デート?お礼?
ジリリリリとけたたましく鳴る目覚ましを止めて、のそりのそりと起き上がる。
「むぅ…………眠い」
そう言いつつも、洗面所でまだ寝ぼけてる体にスイッチを入れ、部屋に戻って時計を見るとすでに9時をさしていた。
「少し急ぐか……」
クローゼットから白のTシャツに薄い緑のズボンに薄手のジージャンを羽織る。
ベッドに座ってからトポスを開いて不足しているものがないかチェックをしていく。
「うーん、血止めを使っちまったけど、補給するほどではないか」
確認するもトポスの中の物を使わない日を送りたくないものだ。
トポスを閉じ、ラックに掛けてあった斜めがけの鞄を取って家を出た。
―中立魔法学園前―
俺が着いたのは大体10分前なのだが、その頃にはすでに南は到着していた。
白地のフリルのブラウスに茶色のオガンジースカートにアジアンチックな模様が施されている。
いつもは制服だからか、とても清楚でおしとやかな綺麗だと感じた。
「おう、早いな♪」
「ま、まあねあんた相手に遅刻なんてしたら一生の恥だからね」
相変わらず一言多い奴だ。
「まあ、立ちっぱなしもなんだしさっそく行くか」
「ちょ、仕切らないでよ」
そう怒る南は先を行く俺を追い抜かし、どんどん進んで行く。
これから一緒の所に行くというにしては、ちと不可解過ぎる光景だった。
電車に乗って揺られること15分、俺と南は目的地がある駅に着いた。
改札口を抜けて駅を出た直後に視界に入ったのは南に誘われて来たテーマパークだ。
見るものを圧倒する迫力に自然と口数が少なくなる。
「………凄いな」
「うん………私もここまでとは思ってなかったよ」
圧倒する迫力に緊張しながらも、俺達二人は入場券を従業員に渡してマップを受け取った。
中は大体ドームが数十個分の広さがあり、1日しては回るにしては無理があるほどだ。
「さあてどこから回る?」
「どこってあんた行きたいとこないの?」
お互い顔を見合わせる。嫌な予感が頭によぎり、はぁ~っと深いため息を吐いた。
最初に行きついたは待ち時間が一番短かったアトラクションだ。
ゆっくり上昇していって、最後に垂直落下するよくあるタイプだ。
すでに並んでいた人達がいたがどこかのネズミをモチーフにしたテーマパークとは違うので案外早く順番が来た。
南と並んで横に座り、安全バーにガッチリと固定されれ、ゆっくりと上空に上がっていく。
「いやーこういう乗り物に乗ったら、やっぱテーマパークって感じだよな」
「……………」
横の南を見ると、さっきまでのやかましさはどこへいったのやら黙り、顔面からは血の気が引いていた。
「お、おい、大丈夫か?」
俺の問いに答えない南、完全に意識が別のところにいっているようだ。
心配しようにも、こんな状態じゃどうしょうもない。
それにそうこうしているうちに――落ちたのだ。
「うおおおおぉぉぉぉ!」
「………………………」
急降下によるスリルと、全身で受ける風によりとてつもない臨場感を味わえた………俺だけ
アトラクションから終わった後、俺達は空いてるベンチに座っていた。
「おい大丈夫か?」
「へ、平気よ……」
そう言うものの、まだ顔には血の気が戻っていない。
「南、お前高所恐怖症なんだろ?」
ビクッ!
南の反応にため息を吐いた俺は春の頭を撫でる時みたいに南の頭をゆっくりと撫でた。
「ちょ///いきなり何よ!」
顔を真っ赤に染めながら南は怒るが、俺は撫でることをやめない。
しかし怒っているものの恐怖にかられたダメージは多くいつもの迫力はなかった。
「ありがとな、南が俺のために嫌な乗り物に乗ってくれて嬉しいよ、ちょっと待ってろ」
俺は立ち上がり、近くの自動販売機で二人分の飲み物を買って戻った。
「ほらこれ」
「あ、うん、ありがとう」
南に渡したのは例のエナジードリンクで、蓋を開けてちょびちょびと飲み始める。
「次の奴は二人で楽しめる物にしよう」
パンフレット式のマップを広げ、参加出来そうなアトラクションを探す。
「これなんてどう?17番のお化け屋敷」
「へーお化け屋敷とか大丈夫なんだ」
「所詮は作り物のまやかしよ」
「そうか、じゃあ行くか」
大体落ち着いたところで、お目当てのお化け屋敷に来た。
設定は廃墟となった病院とよくある感じだ。
しかしそびえ立つ病院はいような雰囲気を放っており、少しだけ寒気が背中に走った。
入場する際に二本のランプもらい、暗闇に包まれた中に入っていった。