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軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする  作者: ざつ


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第17話:二人の就職活動(前編)

 それは、西暦2200年、まだ二人が学生だった頃の、少し埃《ほこり》っぽい大学の図書館での出来事だった。


 膨大《ぼうだい》な蔵書《ぞうしょ》に囲まれた一角に、森野悠希《もりのゆうき》と高遠陽樹《たかとおはるき》は並んで座っていた。


 二人の手元には、真新しい履歴書《りれきしょ》と、使い古されたノートパソコンが置かれている。


 就職活動が始まり、二人はそれぞれ、世界に五つある軌道エレベーターのうち、東アジアを管轄《かんかつ》する企業《きぎょう》の入社試験に挑《いど》もうとしていた。





 二人が知り合ったのは、高校時代だった。


 アキは、父がエレベーター建設に携わっていた影響で、幼い頃からエレベーターに特別な想いを抱いていた。彼の夢は、エレベーターの安全を守る運行管理者になること。


 一方、ユウキは、宇宙に強い憧れを持っていたものの、ある理由から宇宙に行くことができなかった。


 そんなユウキにとって、宇宙と地球を結ぶエレベーターは、憧れそのものだった。ユウキは、エレベーターについて熱く語るアキの姿に、徐々に惹かれていった。





 そして、二人は同じ大学へと進学した。


 アキは、エレベーターのシステム管理を学ぶため、システム工学を専攻。ユウキは、エレベーターのコンシェルジュとして、多くの人々の心を支えたいという思いから、心理学と社会学を学んでいた。


 二人の就職活動は、自然と、軌道エレベーターを運営する企業に絞られていった。


「ねぇ、アキくん。私、履歴書《りれきしょ》、これでいいのかな?」


 ユウキは、不安《ふあん》そうにアキに尋《たず》ねた。ユウキの履歴書には、丁寧《ていねい》な文字で、「軌道エレベーターのコンシェルジュ」という志望職種《しぼうしょくしゅ》が書かれている。


「…いいんじゃないか。ユウキらしい」


 アキは、そう言って、ユウキの履歴書に目を落とした。ユウキの志望動機《しぼうどうき》には、「地球から月、火星へと広がる人類の生活を、一番近《いちばんちか》くで支《ささ》えたい」という、彼女《かのじょ》のまっすぐな想《おも》いが綴《つづ》られていた。


「だって、アキくんの夢《ゆめ》だもん。その夢を、一番近くで応援《おうえん》できるのが、私の夢《ゆめ》だもん」


 ユウキは、そう言って、少しだけ照れたように笑った。


 アキは、ユウキの言葉に、何も言い返《かえ》すことができず、ただ静かに、彼女の履歴書を見つめていた。アキにとって、軌道エレベーターは、父が命を懸けて建設に携わった、特別な存在《そんざい》だった。


 しかし、その夢を、ユウキが自分の夢《ゆめ》として応援《おうえん》してくれていることに、アキは、胸《むね》が熱《あつ》くなるのを感じた。


「アキくんは、どうなの?もう、志望動機《しぼうどうき》書《か》いた?」


 ユウキに尋ねられ、アキは、自分のノートパソコンを開《ひら》いた。画面《がめん》には、「運行管理者《うんこうかんりしゃ》」という文字《もじ》と、まだ完成《かんせい》していない志望動機《しぼうどうき》が書《か》かれている。


「僕《ぼく》は…「宇宙《うちゅう》への安全《あんぜん》な旅《たび》を、自分《じぶん》の手《て》で守《まも》りたい」って、書こうと…」


 アキは、そう言って、少しだけ躊躇《ためら》った。彼の言葉には、ユウキのような華《はな》やかさはなかった。


 だが、その言葉《ことば》の裏側《うらがわ》には、誰《だれ》よりも強《つよ》い、エレベーターへの想《おも》いが込《こ》められていることを、ユウキは知《し》っていた。


「アキくんらしいね!きっと、面接官《めんせつかん》も、アキくんの想い《おもい》、分かってくれるよ!」


 ユウキは、そう言って、アキに力《ちから》をくれた。アキは、ユウキのまっすぐな眼差《まなざ》しに、安心《あんしん》したように微笑んだ。


「ありがとう、ユウキ」


「うん!絶対、二人で合格しようね!」


 ユウキは、そう言って、アキの手をそっと握った。アキの手に伝わる、ユウキの温かさと、確かな決意。


 二人は、それぞれの履歴書を眺めながら、静かに、そして確かな希望《きぼう》を胸《むね》に、未来《みらい》へと思《おも》いを馳《は》せていた。



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