第4章: 静寂の中の挑戦
数日が過ぎた。僕たちはあの日の探索で見つけた食料を少しずつ分け合いながら生活を続けていた。しかし、ストックは想像以上に早く減っていく。僕たちは新たな方法を模索し始めた。
「ねえ、この近くに川があったよね。魚とか獲れないかな?」
エリが地図を見ながら提案する。確かに、僕たちが住む地域には小さな川が流れていた。
「釣り道具なんて持ってたっけ?」
「ううん。でも、何か工夫すればいけるかも。」
そのとき、エリがふと何かを思いついたように顔を上げた。
「100円ショップ、まだ行ってないよね。あそこに何かあるかもしれない!」
僕たちは顔を見合わせ、すぐに準備を始めた。リュックに水と簡単な道具を詰め込んで、荒れ果てた100円ショップに向かうことにした。
荒れ果てた店内での探索
100円ショップに到着すると、そこはスーパー以上に荒れ果てていた。入り口の自動ドアは片側が完全に壊れていて、店内には商品が散乱している。埃の臭いが鼻をつき、かつての賑わいを感じさせるものは何もなかった。
「ここ、本当に何か残ってるかな……。」
エリが不安げに呟く。それでも僕たちは店内を慎重に進みながら、使えそうなものを探し始めた。おもちゃコーナーの近くで、僕は埃をかぶった釣り竿を見つけた。短い簡易的なものだが、これなら使えそうだ。
「エリ、見つけたよ!」
僕が釣り竿を掲げると、エリの顔がパッと明るくなった。彼女もすぐそばで釣り糸と簡易的なルアーを見つけた。
「これも使えそう!」
僕たちはさらに店内を探し、釣りの餌代わりになりそうな小さなカラフルなスポンジや、細かい道具も集めた。帰る頃には、釣り道具一式がほぼ揃っていた。
初めての釣り
翌朝、僕たちは100円ショップで集めた道具を手に、川へ向かった。静寂に包まれた川辺は、鳥のさえずりすら聞こえず、ただ水音だけが響いている。釣り竿に釣り糸を取り付け、エリが見つけたルアーを使って初めての釣りを始めた。
「本当にこれで釣れるのかな……?」
エリが心配そうに糸を垂らす。僕も初めての試みで不安だったが、そんな彼女を励ますように微笑んだ。
「やってみなきゃ分からないさ。」
しばらくの間、僕たちは静かに糸の動きを見つめていた。突然、小さな引きが伝わってきた。僕が慎重に糸を巻き上げると、小さな魚が針にかかっていた。
「やった!」
エリが歓声を上げる。その声に僕もつられて笑顔になる。
「よし、これで晩ご飯は決まりだな。」
その日、僕たちは捕まえた魚を焼いて食べた。久しぶりの新鮮な食事に、僕たちは言葉にできないほどの幸福感を味わった。
「こんなにおいしいの、久しぶりだね。」
エリが満足そうに言う。その一言が、僕にとって何よりのご褒美だった。
静寂の中の希望
新しい道具を手に入れた僕たちは、生活に小さな希望を見出し始めていた。100円ショップという思いがけない場所での収穫は、僕たちにとって大きな意味を持つものとなった。
「これからも何か見つかるといいね。」
エリの言葉に僕は頷いた。この静寂の世界でも、二人で力を合わせれば乗り越えられる。そう信じて、僕たちはまた新たな挑戦に向かう準備を始めていた。