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軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする  作者: ざつ


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第21話:雨上がりの虹(前編)

 その日、ユウキとアキは、近所のスーパーへと買い物に出かけていた。


「今日の晩ごはんは、何にしようか?」


 ユウキは、カートを押しながら、アキに尋ねた。アキは、カートの中を覗き込み、少しだけ考え込む。


「…そうだな。この前、ユウキが作ってくれたカレイの煮付けが美味しかったから、魚にしようか」


 アキは、そう言って、魚売り場へと向かった。ユウキは、アキの言葉に、胸の奥が温かくなるのを感じた。


「じゃあ、この前のケンカの時のこと、覚えててくれたんだね」


 ユウキがそう言うと、アキは、少しだけ照れたように、視線を逸らした。


「…忘れるわけないだろ」


 アキの素っ気ない言葉に、ユウキは、満面の笑みを浮かべた。二人は、魚売り場で、カレイを品定めする。


「アキくん、こっちのカレイの方が新鮮だよ!」


「いや、こっちの方が身が厚い」


 二人は、どちらのカレイを選ぶかで、楽しそうに口論を始めた。その様子は、まるで、子供のようだった。


 買い物を終え、スーパーを出ると、空は、みるみるうちに暗くなっていった。ポツポツと降り始めた雨は、あっという間に、激しい土砂降りへと変わった。


「わっ!すごい雨だね!」


 ユウキは、アキの腕を掴み、近くのカフェへと駆け込んだ。カフェの窓からは、土砂降りの雨が、まるで滝のように流れ落ちているのが見えた。


「まさか、こんなに降るなんてね…」


 ユウキは、そう言って、ため息をついた。アキは、温かいコーヒーを二つ注文し、ユウキに一つ差し出した。


「大丈夫。雨は、いつか必ず止む」


 アキは、そう言って、ユウキの頭を優しく撫でた。アキの温かい手と、温かいコーヒーに、ユウキは、少しだけ心が落ち着くのを感じた。


 二人は、温かいコーヒーを飲みながら、雨が止むのを待った。ユウキは、窓の外を眺めながら、ふと、アキに尋ねた。


「ねぇ、アキくん。運行管理の仕事って、雨が降ると、大変なの?」


「ああ。地上の天候も、エレベーターの運行には重要な要素だ。雨雲の動き、風速、湿度…すべてが、エレベーターの運行に影響を与える。俺たちは、それらのデータを常に監視し、安全性を確保しなければならない」


 アキは、専門的な話を、ユウキにも分かるように、丁寧に説明した。ユウキは、アキの話を、真剣な表情で聞いていた。


「へぇ…。じゃあ、この雨も、アキくんの仕事と関係があるんだね」


 ユウキの言葉に、アキは、少しだけ照れたように頷いた。


「…まぁ、そうだな」


 その時、窓の外の雨が、嘘のように止んだ。


「あっ、雨が止んだ!」


 ユウキは、そう言って、窓の外を見つめた。空には、七色に輝く大きな虹が、都会のビル群を跨ぐように架かっていた。雨上がりの空に、鮮やかな虹。ユウキは、まるで子どものように目を輝かせ、その景色に見入っていた。


「わあ…!虹だ!こんなに綺麗な虹、久しぶりに見たな」


 ユウキは、そう言って、スマートフォンを取り出し、虹の写真を撮った。アキは、そんなユウキの無邪気な様子を、静かに見つめていた。アキにとって、虹は、運行管理室のモニターに映し出される、気象データの一つに過ぎなかった。


「…綺麗だな」


 アキは、そう呟いた。ユウキは、アキの言葉に、少しだけ驚いたような顔をした。


「アキくんも、そう思う?」


「ああ。運行管理室のモニターで見るのとは、全然違う」


 アキの言葉に、ユウキは微笑んだ。


「ねぇ、アキくん。虹って、どうやってできるの?」


 ユウキが尋ねると、アキは、少しだけ顔を輝かせた。


「空気中の水滴が、太陽の光を屈折くっせつさせることで、虹ができる。エレベーターの運行管理でも、大気中の水蒸気量すいじょうきりょうや、風向き、気圧きあつの変化を常に監視している。それらのデータから、運行ルートの安全性を計算するんだ」


 アキは、専門的な話を、ユウキにも分かるように、丁寧に説明した。ユウキは、アキの言葉を、真剣な表情で聞いていた。


「へぇ…。じゃあ、私たちがこうして見る虹も、アキくんの仕事と関係があるんだね」


 ユウキの言葉に、アキは、少しだけ照れたように頷いた。


「…まぁ、そうだな。俺たちが仕事で守っているのは、空の安全だけじゃない。地上にいる、みんなの日常も、守っているんだ」


 アキは、そう言って、ユウキの瞳を真っ直ぐに見つめた。


 その言葉には、ユウキへの深い想いが込められていた。二人の仕事は、別々の場所で行われているが、お互いの仕事が、それぞれの日常を支えている。


 そして、その日常の延長線上に、二人の未来があることを、この虹が示しているようだった。



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