勘違い
「ふぅ〜食った食った」
空になった鍋を見ながら、ぽんぽんと腹を叩く。
「にしてもよく食うな剣士は」
「男子ならこれくらいは普通ですって」
空になった鍋を持って、台所に移動し、スポンジに洗剤をつけ、綾と並んで洗い始める。
「洗い物は夫婦に任せて、老いぼれは風呂でも入ってきますわ」
「な、な、な、何言ってるのお父さん///」
ニヤニヤしながら風呂に向かうおじさんは、ピタリとドアの前で立ち止まり
「剣士、俺は長風呂だからな」
「どういう意味ですか?」
「つ、つな君!?気にしないで、お父さん早く風呂に入って!!」
鬼の形相で睨み、おじさんにこれ以上の発言を許さない
「さあ、つな君ちゃっちゃと洗い物を済ましちゃおう」
「おう、任せとけ!!」
二人で役割を分担したおかげか、鍋のせいかは分からないが、5分程度で終わった。
「ふー、洗い物も終わったし、帰るとするか」
「え!?もう帰るのつな君」
「ああ、終わったことだし、明日も学校があることだしな」
エプロンを脱ぎ椅子に掛ける
そして椅子に掛けておいたブレザーを着てから、鞄を取る
それから扉を空けて玄関に向かう途中
「おい剣士、まさか帰るつもりなのか?」
タオルを腰に巻いたおじさんが玄関の前に立つ
体の所々がまだ濡れていて、体からは湯気が出ている
あれ、長風呂だと言ってたはずなのにどうしたんだろ
「おじさん、そんな格好じゃ風邪引きますよ」
「俺のことはどうでもいい、とにかく今日は遅い、だから泊まっていけ」
そういうものの時刻はまだ9時、中学生だってまだ寝てない
「でも、明日の時間割の用意だってしなくちゃいけないし」
「そんなの朝に取りに行けばいいだろう」
「そんな二度手間なこと誰がするんすか、それに泊まるにしても、僕はどこで寝るんすか」
「そんなもん綾の部屋に決まってるだろ」
「な!?何が決まってるだろですか、言ってることわかってるんすか」
度肝抜かれる言葉につい声がデカくなる
そう言うと、おじさんはニヤニヤしながら
「17歳の男女が一つの部屋で寝泊まりするんだろ」
「か、帰らせてもらいます!!」
「バカ、泊まっていけ、そして赤飯を炊かせろ」
「僕に何期待してんですか!!」
「んなもん………」
「ああー!!言わなくていいですから!!」
飛び付くようにおじさんの口を塞ぐ
「取り合えず僕はかえりますから!!」
俺は飛び出るように玄関から出ていった。