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第3章: 外の世界

探索の日がやってきた。僕たちは簡単な装備を整え、近所のスーパーに向かうことにした。リュックには最低限の荷物だけを詰め込み、ポケットには小型の懐中電灯と缶切り。そしてエリは、「念のため」と言ってスティック状の護身具を持っていた。


「本当にこれで大丈夫かな?」 エリが不安そうに呟く。


「まあ、なんとかなるよ。誰もいないだろうし。」 僕は精一杯の笑顔を作ってみせたが、内心では同じくらい不安を抱えていた。


外に出ると、街はまるで時間が止まったかのようだった。静寂に包まれた通りには風に転がるゴミ袋や、錆びついた自転車が放置されている。看板は傾き、草がアスファルトの割れ目から顔を出していた。僕たちの足音がやけに響き渡る。


「ねえ、誰もいないって本当に言い切れるの?」 エリの声がかすかに震えている。僕も確信は持てなかった。


「大丈夫だよ。何かあればすぐ戻ればいい。」 僕の返事は、自分自身への言い聞かせのようでもあった。


やがて目的地に着くと、スーパーの自動ドアは半開きのまま動かなくなっていた。中に入ると、棚はほとんど空っぽで、床には散乱した商品や壊れたガラス片が散らばっている。


「ここも荒らされてるな……。」 僕がため息をついたそのとき、エリが足元に転がった箱に気づいて声を上げた。


「これ!まだ使えそうだよ!」


彼女が指差したのは、埃をかぶった非常食のカートンだった。中には缶詰やアルミパックの食材が詰まっている。賞味期限は迫っていたが、まだ十分使えそうだ。


「エリ、よく見つけたな!」 僕は感謝の気持ちを込めて彼女の肩を軽く叩いた。エリは少し誇らしげに微笑んだ。


「運が良かっただけだよ。でも、これで少し安心できるね。」


リュックに新たな物資を詰め込んでスーパーを後にする頃には、外の空気がわずかに穏やかに感じられた。帰り道、エリがふと立ち止まり、空を見上げた。


「空がこんなに広いなんて、今まで気づかなかったな……。」 その言葉に僕も顔を上げた。雲ひとつない青空が、静かな街並みの上に広がっていた。


「そうだね。でも、少し寂しい気もする。」


人々のいない街は僕たちに安らぎと孤独感を同時に与えていた。けれど、それでも僕たちは確かに生きていた。


家に戻ると、収穫した食料をテーブルに広げて分け合った。エリが見つけた粉末スープと乾パンを使って簡単な食事を作る。暖かいスープの香りが部屋を包み込むと、僕たちはほんの少しだけ気持ちが楽になった。


「これからもこうして乗り越えられるかな?」 エリがそう尋ねたとき、僕は迷わず頷いた。


「大丈夫。二人ならきっとなんとかなる。」


エリの顔に浮かんだ笑顔が、その瞬間、僕にとってこの世界のすべてのように思えた。

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