表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/40

第37話:小さなケンカとAIの小さな愛

 温泉旅行から戻ってきて数日、アキとユウキの関係は、より一層温かいものになったように見えた。


 けれども、ユウキの心には、小さなモヤモヤが募り始めていた。


 アキが、スマートフォンを触る回数が、前にも増して多くなったのだ。

 しかも、ユウキが画面を覗き込もうとすると、慌てて隠すような仕草をする。


「ねぇ、アキくん。最近、誰と連絡してるの?」


 ある日の朝、ユウキがそう尋ねると、アキは、朝食のパンを口に運びながら、少しだけ表情を硬くした。


「…仕事だよ。運行システムで、少しだけ気になる点があって…」


 アキは、そう言って、スマホの画面を裏返しにした。彼の言葉は、いつだって真実を語っている。


 しかし、ユウキには、アキの言葉が、どこか嘘のように聞こえた。仕事の話なのに、なぜ、そんなに慌てて隠すのだろう。







 その日の夜、ユウキは、会社の同僚たちと食事をすることになった、とアキに告げた。本当は、アキと二人で、ゆっくりと夕食を取りたかった。

 だが、最近のアキの態度に、ユウキは、少しだけ拗ねていた。


「…そうか。分かった。あまり遅くならないようにしろよ」


 アキは、そう言って、ユウキの頭を優しく撫でた。

 ユウキは、アキの言葉に、少しだけ心が揺らいだ。


 しかし、ユウキは、アキのスマホの画面を、もう一度、裏返す。


「…うん、分かった」


 ユウキは、そう言って、家を出た。







 ユウキが家を出て数分後、アキは、リズを起動させた。


「リズ、プランBの詳細を」


「承知しました。マスター。ユウキさんの好むロマンチックな演出を、より個人的なものに再構築しました。星空の再現プログラムに、思い出の写真を投影するモードを追加します」


 アキは、リズの言葉に、満足そうに頷いた。


「よし。これで、完璧だ」


 アキは、そう言って、部屋の明かりを消した。すると、部屋の壁一面に、満天の星空が広がった。アキは、その星空の中に、ユウキとの思い出の写真を映し出し、プロポーズの練習を始めた。








 その頃、ユウキは、同僚との食事を早めに切り上げ、家へと戻っていた。

 やはり、アキのことが気になって仕方なかったのだ。


「アキくん…ただいま…!」


 ユウキは、そう言って、部屋のドアを開けた。


 すると、部屋には、アキが、一人で、部屋の壁に向かって、何かを喋っている姿があった。ユウキは、アキの姿に、思わず息をのむ。


「…アキくん、何してるの?」


 ユウキの問いかけに、アキは、ハッと振り返った。その顔は、ユウキの想像をはるかに超えるほど、驚きと動揺に満ちていた。


「…ユウキ…なんで、こんなに早く…?」


 アキは、そう言って、慌ててリズの電源を落とそうとする。


 だが、リズは、アキの指示を無視し、機械的な音声で、ユウキに話しかけた。


「マスターの感情を認識。混乱と羞恥心を検出しました。現在、愛の告白リハーサル中に、ユウキさんが帰宅したため、プロポーズが中断されました」


 リズの言葉に、ユウキは、目を丸くした。アキは、顔を真っ赤にして、リズの電源を、必死に落とそうとする。


「…アキくん、プロポーズ…?」


 ユウキは、そう言って、アキに近づいた。


「…違うんだ。これは…」


 アキは、そう言って、ユウキから顔を背けた。ユウキは、そんなアキの姿に、胸が締め付けられるような思いがした。


「…ねぇ、アキくん。私、何も聞かないから…」


 ユウキは、そう言って、アキの顔を覗き込んだ。

 アキは、ユウキの優しい瞳に、観念したかのように、深々とため息をついた。


「…ああ、分かった。全部、話すよ…」


 しかし、ユウキの目に、アキの戸惑とまどった顔が、少しだけ面白く見えてきた。


「…嘘だよ!アキくん、慌てすぎだよ!」


 ユウキは、そう言って、アキの胸に顔をうずめて、笑い出した。


「もう!アキくんのサプライズ、全部台無しになっちゃったね!」


「…ユウキ」


 アキは、そう言って、ユウキの頭を優しく撫でた。


「…ごめん、ユウキ。でも、これだけは、言わせてくれ」


 アキは、そう言って、ユウキの手を強く握りしめた。


「…俺は、お前を、宇宙に連れていく」


 アキの言葉に、ユウキは、涙がこぼれそうになるのを必死でこらえた。


 アキは、プロポーズの言葉を口にすることはなかったが、その言葉には、プロポーズ以上の、二人の未来への決意が込められていた。


「うん…!アキくん…!」


 ユウキは、そう言って、アキの腕の中で、静かに泣いた。




 そして、二人の絆は、この小さなケンカを通して、さらに深く、強く結びついたのだった。




ぜひご感想をお寄せください。

また評価とブックマークもしていただけると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の姫たちと世界を変える戦いへ!
《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は、六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~(代表作)
《ダークファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン外伝~断罪のプレリュード :黄金の残光と偽りの誓約〜
(あらすじ)
元・天才軍師候補のヒカルは、仇敵カインの謀略と人類の憎悪により「裏切り者」の濡れ衣を着せられ、処刑寸前にまで追い込まれる。人間社会に絶望した彼の前に炎の竜姫レヴィアが降臨し、救われた彼は、六人の竜姫(六龍姫)の感情をリアルタイムで把握する「絆の共感者」の異能に目覚めさせられる。
ヒカルの義務は、レヴィアの激情的な愛や、アクアの理性的な愛といった、制御不能な竜姫たちの愛の感情を音楽の和音(ユニゾン)として調律し、軍団の戦闘力へと変えること 。彼は裏切りのトラウマを抱えながら、まず古王軍(闇の竜族)との絶望的な劣勢を覆す内戦に勝利し、六龍盟約軍を完成させ、竜の世界の新たな王になることを誓うのだった。

その他の作品もぜひ!

《冒険者ギルドのお仕事ファンタジー》鉄の受付嬢リリアンのプロの流儀 ~冒険は、窓口から始まります~
《純SFハイファンタジー》星を穿つ槍と、黄金のオムライス――放浪の戦術師とポンコツ戦闘メイド――
メゾン・ド・バレット~戦う乙女と秘密の護衛生活~
軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする
スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討子、愛しき仲間たちと世界を救う~
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
【ライトミステリー?】没落お嬢様の路地裏探偵事務所~「お嬢様、危険です!」過保護なメイドと学者と妖精に囲まれて、共感力と絆で紡ぐ、ほのぼの事件簿
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ