帰宅後
綾のおじさんのせいでヘトヘトになった体を引きずりつつ俺は自宅であるマンションにやっと戻った。
まだ築数年しか経っておらず、オートロック式のフロントに各部屋には標準設備と言いながらのほぼ最新設備があり、外見も防犯面やデザインに優れていて文句なしである。
エレベーターで6階に上がってそのまま一番奥である角部屋の前に行く。
ふぅっと1つため息を吐いてから後ろポケットに入れていた鍵を取り鍵穴に差し込んで捻る。
捻るとカチッと音がし、横の壁から蓋が外れて小さなモニターが現れ、俺はそれに人差し指を数秒当ててからようやく部屋のドアを開ける。
玄関で靴を脱いで廊下を進み扉を開けると、10畳ほどのカウンターキッチン付きでの広い部屋が広がり、俺はただ倒れこむようにベッドに飛び込んだ。
疲れきったこの体を休めたいところだが、俺は制服の内ポケットから冬花から受け取った封筒を出して中身を封筒を振って取り出すと中からは紙が一枚ペラペラと手のひらに落ちる。
「ふむ100万か、まああの程度の仕事ならむしろ多い方か……」
俺は手にした100万円と記入された小切手をファクスに読み取らせて番号を入力し送信が完了すると、俺はベランダに出てライターで封筒ごと燃やして燃えかすを風にのせて外に捨てた。
これで完了で、後に口座に100万円が振り込まれるだろう。
後はシャワーを浴びてスッキリして寝たいところだが、残念ながら体の不快感より疲れにより眠気の完全勝利に俺は制服だけ脱いで壁に掛けるとすぐに眠りについた。
―翌朝―
いつもより30分早めにセットした目覚まし通りに起きた俺は寝ぼけ眼の状態で洗面所に行き顔に冷たい水でわしわしと洗う。
ひんやりとした冷寒が俺をぼやけた世界から現実世界に引き戻した。
部屋に戻りキッチンに行き、パンをトースターに入れて赤色のスイッチを押し、続いて横にあるミキサーにバナナとミルクを入れ同様に赤いスイッチを押して、横にコップをセットし最後にトースターの横にある大きめの箱の蓋を開け、卵を専用の場所に一個起き、平皿にベーコンをぶちこみ蓋を閉めて同じ作業をする。
歯ブラシに歯みがき粉をつけ、軽く磨き朝起きた時の口の不快感をさっぱり無くすと、俺は着替えを持ってきて着ていた服を脱いで洗濯機に入れて風呂場に入りシャワーのノズルを捻りシャワーから出るお湯を浴びる。
体に浴びるお湯が前日からついていた汗を流し不快感を取り除くと共に体に清涼感をもたらし俺は髪の毛、体と順に洗いさっぱりしたところで外に出てバスタオルを頭から被って大体の水気を切ってから着替えた。
体から湯気が立ち上るなか部屋に戻るとカウンターにトースターにバナナオ・レとハムエッグが皿に乗っていた。
実は家に置いてあるトースターやミキサーは最新式でタイマーだけじゃなく、焼き上がりや皿に移したりコップに注いだりしてカウンターに置いたりする。
なかでも優れものは少し大きめであるステンレス性の箱で、ある程度の料理を材料を入れるだけで勝手に調理をしてくれる。
調味料等は後ろに取り付けられているタンクに入れておけばその料理に合わせて使うというシステムだ。
出来上がった料理をテーブルに運び、テレビのスイッチを付け俺はトースターにかぶりつきながら朝の占いを一人眺めていた。
ちょうど一位と十二位の発表のところで、自分の正座の蠍座と魚座が残っていた。
「おっ、来んなよ」
たかが占いだが、まあ最悪の結果にはなりたくないもので軽く願う。
「残念今日の十二位は蠍座のあなた、スタートから失敗しがち、ミスの多いので気を付けて行動してね」
「あらら、まあたかが占いだよな」
俺はそうたかをくくりつけて、朝食を一気にかたをつけて皿をハムエッグを作った中に入れる。
ちなみに食器洗い機能付きだ。
壁に掛けていた制服に着替え鞄を取り俺は家を出た。
鍵を閉めると自動で指紋認証式の鍵は閉まる。
一階に降り、俺はいつもの通学路を歩く。
道にはサラリーマンや俺と同じような学生などがいるが数は少ない方で通学路としちゃかなり助かる。
腕時計を見て、焦りながら走り行くサラリーマンに心の中で敬礼をしつつ歩を進ませていた――その時
何かを感じた俺はすぐにしゃがみ、前に半回転のドッチロールをすると、そこには道を急いでいたサラリーマンがサバイバルナイフを持ち構えていた。
「ちっ……外したか」
軽く舌打ちをし表情を歪ませるサラリーマン
「おいおい、こんなとこで油売ってていいのか?仕事に遅れたら上司にどやされんぞ」
トポスから刀を取りだし素早く構える。
「心配するな、これが俺の仕事だ」
ナイフを構えて俺を目掛け走って間合いを詰めると鋭く早い斬撃を繰り出す。
刀で受け流し、反撃のチャンスは一向に来ない、おそらく相当のやり手だろう。
刀で防ぎ続けていると男は左手で持つナイフを瞬間的に逆手持ち変えながら振り抜きつつ、右に付けていたホルダーから同じナイフを素早く抜き反応が遅れた俺は体を反るようにかわすが左の瞼を掠めたようで、一閃の傷からは血が滴り左の視界を強制的に奪われる。
慌てて後ろに跳び距離を取ろうとるが、隙を見逃す筈もなく左右の嵐のような斬撃の猛攻をより一層劣勢の状況で凌ぐ。
(野郎ぉ……)
心の中で俺は毒づき、この状況を打開するするゆういつの方法を決めた。
体を完全に後ろに倒しながらナイフをかわしつつ同時に片手で刀の腹を自分に向けコンパクトかつ素早く抜刀し切っ先で制服の胸ポケットを切ると、カードが胸ポケットからこぼれる。
それを見た俺はカードに向かって
「ブラインド!」
と叫ぶと瞬く間にカードから強力な光が放たれ、男は目を瞑る。
事前に目を瞑っていた俺は倒れる体を捻り起こし刀を納刀し、柄に手のひらを当て腹の部分に撫でるように手を当て男の鳩尾めがけ突進し、刀の切っ先を前に進むベクトルを全て突きに乗せインパクトの瞬間に手のひらを回転させ男にねじ込む。
「かはっ!」
風間の剣術の中で一点集中の最大の威力を誇る"牙城"だ。
喰らった男は血反吐を吐き牙城の威力で後ろに飛び、受け身を取ることなく倒れたが、まだ意識はあるようだ。
(ちっ、片目が塞がってるせいで間合いをしくじったか)
悔しさを噛み締めながら俺は男に近づき、倒れている男の胸ぐらを掴み上げる。
「刃じゃないだけでもマシだと思うんだな……さあて誰の差し金だ?」
「……………」
「黙りか……なら」
俺は刀を抜いて男の顔に向ける。
「早くしないと、顔に切り傷が増えちまうぜ」
さらにぐいっと顔に近づけた時、男の懐から何か丸いものが落ちた。
「ん………げっ!」
コロコロと憎たらしく転がったのは栓が抜かれている手榴弾だった。
アスファルトの地面を強く激しく蹴り、後ろに強くバックしたのだが………
「あれ?爆発しねぇ」
「くっくっくっくっ」
低い笑い声がし、声の方向を見ると倒れている男の肩はプルプルと震え、ゆっくりと立ち上がった。
「だ、騙しやがったな!飛来刃!」
「おっと、分が悪そうだから失礼させてもらうおう」
飛来刃を簡単にかわした男はそのまま走って姿を消した。
残された俺は、まだとまらない傷にトポスから取り出した血止め薬を塗り、上から治癒能力に優れた絆創膏を張っ付けた後、少しばかり足を早めて学校に向かった。