お化け屋敷
「二つの道どちらかを選択して進んでください……二つに別れるのも構いませんよ……キヒヒヒ」
受付のような所(古びているのでよくわからない)で急にアナウンスが鳴り不気味な声が響く。
「どうする二手に別れるか?」
「そうね、あんたに飛びつかれても困るしね」
「そっくりそのまま返してやるよ」
俺は真っ直ぐ進み、南は右手に折れて進んでいった。
さっそく歩いてから進むと、壁に張り紙がされていることに気がつく。
ランプと顔を近づけて読もうとした時、張り紙の中央から長髪の女性が突き破って飛び出して来た。
前髪のせいで顔は全く見れなかったが、入院服を着ていたのはわかった。
「ナンデ……コロシタノ……ナゼェェェェ!」
「どわっ!」
逃げるように左の階段をかけ上ると、不気味な女性は追ってくることはなかった。
やはりそれなりの迫力はある、今時のお化け屋敷は侮れないな。
気を取り直し、二階の廊下を歩き続けていった。
―南side―
薄暗い道をわずかに照らすランプを足掛かりに進む。
「……………」
何故だろうか、さっきまでは普通だったのに今は不安という感情にかられている。
アイツがいないからなのだろうか………いやいやそんなはずはないアイツはむしろ私にとっては邪魔な存在なのだから。
首をブンブンと振り無理矢理忘れようとした。
(何やってんの南、気合いを入れなさい!)
両手で自分の頬を数回叩き気合いを入れ直し、私は前に進み一つの部屋に着いた。
扉は引き戸で、錆びれてボロボロになった鉄の棒を握りゆっくりと開いて中を慎重に覗く。
診察台や医療器具に医者がよく座っている椅子に机、どうやら診察室のようだ。
ゆっくりと足を踏み入れ、回りを何かないかを調べる。
「にしても良くできてるわね、蜘蛛の巣とかほこりとかリアル過ぎて怖いわね………ん?」
ランプの光が照らし出したのは壁にベッタリと生々しく血で書かれた文字だった。
【アナタヲシンサツシマス……シンサツダイニネテクダサイ……】
「私を診察………」
不気味な文字に私は思わず体が震えた。
しかし診察台に行かねば始まらないのだろう。
壁に書かれた血文字通りに私は診察台に上がり、おそるおそる横になった。
――その瞬間
ガタン!
「ふえっ?」
我ながらなんとも間抜けな声が出たものだ。
それもそのはず―
ベッドを配置していた場所の床が下に傾いたのだ。
「キャアアアアアア!」
なすすべもなく私は滑るように下に落ちていった。
―剣士side―
あれから道なりに進んでいるが特には起こってはいない、せいぜい不気味な笑い声と不気味な音が聞こえるくらいだ。
「南のやつ大丈夫かな?」
あいつもいちよ女の子なわけで、こういう類いは苦手なはずだ。
口や態度はああでも、きっと怖いはずだ。
(黙っとけば可愛いのにな)
なんてことを考えつつも進んでいると、目の前に人影らしき者が現れたのがボヤッとだがわかる。
(またお化けか?)
かつかつと一歩ずつ近づいてくる正体は意外だった。
「また会ったな……」
「ナイフ野郎じゃねぇか」
トポスから刀を取りだして左腰に付ける。
「今日は有給休暇で家族サービスか?」
「残念ながら独り身でな今後も増える予定はない」
「あっそ、まあどうせリベンジマッチだろ来な!」
「今度は仕留める!」
俺も相手も地を強く蹴り互いの距離を詰めると同時に刀、ナイフをそれぞれ振り抜くのだった。