能天気と気にしすぎ
突然テーマパークの入場券を渡されるというハプニングもあったものの、俺は家に帰った後、南の件を忘れてシガーケースをパソコンに繋ぎ光の正体を調べていた。
「ふむ……やっぱり人払いの護符か」
俺の言った人払いの護符とは名前のまんまで人を避ける札である。
厳密に言えば避けるではなく、指定する範囲を人から意識をそらす。
意識をしていなければ道を覗くこともないし、人通りが極端に少ない道なため、人払いの護符を使えばタイマンになることは見えていたということだ。
専用の札に魔力を込めることによって、様々な力をもった札を生成することができる。
しかし実際は札に込める魔力は割りに合ってないは込め方にもコツを要するため需要はない。
ここで問題なのは込め方である。
例えば火を発生させる札を生成することも、込め方少しでも間違えるだけで、火を発生させることもできなくなる。
それだけ込め方には繊細さが必要なのだ。
大きな力にはそれなりに魔力が必要になる。
その中でも人払いは特別だ。
護符の種類自体は多く存在するものの、人払いは知られていない貴重な部類で、知ってる者も一握りくらいで男に会うまで俺の住む町で知っている人物は俺だけだと思うほどだ。
それを使うということは相手は何者何だろうか?
見えない答えに考えても仕方がないと思った俺は少し早いが夕食を作ることにした。
自分で言うのも何だが料理は電化製品を使わなくともできる方だ。
冷蔵庫から中を見て今あるもので作れる料理を考える。
「豆腐と挽き肉があるから麻婆豆腐かな?」
そこから必要な材料を取り出して手早く調理に取りかかる。
電化製品に任せれば皿洗いなど材料を下ごしらえする手間はないが自分で作った方が機械と何か違って美味しいのだ。
料理にこめる愛情なのだろうか……
などと冗談を考えつつ調理すること15分――
白米にメインの麻婆豆腐にサラダと中華スープの献立となった。
「いただきまーす♪」
それなりのできばえになった料理に舌鼓をうちつつ、テレビを見るとちょうど南からもらったテーマパークのCMが流れていて思い出す。
「うーん……行かなきゃダメなのか?」
正直あまり乗り気ではない、あまり互いのことを知らない間柄でテーマパークに行くなど普通は考えられない。
断ってしまえばいいが、連絡先さえわからない以上連絡のとりようがない。
「………考えても仕方がないか」
残り少なくなったご飯をかきこむようにして食べ終わると、食器洗い機にぶちこみスイッチを入れて、俺はシャワーを浴びに着替えを持って行った。
―その頃―
「うーーー」
ベッドで唸り声をあげてる私
「何てことしたんだろ……」
今さらながら自分の行動を恥じる。
よく知らない相手からいきなり入場券を渡されて集合時間と場所を告げられる、これでは完全に変な奴だと思われた。
考えてる相手が今どれだけ能天気に考えてるかも知らずに私は頭をひたすら捻っていた。
しかし時はそんな私に微笑むことはなく、ただただ短針と長針をいつもと変わることなく動かしていた。