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日曜日は激動日?

南との一件の次の日、いちよ日曜なため、朝からゆっくりと寝ていた。


昨日の疲れを自分の体を預けているマットレスが吸収してくれているような感覚だ。


それに包み込んでくれている布団、いつもの当たり前のことでも今なら幸せな気持ちにしてくれている。


まさしく全てが幸の文字に支配されているようだった。


今の自分は支配されたいという受け身の姿勢でいた。


後1時間もこうしていれば体力も自然と回復してくるだろう、だから今はポカポカとカーテンの隙間から射し込んでくる日の光にも身を喜んで焼かれていよう。


ブブブブ♪ブブブブ♪


「……………」


ブブブブ♪ブブブブ♪


(俺の携帯のバイブに似ているが、きっと違う……そう俺は疲れてるんだ、きっと幻聴に違いない)


ブブブブ♪ブブブブ♪


いまだに幻聴であろう音は俺を嘲笑うかのように楽しく振動という名の旋律を奏でている。


(………仕方ねぇ)


ケータイを掴み、寝ぼけ眼で見ると春からの着信であった。


「もしもし……?」


「あ、剣君!おはよー今大丈夫かな?」


「んあ?いきなりなんなんだよ?まあ大丈夫だけど……」


まだ起きていない体で必死に言葉を紡ぐ。


「そっか良かったぁ」


電話越しに安堵する春美は一拍置いてから春は俺の日曜日をぶち壊す言葉を続けた。


「剣君、ドア開けて~もう家の前に来てるんだ♪」


「なん……だと」


なぜかこめかみがピキッとひきつってしまった。


ピーンポーン


「ピーンポーン」


電話越しにインターホンの音が聞こえて来た。


これはどうやらガチのようだ。


しかたなく布団から這い出た俺はその足で玄関に向かい鍵を開けてからドアを開ける。


目の前には春がいた。


「おはよー剣君♪」


「おはよー春、朝から何用?」


まだ玄関から上がってもいない春は後ろから紙袋を出した。


「朝御飯持ってきたよ♪」


「おお、別にそんなことしなくても良かったのに」


二、三歩後退し春を招き入れる。


春はお邪魔しますと言って、家に上がった。


「剣君、朝御飯まだだよね?」


「うん、起きたばっかりだし」


「だよね、まあそれを知って来たんだけどね、用意するから剣君はくつろいでて」


春は紙袋からいくつか赤色の蓋をしたタッパーを取り出しテーブルに並べ、それから蓋の上に少し出っぱっている部分を押す。


すると数秒後タッパーから湯気がもくもくとたち始めめ、タッパー内の料理はホカホカに温まった。


「相変わらず便利だな、この温め機能付きタッパー」


「そうだね、上の出っぱりを押すだけで中の物を温めてくれるなんてね」


「詳しくは知らないけど、どこかの新婚さんが温かい料理を食べてほしいと思って出来た物らしいな」


タッパーを開けて、ホッカホカの筑前煮の人参をパクり。


出汁がきっちりと染み込んでいて、調味料の配分も見事なまでに俺好みになっている。


春だからこそ知っている俺の好きな味だ。


そういえば昨日の南の物もなかなかだった。


比べてもそう差はないだろう。


「まったくどうやったら春の料理に近づけるんだろうな」


「そ、そんなに///いいかな///」


もじもじとする春は何か言いたそうな顔をしていたが、俺が次のことを言った瞬間その何かを聞くことはなかった。


「そういえば南も料理が上手かったな、サンドイッチだけど作りも見栄えもかなり良かったな」


「け、剣君……南さんって…南 凉華さん?」


「うん、偶然が重なってさ昨日ここに行ってきたんだ」


床に置いていた鞄からチケットの半券を出すと、春はばばっとチケットを手に取りまじまじと眺めている。


そんなに行きたかったのだろうか?


それなら悪いことをした、春なら一緒のAクラスだから俺より仲良く出来ただろう。


行きたかったなら、こりゃ悪いことをしたと罪悪感を感じた。


まあ今は気にせず、タッパーに入った筑前煮に箸を伸ばしたのだが、箸は筑前煮を掴むことなく空を切った。


それもそのはず、とろうとしたタッパーは春がそのまま手元に引いたからだ。


「ちょっと何するんだよ」


「ねぇ剣君……その話だけど詳しく聞きたいんだけど」


春はこめかみをひきつらせながら言った。


顔は笑顔ではあるがその顔の裏は全然笑っていない。


よく知っている、怒った時の顔である。


「ね、ねぇ……何でそんなに怒ってるんだよ春美さん」


「べっつにー私全然怒ってなんかないよ」


(怒ってるじゃん……)


どうやら春は南と俺が一緒に遊んだことが気に入らないようだ。


こうなった時の春は、なんと言えばいいか……ややこしい。


昔、一度道場で冬花と実践をしていた時に、冬花がまだ慣れてない牙城を俺にくり出したとき、たまたま足をとられて躓いた冬花に対応できずに押し倒され形になり、その時春が入ってきて、現在と同じ状況になった。


あの時は理由をちゃんと聞き入れてもらうまで、晩ご飯をお預け喰らったことがあるし、ずっと無視されていた。


「…………」


あの時のことを思い出した俺は嫌な汗が体から出ているのがわかった。


何としてでもあの過去は繰り返してはならない。


そう胸に強く誓った俺は、一旦顔を下に向けた後、再び春の方向を向いた。


「い、いやあのさ、南と遊びにいったのは事実だけどさ、それは南が俺みたいな普通科に借りを作りたくなかったからであって、南本人も俺なんか誘いたくなんかなかったはずだよ」


春は口を真一文字に結び、何も言わずに俺を無視している、ただ俺の話は聞いてるようで、少しだけ言葉に反応しているようだ。


(よし、掴みはOKだ)


「そ、そうだ春、なら今から一緒にどっかに出掛けないか?」


ピク!


お!かなりいい反応だ。


「それは……二人っきり?」


やっと重い口を開いた春


「そうそう、俺と春の二人っきりで、場所は春が決めてくれていいからさ、ね?」


「うん♪行こ剣君、ご飯なんかさっさと食べようよ」


(俺から三大欲求の一つを無理矢理お預けしたのは春なのに……)


何て心で突っ込みつつ、並べられた朝ごはんをもくもくと食べ始めた俺であった。

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