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戦いの裏では絶叫?


俺がナイフ男との戦闘が終わった頃のとある廊下では一人の絶叫とも聞こえる悲鳴がこだましていた。


「キャー来ないでー!!」


「マ…テ…オマエノ……シン…ゾウ…ヨコセ……」


後ろからは血まみれになった白衣を来た医者らしき者が追いかけてくる。


片目がなく、顔もボコボコに変形し所々が血らしきものが付着していてもはやゾンビだ。


このゾンビがさっき開けた扉を通った直後追いかけてきたのだ。


そんなのが追っかけてきたらまずは逃げるだろう。


「あっち行ってーー!」


しばらく逃げること1、2分ゾンビが追いかけるのを止め、道で息を整えていると


「スイ……マセン……」


「ひっ!」


後ろから声がして、私は反射で体全身の筋肉を硬直させてしまう。


しかし私の反応とは裏腹にそこにはいたのは一見外傷がない普通の青年で、首には従業員を示すカードがかけられている。


安心感がどっと押し寄せ私は一気に胸を撫で下ろす。

「ゴールは後は直進すれば見えてくるはずですので頑張ってください」


「はい、ありがとうございます」


素直に礼を言って頭を上げると、従業員の男性の男は片腕を上げて、まるで何かを欲しがるような仕草をした。


「何ですか?」


「ゴールを教えた報酬です………左腕をクダサイィィィ!」


いつも間にか引きちぎられたような腕になっていた従業員を自分に覆い被さるようにのそりと体を寄せて来る。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




―ゴール地点―


先に着いていた俺は、中から聞こえてきた南であろう悲鳴に反応した。


あれから俺も何度か驚くことはあったものの、聞こえてきた絶叫ほどではない。

などと考えているうちに、俺が出てきたゴールの扉がとんでもない勢いで開き南が泣きながら飛び出してきた。


そしていた所が悪かったのかどうかは知らないが、南はそのまま俺に飛びつくようにして抱きつく。


「うぅぅぅ……ひっぐ、ぐすん」


「おいおい大丈夫か?」


「うん……ひっぐ……もう大丈夫……ん?」


「お?」


多祥なり落ち着いたのか、ふと抱きついた相手の顔を見た南だが、ようやく状況を掴んだようで顔をみるみる赤くしていった。


ばっと俺から離れた南は顔はそのままで両手をブンブンと振り回した。


「ち、違うわよ、こ、こ、これは///」


「ほほーう、これは何だ?」


「う、うるさい!さっさと行くわよ!」


南は俺に顔を見せることなく、外に続く道に向かってそさくさと歩き出した。


「ったく、可愛くねーな」

と呟き、俺は南の後を付いて行った。


俺達は一旦ベンチに座り、一つため息を吐くと南は鞄から大きめのランチボックスを一つ取りだし、俺との間にポンと置いた。


「何これ?」


「ふふふ、見て驚きなさい昼を用意してきたのよ」


中身は綺麗に敷き詰められたサンドイッチだった。


ツナサンド、ハムサンドの定番サンドに少し変わり種のサンドも入っていた。


見た目もバッチリで朝から何も食べてなかった俺の食欲が腹のそこから込み上げてくる感覚がした。


南はそんな俺に使い捨て用のお手拭きを渡す。


「じゃあいただきまーす♪」


「召し上がれ♪」


さっそくハムサンドを一口頬張り、南は俺の顔を見ながら感想を待っている。


「うん、美味い」


それを聞いて笑顔になる南、やはり黙っていればかなり可愛い。


「南、料理得意なのか?」


「得意というか好きなのよね、子供の頃から手伝ってたから」


「なるほど、こりゃ貰い手には困らねーな」


「ご冗談を、私はまだ学生よそんな話………ってあんた腕怪我してるじゃないの!」


南はサンドイッチを持っていた右腕を掴んで言った。


確かに南の言っている通り、二の腕辺りから血が出ていた。


どうやら知らないうちにナイフで切られていたようだ。


まあ気付かないほど小さな傷だが………


「ああこんなもの、ほっとけば治るさ」


「ダ・メ・よ!!」


南は持っていたサンドイッチを奪い、一旦ランチボックスに置いた。


「菌が入ったら大変でしょ」


トポスを開いた南は、中から救急箱を取りだした。


お前は保険医かと内心突っ込みつつも、俺は南の処置を待つ。


スプレー型の消毒液を傷口に吹きかけ、さっと柔らかい布で痛みを感じない絶妙さで拭き取る。


最後は大きさに合わせた絆創膏を貼り付けた。


誰でもできる処置だが、手際の一つ一つに無駄が全くなくとても慣れている感じを感じさせた。


「はい終わり、まったくお化け屋敷で何で切り傷ができるのよ」


「すまねぇな、泣きながら出てくる奴がいそうだからつい急いじまったのかな」


「な///あれは……もう早く食べなさいよ!」


さすがに恥ずかしいのか南は顔を赤くしながら怒ってきた。


しかしまあ言われなくてもこのサンドイッチには手が伸びる。


10分ほどで食べ終わった俺達はその後二人でまた相談して適当なアトラクションを楽しんで気付けばもう夕日が照らし出し時間を教えてくれていた。


最後のアトラクションに乗り終えた俺達は来た経路を戻って互いの最寄り駅に着く。


「そんじゃまあ今日はありがとうな、南のおかげで楽しい休日が送れたよ」


「そう、なら良かったわ」


「じゃあまた学校でな」


駅の改札口で別れた俺達はそのままそれぞれ家に戻った。

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