅了するほどだ。


しかし見た目とは裏腹に性格はとても豪快だ。


男らしいとも言えるが言ったとたん、首が飛ぶので死んでも言えない。


「何だ今日は二人でデートかい?てか付き合ったんだな」


美鈴さんがそう言うと、俺の近くで何かの回路がショートしたような音がし、同時に春は顔を真っ赤にして頭から煙が出てるように見えた。


それから春はロボットのような動きで振り返ると、エナジーボトルを俺に預けると今までで見たことのないスピードで店から飛び出していった。


「あっちゃーやり過ぎたかな?」


「そう思ってるなら最初からしないでくださいよ」


財布からエナジーボトル代を支払う。


「あらら、もえ帰っちゃうのかい?」


「ええ、明日からまた忙しくなりますしね、美香にはよろしく言っててください」


美香とは美鈴さんの娘さんのことで、俺達より一つ下だ。


三年前までは普通の元気な女の子だったが、あることが原因で、寝込んでいることが多くなり、店に立つことも少ない。


「少しくらい顔見せてやってくれ、きっと声も聞こえてるだろうからな」


「そうすか、じゃあお言葉に甘えさせていただきます」


エナジーボトルを置いて、裏手の階段をゆっくりと上がって行った。

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