表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/40

第17話:二人の就職活動(前編)

 それは、西暦2200年、まだ二人が学生だった頃の、少しほこりっぽい大学の図書館での出来事だった。


 膨大ぼうだい蔵書ぞうしょに囲まれた一角に、森野悠希もりのゆうき高遠陽樹たかとおはるきは並んで座っていた。


 二人の手元には、真新しい履歴書りれきしょと、使い古されたノートパソコンが置かれている。


 就職活動が始まり、二人はそれぞれ、世界に五つある軌道エレベーターのうち、東アジアを管轄かんかつする企業きぎょうの入社試験にいどもうとしていた。





 二人が知り合ったのは、高校時代だった。


 アキは、父がエレベーター建設に携わっていた影響で、幼い頃からエレベーターに特別な想いを抱いていた。彼の夢は、エレベーターの安全を守る運行管理者になること。


 一方、ユウキは、宇宙に強い憧れを持っていたものの、ある理由から宇宙に行くことができなかった。


 そんなユウキにとって、宇宙と地球を結ぶエレベーターは、憧れそのものだった。ユウキは、エレベーターについて熱く語るアキの姿に、徐々に惹かれていった。





 そして、二人は同じ大学へと進学した。


 アキは、エレベーターのシステム管理を学ぶため、システム工学を専攻。ユウキは、エレベーターのコンシェルジュとして、多くの人々の心を支えたいという思いから、心理学と社会学を学んでいた。


 二人の就職活動は、自然と、軌道エレベーターを運営する企業に絞られていった。


「ねぇ、アキくん。私、履歴書りれきしょ、これでいいのかな?」


 ユウキは、不安ふあんそうにアキにたずねた。ユウキの履歴書には、丁寧ていねいな文字で、「軌道エレベーターのコンシェルジュ」という志望職種しぼうしょくしゅが書かれている。


「…いいんじゃないか。ユウキらしい」


 アキは、そう言って、ユウキの履歴書に目を落とした。ユウキの志望動機しぼうどうきには、「地球から月、火星へと広がる人類の生活を、一番近いちばんちかくでささえたい」という、彼女かのじょのまっすぐなおもいがつづられていた。


「だって、アキくんのゆめだもん。その夢を、一番近くで応援おうえんできるのが、私のゆめだもん」


 ユウキは、そう言って、少しだけ照れたように笑った。


 アキは、ユウキの言葉に、何も言いかえすことができず、ただ静かに、彼女の履歴書を見つめていた。アキにとって、軌道エレベーターは、父が命を懸けて建設に携わった、特別な存在そんざいだった。


 しかし、その夢を、ユウキが自分のゆめとして応援おうえんしてくれていることに、アキは、むねあつくなるのを感じた。


「アキくんは、どうなの?もう、志望動機しぼうどうきいた?」


 ユウキに尋ねられ、アキは、自分のノートパソコンをひらいた。画面がめんには、「運行管理者うんこうかんりしゃ」という文字もじと、まだ完成かんせいしていない志望動機しぼうどうきかれている。


ぼくは…「宇宙うちゅうへの安全あんぜんたびを、自分じぶんまもりたい」って、書こうと…」


 アキは、そう言って、少しだけ躊躇ためらった。彼の言葉には、ユウキのようなはなやかさはなかった。


 だが、その言葉ことば裏側うらがわには、だれよりもつよい、エレベーターへのおもいがめられていることを、ユウキはっていた。


「アキくんらしいね!きっと、面接官めんせつかんも、アキくんの想い《おもい》、分かってくれるよ!」


 ユウキは、そう言って、アキにちからをくれた。アキは、ユウキのまっすぐな眼差まなざしに、安心あんしんしたように微笑んだ。


「ありがとう、ユウキ」


「うん!絶対、二人で合格しようね!」


 ユウキは、そう言って、アキの手をそっと握った。アキの手に伝わる、ユウキの温かさと、確かな決意。


 二人は、それぞれの履歴書を眺めながら、静かに、そして確かな希望きぼうむねに、未来みらいへとおもいをせていた。



ぜひご感想をお寄せください。

また評価とブックマークもしていただけると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の姫たちと世界を変える戦いへ!
《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は、六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~(代表作)
《ダークファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン外伝~断罪のプレリュード :黄金の残光と偽りの誓約〜
(あらすじ)
元・天才軍師候補のヒカルは、仇敵カインの謀略と人類の憎悪により「裏切り者」の濡れ衣を着せられ、処刑寸前にまで追い込まれる。人間社会に絶望した彼の前に炎の竜姫レヴィアが降臨し、救われた彼は、六人の竜姫(六龍姫)の感情をリアルタイムで把握する「絆の共感者」の異能に目覚めさせられる。
ヒカルの義務は、レヴィアの激情的な愛や、アクアの理性的な愛といった、制御不能な竜姫たちの愛の感情を音楽の和音(ユニゾン)として調律し、軍団の戦闘力へと変えること 。彼は裏切りのトラウマを抱えながら、まず古王軍(闇の竜族)との絶望的な劣勢を覆す内戦に勝利し、六龍盟約軍を完成させ、竜の世界の新たな王になることを誓うのだった。

その他の作品もぜひ!

《冒険者ギルドのお仕事ファンタジー》鉄の受付嬢リリアンのプロの流儀 ~冒険は、窓口から始まります~
《純SFハイファンタジー》星を穿つ槍と、黄金のオムライス――放浪の戦術師とポンコツ戦闘メイド――
メゾン・ド・バレット~戦う乙女と秘密の護衛生活~
軌道エレベーターの管理人たち〜地上コンシェルジュは、宇宙(そら)の英雄に恋をする
スローライフを目指したい鈍感勇者のラブコメは、天《災》賢者の意のままに!!〜システィナ様の暴走ラブコメ劇場〜
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討子、愛しき仲間たちと世界を救う~
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
【ライトミステリー?】没落お嬢様の路地裏探偵事務所~「お嬢様、危険です!」過保護なメイドと学者と妖精に囲まれて、共感力と絆で紡ぐ、ほのぼの事件簿
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ